【ラブライブ!】曜「私と千歌ちゃんのみかんな関係」
- 2020.04.24
- SS

千歌「みかん!」
曜「千歌ちゃんはいっつもみかんだよね…飽きないの?」
千歌「…曜ちゃんは白ご飯食べてて”飽きたなぁ”とか思ったことある?」
曜「ううん…ないけど」
千歌「それと同じことだよ。」
曜「はぁ…」
曜「ティラミスね」
千歌「それらは確かに美味しいかも知れないけれど結局いつも食べるものは普通で地味でありきたりなものが一番なのだよ」
曜「ふーん…わかったようなわからないような…」
千歌「ふふん、曜ちゃんにも分かる日がきっと来るよ」
曜「お母さん、まだみかんあったっけー?」テテテ
せわしなくみかんの皮を剥く彼女の指先は既に少し黄色くなっていて、舐めたら多分柑橘系の清涼感溢れる甘酸っぱい味がするだろう。
そんなことを思って千歌ちゃんをずっと見てたら「食べる?」と言ってみかんを一粒差し出してくれた。
あーん、と口を開けたら千歌ちゃんが手ずから食べさせてくれた。
やっぱり甘酸っぱい味がした。
ずっと昔から好きだった。
もちろん私もみかんは好きだが、千歌ちゃんはいつもみかんを持ち歩いていた。
そして甘酸っぱい香りを周りに撒き散らしながらそれを美味しそうに頬張るのだ。
そういえばみかんを好きになったのは千歌ちゃんが私の隣でいっつも食べてたからだっけ。
「美味しい?」って聞くと、決まってあーんしてくれた。
それで私が「美味しい」って言うと、彼女は嬉しそうに笑うのだった。
曜「え、どうかしたの?」
千歌「みかんを剥くと、思ってたよりささくれに沁みるの」
曜「そっか、じゃあしょうがないね」ムキムキ
曜「はい」
千歌「あーん」パクッ
曜「美味しい?」
千歌「おいしい!」
千歌「曜ちゃんもあーん」
曜「あーん」パクッ
曜「…」ジュプジュプ
千歌「あーん、指しゃぶっちゃだめ!」
曜「ああ、ごめん」
やはり、みかんアイドルというのはイモ過ぎる(みかんだけど)という考えなのだろうか、
彼女は何かときらびやかなものばかり好むようになった。
前々から自身を普通怪獣と形容していた千歌ちゃんのことだ。
大きく自分を変える良いチャンスだとでも感じたのかもしれない。
彼女の嗜好は大きく変化したように思えた。
それこそマカロンだのティラミスだのをことに愛するようになったのだ。
そして、私の隣で あの甘酸っぱい香りを撒き散らすこともなくなってしまった。
千歌「ほんと!?」
梨子「東京のケーキ屋さんのお菓子だっけ?」
千歌「そうそう、ずっと食べたかったんだよね~!」
鞠莉「みんなの分あるから、ゆっくり食べなさい」
善子「ムシャムシャッ!ムシャッ!ムシャッ!」
花丸「モシャモシャモシャモシャズラッ!」
ルビィ「そんなに慌てて食べたら喉につっかえちゃうよぉ…!」
果南「あ、これ美味しい」
ダイヤ「お茶淹れますわね」
お化粧に気を遣って
お洒落に着飾って
流行りのお菓子を食べるようになった。
まぁ、健全な女子高生としてはみかんがどうこう言ってるよりかはよっぽど正しい姿なのだろう。
だけど私はなんとなく寂しかった。
(お菓子自体は物凄く美味しかったです。)
千歌ちゃんの嬉しそうな顔、楽しそうな顔を見るだけでどんなスイーツを食べるよりも甘い気持ちになった。
ただ私には、このことは今までの千歌ちゃんを、千歌ちゃん自身が否定したように思えてならなかった。
みかん千歌ちゃんは、マカロン千歌ちゃんになることを望んでいたのだ。
みかん千歌ちゃんと一緒に過ごしてきた自分は、それがちょっと嫌だった。
ともすれば、千歌ちゃんがあれほど力説していた自身の言葉を曲げたことがちょっとムカついたのだ。
それはすごく千歌ちゃんらしくないことだと思った。
みかん「…」
曜「…」
みかん(曜の裏声)「ネェ、曜ちゃん」
曜「なんだい、千歌ちゃん」
みかん(曜の裏声)「チカね、立派なアイドルになるため日々頑張ってるんダヨ」
曜「それは素晴らしいことだよ」
みかん(曜の裏声)「でもね、たまに思うの」
