【ラブライブ!】真姫「あの日見た景色」
- 2020.04.13
- SS

入学式
理事長「…今年は前年度を大きく上回る…~人の新入生の皆さんを迎えることができ、これも…」
「理事長先生、ありがとうございました。では次に、生徒会長の激励の言葉です。生徒会長、前へ」
穂乃果「っは、はい!」
カク、カク…
穂乃果「ご、ご、ご紹介に預かりました!生徒会長の高坂穂乃果です!ほ、本日はお日柄もよく…」
穂乃果「じゃなくて、えっと…えー、ごほんっ!わ、我が音ノ木坂学院にようこそ~!」
アハハハハハハ…
穂乃果「ほぇっ…!?な、なんで笑われてるの…?そんなに変だったかな…」
海未「全く穂乃果は…!み、見ていられません…!!」
ことり「これも穂乃果ちゃんらしい挨拶、なのかな…?」
凛「あはっ!あははは!穂乃果ちゃんおかしいにゃ~~!!あははははは!!」
真姫「あれで生徒会長…?これじゃ、新入生が不安がるんじゃないかしら…」
花陽「いつもはもっとしっかりしてるのに、こういう時だけ緊張しいだよね、穂乃果ちゃん」
凛「去年の絵里ちゃんはもーっとしっかりしてたのにねー。だらしないにゃー」
真姫「こら、だらしないなんて言ったら失礼よ。…まぁ、だらしないかもだけど」
花陽「ま、真姫ちゃんまで…。あはは…」
真姫(…そっか)
真姫(あの入学式が、もう…去年になるのね)
凛「にゃー!ここも久しぶり!」
真姫「…って感じでもないけどね。春休み中来てたし」
花陽「でも2年生になって初めて…だよね。屋上」
真姫「それはそうでしょ。今日、2年生になったんだから」
花陽「そ、そうなんだけど」
凛「…そっかー。凛たち、ついに2年生なんだよね…」
真姫「…そうね」
凛「うー、でもなんだか肩身が狭いにゃー。あんなに新入生が入ってくるなんて」
花陽「えへへ、やっぱりμ’sの影響なのかな?」
凛「後輩がいない学校生活も寂しいけどあれだけたくさんだと逆に大変ってカンジ?」
花陽「それだけ音ノ木坂に興味を持ってくれた、ってことじゃない?いいことだよ」
真姫「…そうかしらね」
花陽「え…?」
真姫「…いえ。それより…どうするの?アイドル研究部」
花陽「え、どうする、って?」
真姫「部活紹介よ!部長でしょ?しっかりしなさい!」
花陽「あーっ!そ、そういえば…」
凛「そんなのもあったねー!最近忙しかったからさっぱり忘れてたにゃー!」
真姫「まさか何も考えてないなんて…」
花陽「…そのまさかです…」
真姫「…はぁ」
凛「仕方ないよ~…。かよちんばっかり責めちゃダメ!」
真姫「べ、別に責めてるつもりはないわよ!考えてないなら今からでも一緒に考えましょうってこと!」
花陽「あはは…うん。そだね。じゃあ部室で考えよっか」
凛「うおー、新年度早々忙しくなりそうだ~…」
真姫「はいはい…」
海未「穂~~乃~~果~~~!!」
穂乃果「ひ、ひえ~…!怖いよ海未ちゃん…!」
海未「なんですかあの体たらくは!挨拶激励一つまともにできないのですか!?それで生徒の見本となるべき生徒会長が勤まると…」
ことり「う、海未ちゃん落ち着いて落ち着いて!あれが穂乃果ちゃんの持ち味…なんだよ?」
海未「疑問形で説得を試みようとしても無駄です!ことりも思うところがあるのでしょう!?」
ことり「う…」
穂乃果「ご、ごめんなさい…。なんだかああいうところだと緊張しちゃって…。最近寝不足なのもあってさぁ~…」
海未「…はぁ。ライブでのあなたは一体どこへ行ってしまったのです…」
穂乃果「あ!なんなら挨拶の時もライブみたいに…」
海未「ふざけているのですか…?」
穂乃果「ひっ…!ゴメンナサイ」
ことり「でも、春休み中も色んなことがあったし、全てに気が回らないのも仕方ないっていうか…」
海未「確かにそれはわかりますが…。はぁ、これではせっかくの去年のμ’sでの活動が水泡に帰してしまうかもしれないというのに…」
ことり「あっ…」
穂乃果「えー、そこまでのこと?」
海未「あなたがああいったところでしっかりしなければこれまでのことへの説得力が欠けてしまうという…」
ことり「あの、そのことなんだけど…」
海未「…はい?なんですか、ことり」
ことり「お母さんから、聞かせておきたいことがあるって前…」
穂乃果「理事長から?」
ことり「うん。これからのオトノキに関する大事なこと、だって」
海未「大事な…、何やら少々不穏げですね。それならば急ぎましょう」
ことり「そ、そうだね…」
穂乃果「え゙っ…ちょっと休憩…」
海未「ダメです!行きますよ!」
穂乃果「うぇー…」
ガチャッ…
凛「いえーい!凛たちが一番のりー!」
真姫「当たり前でしょ…。穂乃果たちは生徒会なんだから」
凛「え?…あ、そっか。…そだよね」
花陽「うん?」
凛「あ、いや…にこちゃんたち、もういないんだなって」
花陽「あ…」
真姫「…」
凛「だっ…、え、あっ…、んにゃー!凛もボケが進んじゃってるのかなー?にゃははー」
真姫「バカ言ってないの。…さっさと始めるわよ」
花陽「…うん」
理事長室
ガチャッ…
理事長「あら?あなたたち…」
海未「理事長。ことりから学院の今後について大事な話があると…」
ことり「詳しいこと聞いておきたくて」
理事長「あ、あぁ…そのこと。うーん、そうね…」
穂乃果「ほぇ?悩むほどことなんですか…?ま、まさか!やっぱり来年には廃校!?」
海未「流石にそれはないでしょう…」
理事長「…いえ、実は…そうとも言い切れないのよ」
海未「へっ!?」
ことり「お母さん、どういうこと…?」
理事長「…あなたたちには言おうかどうか悩んだのだけれど、…わかったわ。聞かせておきましょう」
理事長「これからの音ノ木坂について」
凛「うーん…、いざやろうとするとアイデアが浮かんでこないね~…」
花陽「考えてみるとアイドル研究部って、何する部活なんだろうね…」
真姫「表向きにはその名のとおりアイドルを研究する部活なんでしょうけど…」
凛「にこちゃんのグッズが全部なくなっちゃったから研究できることなんてないにゃ…」
花陽「しかも実際はスクールアイドルをするために部に入ったわけだから、本来の活動なんて結局、一度もしたことがないのかも…」
凛「っていうかさ、にこちゃんもこの部活はアイドルやるために始めたんじゃなかったっけ?あ、じゃあもうライブやっちゃえばいいじゃん!決定!」
真姫「…ライブって、誰がするの?」
凛「え?そりゃあ凛たちμ’sに決まって…」
花陽「凛ちゃん、μ’sはもう…」
凛「あっ…」
真姫「もう私たちはμ’sじゃない。…ライブをするなら、新しいグループと新しい曲が必要でしょ」
凛「い、今からだって新しいグループと曲は用意できるもん!去年の穂乃果ちゃんたちだってそうだったんでしょ!?」
真姫「そうね。でもその時の穂乃果たちとは違って今は…μ’sが終わって、次はどんなグループにするかすらまだ十分に話し合えていないわ」
真姫「6人でやるのか、それとも別れるのか…みんな続けるのか、それとも…。それも全然決まってない状況じゃ、新しい曲の準備もすんなり行くとは思えないの」
凛「う…、そっか…」
花陽「ま、まぁ…うまくいけばライブ、ってことならいいんじゃないかな…?」
真姫「えぇ、すんなり行けば、だけどね。決定案とするには早いってことよ。他にも案を出していきましょ」
花陽「…あ、じゃあμ’sの活動の紹介をするっていうのは?今までどんなことをしてきたかって知ってもらうの」
凛「あ!それアリ!スクールアイドルμ’sの魅力を存分に伝えて、部活にも興味を持ってもらえれば…!」
真姫「…」
凛「ん?真姫ちゃん…苦い顔だけど、ダメかな…?」
真姫「えっ…、私、そんな顔してた?」
花陽「活動紹介、不満…?」
真姫「あ、いえ…不満ってわけじゃぁ…」
真姫(…不満ではない、けど)
真姫(言葉にできない、不安はあった)
凛「じゃあそれも一案ってことで!うーん、他にはね~…」
花陽「そうだなぁ…」
「ま、まだダメなんじゃないかな?多分…」
「大丈夫だって!見学くらいなら…」
花陽「うん?ドアの外から声が…」
真姫「誰かしら?」
コンコン
凛「ど、どうぞ」
ガチャッ
雪穂「お邪魔します!お姉ちゃんいるー?…っていない!ごめんなさい!」
亜里沙「ゆ、雪穂~!」
真姫「あ、あなたたち…雪穂ちゃんと亜里沙ちゃん?」
花陽「穂乃果ちゃんに用事?」
亜里沙「違うんです。アイドル研究部の見学をさせてもらおうって雪穂が…」
凛「見学…?」
雪穂「わ、私たち、もう入る部活はここって決めてるんで!なら部活解禁までのちょっとした間でどんなことやってるのか覗いておけば勉強になるかなって…」
花陽「うっ…そ、それは…」
真姫「…そのことなんだけど、実はね…」
亜里沙「え、みなさんも何をすればいいのかわかっていない…?」
雪穂「そっかー…今まではμ’sの活動だけでしたもんね。研究部が何をすればいいのかわからない…かぁ」
雪穂「え、でもじゃあこの部活はスクールアイドルをやる子が入る部活って事にすればいいんじゃないですか?今までそうだったんだし…」
凛「始めた元々の目的もそれだったんだよねー。凛もそれでいいと思うにゃ~」
真姫「でも研究部って名目だし…スクールアイドルがしたいわけじゃなくてその…ヒデコ先輩たちみたいな裏方をしたい子も来るかもしれないじゃない」
亜里沙「あ、確かに…。でも裏方の人たちは研究部じゃなかったわけで、それならわざわざ部活に入る事ない…?」
花陽「そのあたりの折り合いが難しくて…。それで今話し合ってるんだよね」
雪穂「ん?どうしたの亜里沙…」
亜里沙「えっとね…、ちょっと思ったんだけど…。この音ノ木坂学院に新入生がたくさん来たのって、きっとμ’sのおかげだよね?」
雪穂「え、そ、そうなんじゃない…かな?」
凛「ま、まぁそうかもだけど~…、本人の前で言われたら照れるにゃ~」
真姫「自分だけの功績みたいに言わない」ボコッ
凛「いっ…!?痛いにゃー!結構な音したよ!?」
亜里沙「あの…続けていいですか…?」
花陽「あ、ごめん。どうぞお構いなく」
亜里沙「はい。…で、きっと新入生には亜里沙たちみたいに、μ’sに憧れて、μ’sみたいになりたいって思ってる人、いっぱいいると思うの」
雪穂「まぁ…そうだよね」
真姫「…?何が言いたいの?」
亜里沙「あ!えっと、つまり…その、去年のμ’sのみなさんは、穂乃果さんから始まって、自然に集まって、手伝う人も善意で、だったじゃないですか」
亜里沙「だけど今年はそうじゃなくて、みんなμ’sの事を思って、スクールアイドルって輪ができようとしてて…」
亜里沙「だからその…やっぱり去年と同じ、ってふうにはならないんじゃないかなって思ったんです…。お、思ったんです!」
花陽「う、うん…。わかったけど」
凛「凛にはイマイチよく理解できなかったにゃ…。ごめんね」
雪穂「私もちょっと…。あ、でも…要するに、研究部はアイドルがやりたい子だけが集まるわけじゃないって言いたいんだよね?」
亜里沙「あ、うん!そういうこと!」
凛「結局そこに行き着いちゃうわけかぁ…。うーん」
雪穂「あの…活動のことで悩んでるんだったら、私たちもお話に混ぜてもらってもいいですか!?」
花陽「雪穂ちゃんたちも?」
雪穂「ほら!新入生の私たちならあまり先入観なく考えられるかもしれないですし!ね?」
亜里沙「うん!迷惑でなければでいいんですけど…」
凛「おー!凛は全然オッケーだよ!むしろありがたいくらい!」
真姫「アイデアが思い浮かばないんだものね。…私もいいんだけど、そういえば…」
花陽「あ、穂乃果ちゃんたち、ちょっと遅いね。生徒会の仕事ならもう終わっててもいいと思うんだけど」
亜里沙「雪穂は早とちりなんだから~」
凛「でもこれは遅すぎる気がするにゃー。雪穂ちゃんも来てくれてるんだから穂乃果ちゃんも早く帰ってきてあげて欲しいにゃ」
真姫「亜里沙ちゃんは海未とお話したいのよね?」
亜里沙「えっ!あ、え…!?その………」
真姫「…まぁ、そういうことなら私が見に行ってくるわ。何かあったのかもしれないし」
花陽「うん、お願い。忙しそうだったら私たちも手伝うから」
真姫「わかった。じゃあ二人は雪穂ちゃんたちと部活動紹介の事、お願いね?」
凛「了解にゃー!」
雪穂「ま、任せてください!」
(凛「あ!それアリ!スクールアイドルμ’sの魅力を存分に伝えて、部活にも興味を持ってもらえれば…!」)
(亜里沙「だけど今年はそうじゃなくて、みんなμ’sの事を思って、スクールアイドルって輪ができようとしてて…」)
真姫(…何が、引っかかってるんだろう)
真姫(漠然とした不安感が、どうしても拭いきれないでいた)
スタスタ…
真姫「…あ」
海未「おや?」ユッサユッサ…
真姫「海未…、どうしたの?それ」
海未「あぁ、この書類ですか。先ほど理事長から頼まれて運んでいる最中なのです」
真姫「いや…その、多すぎ…じゃない?重くないの?」
海未「この程度で音を上げていてはアイドルなんて務まりませんよ!」
真姫「そうかも…しれないけど」
真姫「あぁ…それよ。あなたたちが部室に来るのがいくらなんでも遅いから、何しているのかなって」
海未「あぁ、そうでしたか。いえ、先ほどまで書類を3人で運んでいて…これが最後ですので、先に穂乃果とことりは部室に向かったはずです」
真姫「ってことはちょうど入れ違いって事…。はぁ、ついてないわね」
海未「ですから真姫ももう戻って構いませんよ?」
真姫「いや、手伝うから。そんなに重そうなの任せてられないでしょ」
海未「私は平気なのですが…」
真姫「いいから半分貸して!」ズイッ
真姫「…っ!?お、重っ…!よくこんなの、持てたわねっ…!?」
海未「む、ムリしなくても私に任せてくれれば…」
真姫「ムリなんかっ…!ふんぬっ…!!してないわよぉぉっ!!」グググ…
ユッサユッサ… ユッサユッサ…
真姫「はぁっ…はぁっ…ま、前が見えづらい…」
海未「人や壁にぶつからないように注意してくださいね?」
真姫「わかってる、わよ…!」スタ、スタ…
「…でさー、どこの部活入るー?」
「あー、それ聞いちゃうー?」
海未「真姫、向かいから人が来ていますよ」
真姫「わかってるって…」
真姫(リボンから察するに…新入生かしら…?)