曜「うん?」
みかん(曜の裏声)「私って普通で地味でありきたりだから…もっとマカロンちゃんみたいになった方が良いのカナって…」
曜「な…」
曜「そんなことないよ!!!」
曜「千歌ちゃんはそのままでいいんだよっ!!」
曜「千歌ちゃんは自分が普通怪獣だって思ってるかもしれないけど、みんなは…私はそんなありのまま千歌ちゃんが大好きなんだよ!」
曜「私の好きな千歌ちゃんを馬鹿にしないでっ!!」
みかん「曜ちゃん…ありがとう…」
曜「だから無理に自分を変えようなんて…考えないで」
みかん「うん、わかったよ…曜ちゃん」
曜「私はありのままの千歌ちゃんでいて欲しい」
みかん「曜ちゃん…うれしい…」
曜「愛してるよ…千歌ちゃん」
みかん「私もだよ、曜ちゃん…」
みかん「お願い…ありのままの私を…」
みかん「食・べ・て…♡」
曜「ガブッッ!!ムシャムシャッ!」モグモグモグモグ
ただ、きらびやかなものに執心する千歌ちゃんの目はキラキラ輝いていて
私と一緒にいるときは見せなかったその表情に少しだけ嫉妬した。
だから精神的な距離を感じてしまっていたのだ。
この頃になるとみかんの香りを嗅ぐだけで胸の奥がザワザワするようになった。
どこからか柑橘系の香りが漂うと周りをキョロキョロ見渡し、千歌ちゃんがいないことを確認しては
一人がっくりと肩を落とすのだった。
鞠莉「特定の匂いや味で、昔の記憶だったり感情がフラッシュバックすること」
鞠莉「そういうのをプルースト効果って言うのよ」
曜「プルースト効果…?」
鞠莉「味覚と嗅覚は脳の大脳辺縁系に直接繋がってるから情動を想起しやすいの」
鞠莉「楽しいとか悲しいっていう気持ち」
鞠莉「あとはドキドキする気持ち」
鞠莉「ついでに…ふふ、エッチな気分も」
曜「へぇ…」
鞠莉「あなたはなんだかんだ言って脆いんだから」
曜「…ありがとう、鞠莉ちゃん」
鞠莉「辛い気持ちは飲んで忘れなさい」
鞠莉「マスター、彼女に飛びっきりのを一杯」パチンッ
「オレンジジュースです」コトッ
曜「…どうも」
鞠莉「じゃあ…」
鞠莉「甘酸っぱい青春に、乾杯」チンッ
曜「ん…乾杯」チンッ
オレンジジュースはやっぱり甘酸っぱくて、ちょっと泣きそうになる。
ここら辺から、私は千歌ちゃんの事が好きなんだなって気がついたのだ。
友情だけじゃなくて、もっと深い意味で。
だから私の気持ちなんて知らずに背後から抱きついてきて、
かわいい顔に似合わないおっきいものを押し付けてきたりする。
でも私は女の子だし、千歌ちゃんも女の子だし、おっぱいでエッチな気分のなるのはイケナイことだよね。
この想いは胸の奥底にしまっておこうと思った。
(具体的には千歌ちゃんが長時間抱きついてきた日など)
そんな日は、私は決まって高飛び込みをするのだ。
重力という強大なエネルギーに身を任せて水面に吸い込まれるのは胸がすき、気持ちが良い。
いろいろな衝動に抗いまくっている自分にはピッタリに思えた。
そして今日はみかんを食べてたら急に「わああああああああ!!!!」ってなったので久し振りにプールに向かうのだった。
この私の得意技は、自分で言うのもなんだがべらぼうに難しい。
できる様になったきっかけは千歌ちゃんが「なんかカッコいい技やってよ」と言ったため、見栄を張ってやってみたらなんかできたのだ。
その時の千歌ちゃんの驚く顔がたまらなく私の胸を打ったから、それ以来これは私の得意技となった。
好きな子の前で良い格好をするために自分の限界を超えるなんて、私は恐ろしく単純な人間なんだなって思ったけど
悪い気はしなかった。
「見てたよー!格好良かった!」
笑みをたたえながらそう言う彼女は
昔と何も変わってない様子で私は安心した。
でも、千歌ちゃんは らしくもない綺麗な髪飾りをつけていて
それだけはやっぱりちょっと嫌な気分になった。
千歌「いや~、曜ちゃんの飛び込みはいつ見ても格好良いね」
曜「そうかな…ありがとう」
千歌「うんうん」
曜「…」
千歌「…」
曜「…」
え、終わり?
曜「…」
微妙な沈黙、居た堪れない。
私と千歌ちゃんは青空の下で隣り合って座っているのに、2人の間は見えない大きな壁で隔てられているようだった。
ここ最近、私が感じていた千歌ちゃんとの距離感を千歌ちゃんもまた感じていたのだろう。
何かを言いたそうにモゾモゾとする千歌ちゃんに、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
何か声を掛けなくては、と言葉を探していると千歌ちゃんが先に沈黙を破った。
千歌「…曜ちゃんはさ、チカとスクールアイドルやってて楽しい?」
曜「…!」
曜「な、何言ってるの 楽しいに決まってるよ…!」
千歌「ん…気を悪くしたのならごめん、謝る」
千歌「でも曜ちゃんって優しいからさ、甘え過ぎかなって思ったんだ」
千歌「最近だと水泳そっちのけでアイドルに掛かりっきりでしょ?」
千歌「…嫌になってないかなって」
曜「私がスクールアイドルのこと嫌だなんて思うわけないじゃん…!」
曜「私はずっと千歌ちゃんと一緒に何かをやりたいって思ってたんだよ!?」
千歌「ふふ、やっぱり曜ちゃんは優しいね」
千歌「チカも曜ちゃんみたいに強くて優しくてカッコよくなれたらいいな…」
千歌「じゃあ、チカもう行くから」
曜「…ちょ、ちょっと!」
そう言って背を向け足早に去っていく千歌ちゃんからは、嗅いだことのない香水の香りがした。
曜「…」
鞠莉「…ねぇ曜 酷い顔してるわよ?」
曜「…あのさ、鞠莉ちゃん」
鞠莉「うん?」
曜「私ってそんなに凄い奴に見えるの?」
鞠莉「う~ん、なんでも器用にこなせるってイメージはあるけれど」
曜「そんなこと…ないよ…」
曜「…本当は…どうしようもない奴なんだよ」
曜「うぅ…千歌ちゃんのばかやろう…」
鞠莉「はぁ…重症ね」
鞠莉「マスター、いつものを」パチンッ
曜「私ね、ずっと千歌ちゃんに憧れてたんだ…」グビグビ
曜「いつも真っ直ぐで、自分を曲げない千歌ちゃん…」グビグビ
曜「そんな千歌ちゃんに少しでも近づける様に色んなことを頑張ってきたんだよ…」
曜「水泳もその一つなんだけど…」
鞠莉「千歌っちからしたら、そのせいでスクールアイドルをやらせることに罪悪感を覚えたってこと?」
曜「皮肉な話だね…」
曜「…私、本当になんなんだろ」
鞠莉「…」
鞠莉「曜はいったいどうしたいわけ?」
曜「え…」
鞠莉「昔の千歌っちに戻って欲しいの?」
鞠莉「それとも千歌っちに愛されたいの?」
鞠莉「今のあなたは何がしたいのか分からなくて子供の癇癪みたいよ」
曜「そ、それはそうかもしれないけど…」
鞠莉「はっきりしなさい」
鞠莉「あなたの願いは何?」
曜「…」
鞠莉「…」
曜「えっと…」
私は…
曜「…」
曜「千歌ちゃんに、みかんをあーんしてもらいたい…」
鞠莉「は?」
曜「私が千歌ちゃんにあげて、千歌ちゃんが私にくれるの…」
曜「…それが、私たちの絆だったんだよ」
鞠莉「…」
曜「私たちはずっとお互い足りないものを補ってきたんだ…」
鞠莉「ふぅん…」
曜「変に気取ったり、無理に変わったりしないで…」