「私アイドル研究部考えてるんだよね。スクールアイドル!」
「えー、マジで?私もちょっと気になってたんだよね~」
「あー、でも…」
「もう、μ’sってなくなっちゃたんだよね。だから…やっぱりいいかな、スクールアイドルは」
「えー、そうなの?残念だなぁ…」
「だからやっぱり私は…」
海未「…真姫?歩くペースが遅くなっていますが…やはりムリをしているのでは?」
真姫「…いえ、そうじゃ、ないの。大丈夫…」
真姫「…」スタ、スタ…
生徒会室
海未「よい、しょっ…と。はい、ではこれで書類の移動は完了、と…。真姫、ありがとうございました。部室に…」
真姫「…ねぇ、海未」
海未「はい?なんでしょうか…」
真姫「私たち、このままでいいのかしら…」
海未「…?何を…、どういう意味ですか?」
真姫「アイドル研究部のことよ。…いえ、スクールアイドル全般というか…」
真姫「凛も花陽も、…私も、まだμ’sから離れられていない、って感じがするの」
海未「離れられていない…?」
真姫「何をするにしても、μ’sを表に出そうとしてしまう。部活動紹介で研究部に興味を持ってもらうため、とかにね」
真姫「そして、多分研究部に興味を持ってくれる子たちも、きっとμ’sが好きだった子が多いと思うの」
真姫「…でも、μ’sはもう、いない。さっき、廊下ですれ違った新入生…、μ’sがいないならアイドルはいいかな、って言っていたわ」
海未「…」
真姫「μ’sのことを思って集まった人達に、μ’sの魅力を伝えて…常に私たちの周りにはμ’sという存在があるけど」
真姫「だけど本当はそれはもうなくなってて…。そんな…チグハグというか、矛盾」
真姫「それを感じてしまうと…失望されるんじゃないかって、なんだか不安になってきちゃって」
真姫「μ’sを…にこちゃんたちの活動の証を忘れられたくはないけど、かと言ってこのままμ’sに頼ってたら、結局全てを忘れられそうで」
真姫「多分、さっきからそのことで胸がモヤモヤしてたんだと思うのよ…」
海未「そう、ですか…」
海未「…いえ、理解はできました。しかしあなたまで…」
真姫「あなたまで…?」
海未「実は先ほど、理事長からも似た話をされたのです」
真姫「え…」
ちょっと前
理事長室
理事長「…あなたたちには言おうかどうか悩んだのだけれど、…わかったわ。聞かせておきましょう」
理事長「これからの音ノ木坂について」
海未「…」ゴクリッ…
理事長「我が音ノ木坂学院は廃校の危機に貧していたにも関わらず、前年度には想定以上の入学希望者が押し寄せました」
理事長「そのおかげで廃校が取りやめとなり、そして今年度、数多くの新入生が入ってきてくれてとても喜ばしい結果となった」
理事長「これには少なからず…いいえ、大いにあなたたち、μ’sの活躍に依るものがあるでしょう」
穂乃果「お、おぉ…!お褒めの言葉ありがとうございます!えへへ、褒められちゃった。やった甲斐があったね」
ことり「う、うん」
海未「しかし、それがどうして再びの廃校危機につながるのですか?」
理事長「そこまではいいのだけど…、そう、この学校への入学希望の理由の多くはあなたたちμ’sに依るところが大きい」
理事長「ですから…、既に解散してしまったμ’sの影響がどこまで続くかが、職員の間で問題となっているんです」
穂乃果「へ…?」
ことり「つまりそれって、私たちが解散しちゃったから、来年はオトノキに人が入ってこない…ってこと?」
理事長「私たちにとってもこういう事例は初めてだから断言はできないけれど、…その可能性は考えられるから」
理事長「そもそも音ノ木坂は近年UTX学院に生徒を…、言い方は悪いけれど、取られる形になってきていて、そのせいで採算が取れない事態を招いていた…」
理事長「スクールアイドル効果もあって今年は凌げたけれど、μ’sは解散して…これからどうなるかはわからない、わよね」
理事長「実際スクールアイドルに対してサポートも豊富なUTXの方が、当校より土壌は豊かでもあるでしょうし…」
理事長「μ’sロスがこの学校にもたらす影響を想定すると…最悪、近い将来また、ってことも考えられるって、…そういう話」
理事長「…あぁ!ご、ごめんなさい…。本当はこんなこと、あなたたちに言っても仕方ないのにね…」
海未「い、いえ…、内情を教えていただけただけでもありがたいことですが…」
ことり「だけど、もうμ’sにはどうしようもないよ?だって絵里ちゃんも、希ちゃんも、にこちゃんもいない…」
ことり「どうやったって、μ’sは戻ってこれないんだもん…」
理事長「えぇ、わかっています。あなたたちが決めたこと、だものね」
理事長「この件に関してはちゃんと、大人が解決すべきことだとはわかっているのだけど…」
理事長「…去年は、あなたたちがいなければ廃校を招いていたのだもの。自分が信用、できなくて…」
ことり「お母さん…」
理事長「頼りのない大人で…母親でごめんなさいね。…だから、恥を忍んで、少しだけでも力を貸して欲しいの」
理事長「あなたたちが守ってくれたこの音ノ木坂学院を、今年、来年だけじゃなくって…この先ずっと続けていけるようにって」
理事長「そのことをちょっとでも意識しておいて欲しい、…無理にとは、言わないから」
海未「…理事長」
穂乃果「わ、わかり…ました?」
ことり「どうして疑問系なの…」
今
生徒会室
海未「…とのことです」
真姫「そう…。理事長もそんなことをね」
海未「学校の今後のことについて私たちが深く関わる、ということにはなりませんが…確かに、μ’sを失った影響は、学校内外問わず大きいかもしれません」
海未「先ほど運んできた書類、これら全部、μ’s解散への抗議文…正確にはやめて欲しくない旨の意見が書かれたのものです」
真姫「っ…!これ、全部…」
海未「学校だけでなく、研究部…μ’sの生きた証を残すには、今のままではいけない。…真姫も、そう思っているのですね」
真姫「…えぇ。ずっとμ’s、μ’sじゃ前に進めないわ!μ’sにも負けないくらい…大きな何かが必要だと思うの!」
真姫「そうやって誰かの記憶に残ってこそ、μ’sは…まだ、生き続けられるんだもの」
海未「…なるほど。わかりました」
海未「かといってμ’sをどうすることもできない以上…真姫の言うとおり、μ’sに変わる大きな存在が必要になってくるもかもしれませんね」
真姫「…さっきの話、穂乃果とことりはなんて言ってたの?」
海未「ことりは以前から少々聞いていたらしく…これまで以上に積極的に活動していくべきだ、と思っているようです」
真姫「そう、ことりも…。穂乃果は?」
海未「…『理事長もことりちゃんも考えすぎだと思うけどなー』…と」
真姫「…穂乃果らしいわね」
海未「とにかく、私たちが今できることは直近の部活動紹介で新入生の期待に添える活動を紹介することでしょう」
真姫「その話ならちょうど今してたわ。μ’sのことをアピールしていく方針だったから、それも変えていかないと」
海未「そうですね。…っと、話し込んでしまいました。早く私たちも部室へ向かいましょう、真姫」
真姫「えぇ、そうね」
部室
真姫「ぁう…」
海未「これは…」
雪穂「で、そう!ラブライブ本戦のさぁ…!まさか、あそこでリハーサルが入るなんてっ…!!」
亜里沙「感動でした!!あの瞬間はもう一生忘れないと思います!あ、あとアキバでみんなで歌ったことも…」
穂乃果「うんうん!そうだよねそうだよね!!私もあの時は感動して…、あ!海未ちゃん!真姫ちゃん!」
海未「あの…一体何を話して…」
凛「雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんと話してたらなんだかμ’sの話が盛り上がってきちゃって、去年の思い出話に火が付いちゃったみたいで…」
花陽「そこに穂乃果ちゃんとことりちゃんが帰ってきて、穂乃果ちゃんが話に加わってさらにヒートアップ…?」
海未「ことりは…黙って見ていたのですか?」
ことり「穂乃果ちゃんがあまりにも楽しそうだったから、口を挟みづらくて…」
真姫「…そういうところ直さないと、また痛い目見そうね」
ことり「ご、ごめんね…」
穂乃果「ん?何の話ー?今は二人と盛り上がってるんだから水刺さないでよねー!でえっと、どこまで話したんだっけ…」
真姫「…これじゃ、今日は真面目な話はできそうにないわね」
海未「楽しそうにしているのを邪魔するのも、ですしね。…明日にしましょう」
真姫の部屋
真姫「はーっ…、今日はなんの練習もできなかったな…」
真姫「…そりゃあ、どういう風に続けていくかすら決めてないんだもんね。練習のしようがないわね…」
真姫「紹介のことを考えるのも大事だけど、その前に新しいスクールアイドルの在り方について話し合うのも大事かも」
真姫「なんにせよ…、ふぅ…。去年よりもしがらみが多くて大変そうね…」
真姫「…去年」
真姫(去年は、何もかも新鮮で…やろうと思ったことを全部やってきた)
真姫(やりたいことがそのままやるべきことになって、どこまでも突っ走れた)
真姫(こんな冴えない私でも…あのラブライブのステージに立てた)
真姫(目を閉じると、瞼の裏に浮かんでくる情景)
真姫(あの日も、あの日も、…どんな日のことだって)
真姫(昨日のことのように…うぅん、今日のことみたいに思い出せる)
真姫(もう、一秒だって忘れることのできない、最高で…最高としか言い表せない素敵な思い出)
真姫(あの9人だからたどり着けた頂点、そこから見ることのできる景色を)
真姫(…もっと、多くの人に見せてあげたい)
真姫(μ’sに憧れて音ノ木坂に入ってきた多くの少女たちに、あの夢の舞台を体験させてあげたい)
真姫(だから、今は)
真姫(いつまでもμ’sに頼っていちゃいけない)
真姫(μ’sがなくても届くんだってことを証明しないと、誰も見ることのない幻と消えてしまう)
真姫(私たちは、誰の心からも消えてしまう)
真姫(それは…嫌だから)
真姫「…せめて、曲の一つでも作らないと」
真姫(倦怠感を振り切って机へと向かう)
真姫(自分でも不可解なくらい、焦っているのがわかった)
2年教室
花陽「おはよう、真姫ちゃん」
真姫「おはよう、花陽、凛」
凛「いやーにゃははー、間違えて1年生の教室行っちゃって焦ったにゃー!雪穂ちゃんにからかわれちゃった」
真姫「あはは、あるあるね」
花陽「凛ちゃんもドジすることがあるんだねー」
凛「お恥ずかしいにゃ~」
真姫「…あ、そうだ。ねぇ二人共、その…朝からこんな話もどうかと思うんだけど」
真姫「スクールアイドルはどうやって続けていくつもりか、考えてる?」
凛「んにゃ?どうやって…?」
花陽「えっと…、6人で変わらず続ける…んじゃないの?」
真姫「…それじゃ、μ’sから卒業生が抜けただけじゃない」
凛「ダメなの?」
真姫「ダメッ…かどうかは、みんなで話し合わないとわからないけど…私はダメだと思う」
真姫「もうμ’sはおしまいにする、って言ったのに6人で続けてたら、それはメンバーが抜けたμ’sでしかないじゃない」
凛「あぅ…うん、そうかもね…」
真姫「…そう。6人でやってたらそれはもう…劣化したμ’sよ」
花陽「うーん、そっかぁ…。劣化…」
花陽「真姫ちゃんはどうしたいか、考えてるの?」
真姫「え…。あー、そうね…」
真姫「3人ずつで別れて活動する…とか」
凛「どう分けるの?」
真姫「それはまだ考えてないけど…」
凛「凛は…別れるのは寂しいって思う。だからさ!雪穂ちゃんと亜里沙ちゃんを入れて新生スクールアイドルを…!」
花陽「あの二人は別にユニット組むって話だったんじゃ…」
凛「あ、そういえば」
真姫「…これも一朝一夕では決まりそうもないわね」
部室
ガチャッ
真姫「あれ、海未とことりだけ…?穂乃果は?」
海未「あぁ、真姫。穂乃果は用事がある、とかでお昼は一緒には食べられないそうです」