曜「千歌ちゃんが好きだったみかんみたいなままでいて欲しい…!」
曜「私はそんな千歌ちゃんとずっと一緒にいたい…!」
鞠莉「…good」
鞠莉「いい関係ね」
曜「…」
鞠莉「なんで千歌っちは自分の言葉を曲げてまで変わろうと思ったかわかる?」
曜「え…それはアイドルとして…」
鞠莉「本人から直接聞きなさい」
鞠莉「あなたがこれからすべきことの答えは、そこにあるわ」
鞠莉「…近過ぎると見えないことって、あるのよ」
そう言い残すと、鞠莉ちゃんは私を残して店から去った。
千歌ちゃんが自分を曲げた理由。
彼女のことを思うと、また胸の奥がザワザワした。
あと、あの人お会計しないで出て行ったよ。
未だに千歌ちゃんとはきちんと話せていない。
というのも アレ以来、彼女との関係がぎこちなくなってしまったのが大きな原因だ。
千歌「えっ、なぁに?」
曜「衣装のここの飾り、これでいいかな…?」
千歌「わぁ、かわいい…」
千歌「うん、いいと思うよ…たぶん」
果南「…千歌、たぶんじゃ困ると思うんだけど」
千歌「…これでいいよ、うん」
曜「そ、そっか…ありがとう」
鞠莉「…」イライラ
果南「…ねぇ鞠莉、あの2人どうかしたの…?」ヒソヒソ
鞠莉「どうかしてるわよ、本当に…」
鞠莉「結局進展ゼロじゃない…!」
果南「はぁ…」
鞠莉「どうにかしてあの2人に話し合わせる必要があるわね…」
曜「問題ないよ、間に合いそうだね」
梨子「じゃああとは千歌ちゃんの歌詞ね…」
千歌「う…」
梨子「まだ書けないの?」
千歌「ごめん、なんか最近集中できなくてさ…」
梨子「じっくり考えるのはいいことだけど…」
ダイヤ「練習もなるべく早く始めたいし、よろしくお願いしますね?」
千歌「う、うん…がんばる」
曜「…」
鞠莉「…ふぅん」
千歌「え、う、うん…中々言葉が出てこなくて…」
鞠莉「そうね、だったら散歩でもしてきたらいいんじゃない?」
千歌「散歩?」
鞠莉「たぶん、ぶらぶらすれば気も少しは晴れるだろうし」
ダイヤ「そうですわね、篭ってるよりかはいいかもしれませんわ」
千歌「う、うん…わかった、行ってくる」
鞠莉「じゃ、曜 千歌っちについてったげて」
千歌「!」
曜「ええ!?私?」
鞠莉「いい加減バシっと決めなさいよ…!」ヒソヒソ
曜「で、でも私 衣装あるし…」
千歌「そ、そうだよ!曜ちゃんは衣装で忙しいから…」
鞠莉「花丸、ルビィ、善子 ケーキ買ってきてあげるから衣装やっといて」
花丸「らじゃーずら!」
ルビィ「がんばルビィ!」
善子「ふん…イチゴがのってるチョコレートケーキじゃないとヨハネは動かない」
鞠莉「ということだから…ね?」
果南「…ファイト」ボソッ
曜「う…」
千歌「…」
鞠莉ちゃんにしてやられた。
ちょっと悔しい。
曜「…」テクテク
千歌「…」テクテク
相変わらずの沈黙。
ちょっと前までは一日中べったりだったのに、どうしてこんなことになってしまったんだか。
道すがらすれ違う 仲睦まじそうなカップルに恨めしい視線を送りながら、
私は自分の不甲斐なさにウンザリした。
今度はこっちから会話の口火を切らなくてはなるまい。