真姫「生徒会の仕事かしら…?」
ことり「さぁ?詳しいことは聞かなかったから。…真姫ちゃんこそ、凛ちゃんと花陽ちゃんは?」
真姫「さっきの授業で凛がわからない問題があったから花陽と復習中。理解できたら行くから先行っててって言われたけど…」
真姫「…あの様子じゃ昼休みには終わりそうもないわね」
海未「二年に上がったばかりだというのに前途多難ですね…」
ことり「穂乃果ちゃんみたい。あ、聞かれたら怒られるかな?」
海未「ふふ、どうでしょう?事実ですからね」
真姫「あなたたちも大変だったのね…。受験もあるしこれからも大変かもしれないけど」
ことり「かもね。…あっと、そういえば…部活動紹介のこと、何か決まった?」
真姫「まだ何も…。休み時間にはちょくちょく二人と話したりしてたんだけど」
真姫「そもそもこれからの活動を決めないと紹介に繋げづらいと思って、その話もしたんだけど、決めきれなくて」
海未「あぁ…そうですね。μ’sに変わるスクールアイドル…。ふむ、難しい…」
ことり「私は…とりあえずμ’sの活動を紹介するのは悪いことじゃないと思うよ?去年までのメインの活動はそれだったんだし」
真姫「えぇ、それもわかってる。μ’sがどのようにして出来てきたのか説明することはもうほぼ決定してるのよ」
真姫「だけど、やっぱりその先が…」
海未「去年のように、ライブを行うのもいいですが…」
ことり「真姫ちゃんはμ’sの曲はやるべきじゃない、って思ってるんだよね」
真姫「…うん。やるなら新しい曲、新しいグループでね」
真姫「もう曲なら何曲か作ってあるから、後は歌詞と衣装と、誰がどうするか…」
海未「もうそこまで?真姫はやる気マンマンですね…。私も見習わなければ」
真姫「ぇ…」
ことり「そういう海未ちゃんは何かしてるの?」
海未「わ、私も耳当たりの良さそうなワードを考えては消しの繰り返しで…」
真姫「…」
真姫(…やる気マンマン、だなんて。なんだか、変な感じ…)
真姫(私なんてそんな、花陽や凛のついででμ’sに入ったようなもので)
真姫(きっと私より、穂乃果や海未やことりや花陽の方が、μ’sに対する思い入れは強いはず、なのに)
真姫(今一番焦ってるのは、私)
真姫(どうして私が一番焦っているの?私が冷静に状況を判断できる能力を持っているから?)
真姫(多分、違う)
真姫(…私が焦っている理由は、それは…卒業していった3人を消したくないから)
真姫(μ’sに溶け込めなかった私に親身になって語りかけてくれた絵里)
真姫(不器用な私に本音を持って接してくれた希)
真姫(全然似てないようで、とても似ているような…不思議な存在だった、にこちゃん)
真姫(彼女らの遺したμ’sへの思いを、ずっと受け継いで行きたい)
真姫(μ’sの名を継ぐことはできないけれど、思いだけはせめて)
真姫(そう思ってるから、多分…誰よりも不安なのかも)
真姫(私にとってあの3人は、μ’sにはなくてはならない3人だったし、私がμ’sの一員となる上でも、なくてはならない存在だったから)
真姫(もちろん今のみんなも大切だけど…だからこそ失くしたくない)
真姫(9人の魂は、ずっと一つのままでいたいから…!)
真姫「…っはぇ?」
海未「あの、先ほどから黙り込んで…考え事でしょうか?」
ことり「アイデア、何か思いついた?」
真姫「え?あ…私、そんなに黙ってた?」
ことり「うん、さっきからずーっと…」
真姫「…そう。いえ、アイデアは浮かんでなくて…」
海未「そうでしたか…。私とことりで話した結果、やはりμ’sの活動の紹介とライブを披露するのが最善と考えました」
ことり「それに関してはいい?」
真姫「あ、えっと…えぇ。私もそれでいいと思う。ただ…アイドル研究部をスクールアイドルをする子だけの部活にするかどうかの問題もあるから…」
ことり「今までほとんど私たちだけでやってきてたけど、スクールアイドルが増えると衣装を作る人も必要だもんね」
海未「作曲も作詞も必要となるので、それを専門にする人たちも部員として迎え入れるのもアリでしょうね」
海未「今までの研究部とは形は異なりますが、門戸を広げていくのは新たなスクールアイドルの一歩としては考えられると思います」
真姫「うん。私もそうするべきだと思うわ」
ことり「そうすると…手伝ってくれてたヒデコちゃんたちも実質アイドル研究部になっちゃうのかな?」
海未「これからは彼女たちの活動も研究部の一部となりうるわけですが…確かにそうなると研究部に入っていない人でもサポートはできるわけですから…」
ことり「う、うーん…ごっちゃになってきちゃったよ…。結局どうすればいいの…?」
真姫「そのあたりの細かな分け方は今度にしましょう。今はサポートの人たちも研究部に入っても可、くらいでいいじゃない」
真姫「次は肝心の誰がライブをやるか、でしょう?そのことを…」
ガチャッ
凛「おまたせー!にゃははーん!」
花陽「あ、遅くなってごめんなさい。何かお話、してたみたい?」
ことり「二人共!お勉強はもういいの?」
花陽「た、多分…?凛ちゃんは大丈夫だって…」
凛「う、うん!大丈夫大丈夫!」
海未「少し心配ですが…」
真姫「…ちょっと、話の途中だったんだけど」
花陽「あ、ご、ごめん。遮っちゃって…」
凛「え、ライブやるの?やらないって昨日は…」
真姫「保留ってことだったでしょう?やらないとは言ってないわよ」
凛「あ、そっか」
海未「ちなみに、誰か自分からやりたいという人は…」
凛「あ!凛やりたい!」
花陽「わ、私も…」
ことり「私もできるなら…?」
真姫「そんなこと聞いても誰だってやりたがるわよ!みんなスクールアイドルが好きなんだから!」
海未「ですよね…」
ことり「あの、そもそも穂乃果ちゃんいないけど、勝手に決めていいのかな…?」
花陽「あ、ホント…穂乃果ちゃんはどこ?」
真姫「えっと…どこにいるんだっけ?」
海未「私も聞いてないのでどこにいるかまでは…」
凛「えー!それじゃあ決められないよー!せっかく来たのに無駄足ー?」
真姫「無駄足ってことはないでしょ…!せめてこれからの活動方針くらい考えても…」
花陽「あの…その、ライブって本当に決定でいいの?今からで間に合うかな?」
真姫「え、花陽、そんなこと今…」
海未「しかし、アイドル研究部の活動をアピールする場としてライブ以上のものは…」
ことり「でも去年も衣装ギリギリだったし、必然的に歌う人数も限られてくるよね…」
凛「それにさー、真姫ちゃんは6人はダメだって言ってたけどじゃあ5人ならいいの?どこまでオッケーなの?」
真姫「あの、ちょっ…」
凛「あ!そうだ!スクールアイドルの補佐的なことをする人は入部するかどうかは?」
海未「それはさっき話し合ったところ入ってもいいという…」
ことり「あの、それなんだけどやっぱり私…」
花陽「えっと、ちょっと待って、ライブの話は…?」
真姫「ねぇってば…!」
雪穂「お、お邪魔します!お姉ちゃーん…ってまたいない!」
亜里沙「もう雪穂~、だから急に入っちゃマズいって…お話中だし今はやめて…」
凛「あ!雪穂ちゃん、亜里沙ちゃん!遊びに来たの?どうぞどうぞ!入ってにゃ!」
ことり「え、今は…」
凛「未来の後輩ちゃんだもん!邪険には扱えないよ!」
雪穂「え、いいんですか?話し合いは…」
真姫「そうよ!今はこの二人は…」
海未「あ、いえ…新入生を交えてのディスカッションも新しい可能性が見えるかもしれませんし…」
花陽「せっかく来てくれたんだし、帰すってわけにも…」
真姫「それはそう、だけど…」
亜里沙「あの、お構いなく…亜里沙たち、端で座っているので…」
凛「うん!…で、あれ?何の話だったっけ…」
真姫「だからっ!…え、あれ…?何を話して…」
花陽「部活動紹介でライブをするって話でしょ?それで誰がやるかって」
雪穂「おぉっ!?ら、ライブするんですか?誰が!?」
ことり「それはまだ決まったわけじゃなくて…」
亜里沙「μ’s…復活するんですか…?」
海未「そういうことではなく、私たちが新たにグループを結成して始めようとい…」
凛「そうだ!なんなら雪穂ちゃんたちがライブ、やる?」
真姫「えっ…!?」
雪穂「え!マジですか?」
ことり「あ、それいいかも。私たちの活動方針がまだ決まってないなら二人にライブしてもらって…」
海未「ま、待ってください!いくらなんでもまだ部にも入っていない新入生を…」
亜里沙「あ、亜里沙!ライブができるならやります!やらせてください!」
花陽「あの、そういう話じゃなくてね?う、うぅぅ…」
凛「えー!いいでしょ!二人がライブ成功させたらそれこそ次世代のμ’sの誕生じゃん!」
雪穂「次世代のμ’s…!なんてカッコイイ響き…!!」
海未「ですからそれは…っ!」
真姫「もうっ!!いい加減にしてっ!!!!!」
シーン…
花陽「真姫ちゃ…」
真姫「これじゃいつまで経っても話が進まないじゃないっ!!」
真姫「今は一刻も早くこれからのアイドル研究部を決めなきゃいけないのに…!もっとみんながまとまらなきゃいけないのに!!」
真姫「ライブの事一つ、満足に決められないようじゃ…この先どうなるかだって、わかったものじゃないのよっ!?」
真姫「これがうまくいかなかったら、μ’sが、絵里が、希が、にこちゃんがっ…!学校だってなくなっちゃうかも知れないのにっ…!」
真姫「終わらせたくないのにっ…どうしてわからないのっ…!!なんでよっ…!なんでっ!!」
ことり「真姫ちゃん…」
真姫「う、うぅっ…ぐ、ぅっ…うあぁ…」
凛「真姫ちゃん…?な、泣いてるの…?」
真姫「誰が泣いてなんか!泣いて、なんかっ…ないわよっ…!」ツー…
ピチャッ…
真姫「え…?」
真姫「ウソ、なんで…涙…?」
亜里沙「真姫、さ…」
真姫「なによこれ、意味わかんない…」
真姫「意味わかんないっ!!」ダダッ
海未「ま、真姫っ!」
ガチャッ バダンッ!!
ことり「真姫ちゃん、出て行っちゃった…」
亜里沙「あの、やっぱり亜里沙たち、お邪魔、でしたか…?」
凛「えっ、あ、そ、そんなことはない…けど…」
海未「…想像していたより真姫…現状に焦っていたのかもしれません」
海未「μ’sがなくなってしまってどうするか皆不安の中、手探りで未来を探そうとしていたのですから…」
ことり「ど、どうしよう…」
雪穂「さ、探しに行きましょう!放っておけませんよ!」
花陽「う…でも、それは…今真姫ちゃんを追いかけても…」
海未「彼女も見られたくなかったから、逃げたのでしょうしね…」
凛「…真姫ちゃん、泣いてたにゃ」
雪穂「あっ…」
海未「感情の行きどころを無くした結果、涙が溢れてしまったのだと思いますが…今の真姫には自分の涙の原因がわからないでしょう」
ことり「今追いかけちゃうと、却って傷つけちゃうかもしれない…からね?」
雪穂「…はい」
花陽「とっ…とりあえず今は!真姫ちゃんの言う通り、ちゃんと冷静に話し合おう!」
凛「真姫ちゃんが帰ってきたときのために、また怒られないようにね!」
亜里沙「皆さん…」
ことり「後は、真姫ちゃんが戻ってきてくれるか、なんだけど…」
真姫「はぁっ…はぁっ…」
真姫「げほっ、げほごほっ…!き、急に走ったから息が…はぁっ…」
真姫「はぁ…」
真姫「…私、何してるんだろう」
真姫「一人で突っ走ってテンパって絡まって…泣いちゃって」
真姫「ホント、意味わかんない…」
真姫「なんで泣いちゃったのよ…バカ…。私の、バカ…」
真姫「…」
真姫「…どうしよう。こんなところで、燻ってる場合じゃないのに…」
真姫「ちゃんともっと皆と話し合って、これからどうするか考えなきゃなのに…」
真姫「…気まずくて、帰りたくない…」
真姫「…はぁ」
「…~♪」
真姫「…うん?」
真姫「どこからか…声?それに…」
真姫「ピアノの、音も…」
真姫(ピアノってことは、つまり…音楽室?)
真姫(誰かがピアノ演奏をしている…?)
真姫(いったい誰が…)
音楽室前
「…~♪」
真姫「…音楽室まで来たけど、これって、この曲って…」
真姫「それに、この歌声は…」
「 まけないゆうき 私たちは今を楽しもう 」
「 大好きだばんざーい 頑張れるから 」
「 昨日に手を振って ほら 前向いて 」
真姫(音楽室の窓を覗き込んだ私の目に映ったもの)
真姫(それは…ピアノを弾き語る、穂乃果の姿だった)
真姫「穂乃果…?」
穂乃果「…うん?…ほぁっ!?ま、真姫ちゃん!いつからそこにいたの!?」
真姫「ついさっき、だけど…あなた、何して…」
穂乃果「え?あ、えっと…これはその~…どうしよっかなぁ…内緒にしてたんだけど」
真姫「内緒?」
穂乃果「も、もうバレちゃったし仕方ないか!えっとね、これは…今度の部活紹介の時にやろうとしてたことでね?」
真姫「部活…紹介で?」
穂乃果「うん!できればみんなにもサプライズにしたかったんだけどなぁ~」
真姫「ばっ…バカぁ!今みんなでそのことについて話し合ってるところなのよ!?何がサプライズよ!案があるなら早く言いなさい!」
穂乃果「えっ、そ、そうだったんだ…。ごめん…」
真姫「でもピアノの弾き語りだなんて…、おかしいでしょ。そもそも、どうして穂乃果…いつの間にピアノ、弾けるように?」
穂乃果「ふふ、実はちょっと前から練習してたんだ~。一人でもできるように、って」
真姫「なんでよ?どうして一人でやる必要があるの?ピアノなら私ができるし、そもそも弾き語りはアイドルっぽくないでしょ!?」
穂乃果「それなんだけど、ね」
穂乃果「アイドルっぽくなくても、いいと思うんだ」
穂乃果「私ね、ずっと考えてたの」
穂乃果「どうして、スクールアイドルなのかな、って」
穂乃果「私はどうして、スクールアイドルをやりたい!って思ったんだろうって」
真姫「それはA-RISEを見て、って…」
穂乃果「うん。もちろんそうなんだけど…A-RISEを見てそう思った理由」
穂乃果「それってきっと、やっぱり音楽が好きだから、なんだと思う」
真姫「音楽が…?」
穂乃果「アイドルだけじゃなくて、歌うことが、音に合わせてダンスすることが、皆と盛り上がることが…」
穂乃果「その全てが好き!で、きっとその根幹にあるのが音楽なんだって」
穂乃果「だったら…むしろ私はね、アイドルっぽさをアピールするより、音楽を最初に知ってもらいたくて…ピアノを弾いてみたの」
真姫「だけどっ…なんで一人なのよ?それを教えてくれたら、私が弾いたのに…私はいらないの?それともサプライズってだけ?」
穂乃果「えっ…!ま、真姫ちゃんがいらないってことはないよ!すっごい必要だよ!む、むしろそろそろ一人では限界だから教えてもらおうって思ってたんだけど…」
穂乃果「でも、一人で演奏しようって思ったのは…少し前の出来事がきっかけでね」
穂乃果「もし、みんなと離れ離れになって、一人になっても…音楽を多くの人に伝えたいって思ったから」
穂乃果「それでね?もしその音楽で、歌で…迷ってる子に道を示してあげられたら、なんて」
真姫「迷ってる…?」
穂乃果「あ、うぅん!なんでもない…」
穂乃果「まぁ、つまり!まずは何よりも一人の歌から!って考えてのこと!」
真姫「なんで、その歌なのよ…。私の作った…歌」
穂乃果「だって…ここが、私の始まりでもあったから」
真姫「えっ…」
穂乃果「私、これから音ノ木坂に入ってくる子に、私たちの見た景色を見せてあげたいの」
穂乃果「あの光る星の海の中で見た光景を…もっと多くの子たちに知ってほしい」
真姫「っ…!」
真姫(それは…私と、同じ…)
穂乃果「だったらね」
穂乃果「その始まりの光景は…ピアノでのこの曲、だったんだもん」
穂乃果「真姫ちゃんがここで、この曲を弾いてて、それを聞いてすごいって思ったんだ」
穂乃果「同時に、これなら、って思った。これならきっと、できるって」
穂乃果「そこから始まったんだよ!私の…私たちの無謀な挑戦!」
穂乃果「それは、たった一人の」
真姫(たった一人の、音楽から…)
穂乃果「私たちを見て、聞いて、アイドルを始めようって思ってくれた人たちなら、きっとこの学校だって好きになってくれる」
穂乃果「だって、音ノ木坂だよ!?音が、音楽が詰まった…とっても素敵な学校だもん!」
穂乃果「だから、μ’sがいなくなったからって学校がなくなるなんて…みんな、考えすぎだよっ」
真姫「穂乃果…」
真姫(穂乃果は何も考えてないわけじゃなかった)
真姫(むしろ、誰よりも一番先を見据えていたのかも)
穂乃果「あ、これって言っていいことなんだっけ…。ふわぁぁ…う、最近ピアノの練習ばかりだったからあまり頭が働かなくて」
真姫「…それで、生徒会長の挨拶もまともにできなかったってこと?」
穂乃果「ぐえ…そうです…。うー、こんなの知られたら海未ちゃんに怒られる…」
真姫「もう…バカなんだから」
真姫(…でも)
真姫「ちゃんとみんなにも言わないとね?穂乃果はこんなこと考えてるんだって」
穂乃果「え゙っ…!だ、ダメだよ~!」
真姫「言わない方がダメなの!部活紹介でみんな悩んでるんだから!…いい案だと思うから言ってるの!」
穂乃果「で、でも~心の準備が…」
真姫「いいから行く!新入生たちにも…私たちの見てきた景色、見せてあげるんでしょっ?」
真姫(そうして嫌がる穂乃果の背を押して、部室へと連れて行った)
真姫(色々話し合った末…部活紹介の一番最初に、穂乃果の弾き語りは採用されることになって)
真姫(それから…)
講堂
海未「っ…!講堂にこんなに人が入ってきてくれるなんて…!はわっ…!!」
ことり「海未ちゃん、しー。今から穂乃果ちゃんのピアノ演奏なんだからー…!」
亜里沙「わ、わーすごい…!」
雪穂「おっ…お姉ちゃんがピアノ弾いてる!?なんでっ!?そんな話聞いてないよ…!」
亜里沙「新入生には秘密だったのかな?」
花陽「ほ、穂乃果ちゃんのピアノ演奏でしたー!こっ、ここ、ここからははは、み、μ’sのれ、歴史をですね…!」
凛「かよちん緊張しすぎー!もっと落ち着いて~!」
真姫「はぁ…これじゃ、穂乃果のこと、バカにできないわね…」
凛「…そして、μ’sは!なんとなんと優勝しちゃうんだにゃー!うぅぅ…あの時は感動したねぇ…。真姫ちゃんなんか大泣きで…」
真姫「なっ…泣いてなんかいないわよー!バカァ!」パコンッ
凛「いだっ」
アハハハハ…
凛「ハッ…!笑いが取れている!やったにゃ!」
真姫「笑われてるって言うのよ、これは…」
花陽「え、えっと、次はー…」
花陽「えー…、ではここで!3年生の3人によるライブを披露させていただきます!」
真姫「存分に楽しんでいってね!」
舞台裏
凛「結局ライブもやるんじゃーん。凛もやりたかったにゃー」
花陽「ふふ、凛ちゃんは欲張りだなぁ。でもちゃんと決めたことでしょ?」
真姫「…穂乃果の始まりが私のピアノなら。私たちの始まりは…ここでの、あの曲なんだから」
パチパチパチパチ!!
雪穂「お、おぉぉぉ!3人で歌ってるの、初めて見たかも…!」
亜里沙「カッコイイ…!」
ことり「あ…ありがとうございます!えへへ…」
海未「あの時は叶わなかったことが…できているんですね…。うぅっ…」
穂乃果「もう!海未ちゃんってば涙もろいよ!…あ!新入生の皆さん!部活紹介に来てくれてありがとう!私たちは…」
穂乃果「アイドル研究部です!」
穂乃果「この曲とこの衣装は、去年ここでこの3人で披露した曲と同じなんです!」
ことり「衣装はちゃんと今の身体に合うように新調したんだけどね?どうー?似合ってるかなー?」
<ニアッテマスー!!
海未「ふふ、ありがとうございます。去年はここで見てもらえた人はとても少なかったのですが、今年はこんなにもたくさんの人の目に触れて…」
海未「わっ…!私もっ…!恥ずかしい思いをして詩を綴った思いがあるというものでっ…!あうぅっ…!!」
凛「ちょっと海未ちゃーん!どれだけ涙腺脆いのー!泣いてばっかじゃーん!」
海未「だ、だって凛…あうぅぅう…!嬉しかったんですよぉぉ…!」
ことり「海未ちゃんってば…泣き虫さん」
真姫「…っと、さて!じゃあライブも終わったことだしそろそろ部活紹介も終わりが近づいてきたわね」
花陽「うんっ!元から興味を持ってくれた人も、これを見て興味を持ってくれた人も、是非アイドル研究部をよろしくお願いします!」
凛「それじゃ、今日はここまで…」
穂乃果「あー!まってまって!最後に…もう一回ピアノ!」
海未「えっ…?聞いてませんよ?というかまたですか?」
穂乃果「今度はー…新入生の皆さんもご一緒に!」
ことり「あはっ、いいかも!」
花陽「え!急にそんな…み、みんな?大丈夫…かな?」
<ダイジョウブデース!!
凛「どうやら準備はバッチリみたいにゃー!じゃあ穂乃果ちゃんに続いてー…」
穂乃果「いくよっ!せーのっ…」
「「「「「「おつかれー!」」」」」」
花陽「き、緊張したー…!でも上手く行ってくれてよかったねー」
海未「一時はどうなることかと思いましたが…思っていたよりも全然すんなり行ってくれてよかったかもしれません」
凛「結局やった曲はμ’sの曲だったけど…よかったのかにゃ?」
真姫「うっ…、い、いいのよ。私も少し、考えすぎだったのかもだし」
ことり「μ’sがいなくなったって事実はこれから、ゆっくりと認知していってもらおうって穂乃果ちゃんが決めたんだもんね」
穂乃果「私たちが伝えたのはμ’sの素晴らしさだけじゃないもん!スクールアイドルと、そして…この音ノ木坂も!」
凛「うんうん、そうだよ!やっぱり凛の考えは間違ってなかったのだ!真姫ちゃんが頭カッチカチだからいけないにゃー!」
真姫「あんたは何も考えてないだけでしょ…ったく。まぁでも…紹介を見て入ってきてくれた子達にも…」
真姫「去年の私たちの後を追うように、華やかなステージに立ってもらえたら…悩んだ甲斐もあったってものでしょ」
「なーに気取ってんのよ。カッコつけちゃって!」
モギュッ
真姫「ひょわぁぁぁっ!!?後ろから…誰っ!?…って…!」
ことり「にこちゃん!希ちゃんに、絵里ちゃんも!」
にこ「ふふふ、見てたわよー?気づいてた?」
希「なかなか素晴らしい紹介やったんやないかな~?」
絵里「ちょっと…いえ、だいぶ見ていてハラハラしたけどね」
花陽「来てたんだっ…!ビックリ!」
穂乃果「こ、これはっ…部活を卒業したOGの方々から挨拶に来ていただけるという青春イベントなのでは…!」
凛「おぉ!燃えるにゃ!」
海未「なんですかそれは…。しかし、なんの連絡もなくどうして…」
希「んふふ、それはね…?」
にこ「それは…」
絵里「そ・れ・は…」
真姫「…えっ」
にこ「はいこれ。…誕生日プレゼントよ」
絵里「週明けのこの日が誕生日だって聞いてね?どうせならサプライズでってにこがね」
希「部活紹介のことで忙しくてみんなはそれまで手が回らないやろうからってことで!」
真姫「え、こ、これ…プレ…?っていうか、私…今日…」
凛「お、おぉぉ!!ま、真姫ちゃん誕生日だったにゃ!?」
ことり「そういえば確かに…!」
花陽「わ、私は覚えてたよ!ぷ、プレゼントはカバンの中にあるんだけど…!と、とってくる!」
穂乃果「あ、ちょっと花陽ちゃん!?そんな急がなくてもっ…」
真姫「あ、えっ…えっ…!」
真姫「その…あ、ありがっ…あり…」
絵里「…なんだか真姫が変なことになってるんだけど」
希「嬉しすぎて声も出ない感じ~?」
にこ「どうよ?にこたちのお祝い?感想はー?」
真姫「そのっ、えっと、あ、あ、あ…!」
真姫(私の中の人生のピークだって思ってた、去年の出来事)
真姫(でも、去年のこの日、私は…私はこんな体験はしていなくて)
真姫(私の知らない、あの日の景色)
真姫(そんな景色も…悪くないかもって、思ったりして)
真姫「あっ…ありがとうっ…!!」
おわり
アニメの中のアイドル研究部もそうだけどリアルでのラブライブ!にもこれからも頑張ってもらいたいです
ついでに真姫ちゃんの誕生日も祝いました 超遅刻だけどごめんね真姫ちゃん
やや纏めきれなかった感はあるけど楽しんでもらえれば僥倖 ほなな
本編の後新年度どうなってくかというところに一つの方向性を示してくれた感あるな。
リアルでもμ’sのいない新年度だから漠然とした不安あったけどなんか楽になった
SSでも彼女達が輝ける次回作期待してます
もっと意識されていいよなー、って思ってたから、うまく提示してくれてなんか嬉しい
映像が浮かんでくるというか上映されてる感じ
にこスティからだけどホントに上手いよ…
構想からどれくらいで完成したのか気になる身になる
サザエさん時空じゃない、まきちゃんにとって最高の誕生日だね
3年生卒業後のアイドル研究部のこれからって二次創作ならではで好き
-
前の記事
【ラブライブ!】俺はくっすん似の彼女とデートの待ち時間ここにいるのにお前らと来たら・・・ 2020.04.13
-
次の記事
【ラブライブ!】サンシャイン!! ユニットCDの連動特典が決定! 2020.04.13