なんか話題はないか…と頭を抱えて考えていると、
鞄に入れていた(千歌ちゃんごっこ用の)みかんのことを思い出した。
これは是非とも突破口にせねば。
曜「…ち、千歌ちゃん?」
千歌「…うん」
曜「みかん、あるんだけど 食べない?」
千歌「みかん…」
千歌「…そうだね、貰おうかな」
曜「じゃあ、あっちの砂浜に座って食べようよ」
波の音が心地良い。
2人砂浜に座って海を眺めるなんて、いつぶりだろう。
小さい頃は日が暮れるまでここで遊んだなぁ…。
水平線の向こうに見える夕陽は、その頃と全く変わらなくて
まるでみかんみたいだなって思った。
千歌「…」モグモグ
曜「みかん、美味しい?」モグモグ
千歌「…おいしい」
楽しかったことも、悲しかったことも
そして千歌ちゃんへの想いも。
だから 想い出にちょっとだけ勇気を貰って、私たちの話をしようと思った。
千歌「…ん」モグモグ
曜「千歌ちゃんはなんでみかんを捨てたの?」
曜「…昔は大好きで、私によくわかんない講釈垂れてたくらいなのに」
曜「みかんのこと嫌いになったの…?」
千歌「…」
曜「だったらなんで…」
千歌「…でも、ずっとみかんじゃ ダメなんじゃないかなって思ったんだ」
曜「…どうして」
千歌「…だって」
千歌「曜ちゃんはさ、みかん好き?」
曜「…そりゃ大好きだけど」
曜「…はぁ」
千歌「だから、ティラミスにはマカロンとかの方が合うんだよ」
曜「…」
千歌「あ…牛乳の方が合うかな…」
千歌「でも花丸ちゃん牛乳苦手って言ってたしな…」
千歌「花丸ちゃん、ミルクティーは飲めたっけ?」
曜「…」
何言ってんだこの子。
千歌「えぇっ!? チカなりに言葉を尽くしたつもりだったんだけど…」
曜「あの、無理して比喩とか使わなくていいからはっきり言ってよ」
千歌「は、恥ずかしいから直接言わないんだよ…」
曜「大丈夫、よくわからない例えを得意げに使う方が恥ずかしいから」
千歌「ちょっと、曜ちゃんひどいよぉ!」プンスコ
曜「作詞家なんだから、そういうの頑張らないと」フフッ
千歌「う…がんばります」
千歌ちゃんの表情が砕けてきた。
ちょっといい感じかも。
千歌「この際だから恥を忍んではっきり言うよ?」
曜「…うん」
千歌「…正直、チカはずっと曜ちゃんにコンプレックスを感じてたの」
千歌「こんなすごいやつの隣にこんな普通怪獣がいていいのかなって」
千歌「ちょっとだけ惨めな気持ちになったりもした…」
千歌「アイドルとして活動するようになって、そんな考えは…ますます強くなったよ」
曜「…そんな」
千歌「でね、そんなチカが曜ちゃんを振り回してもいいのかなって いろいろ悩んでた…」
千歌「だから頑張って、曜ちゃんみたいなすごい人になろうと頑張ったんだ」
千歌「見た目に気を遣って、流行を追いかけて」
千歌「ティラミスの隣にあっても笑われないようなマカロンになろうと思ったんだ」
千歌「曜ちゃんに迷惑掛けないように」
千歌「胸を張って曜ちゃんの隣に立てるように…」
千歌「…ずっとずっと、曜ちゃんと一緒にいたいから」
曜「…」
私と一緒にいるために千歌ちゃんはマカロンになろうとしてたんだ。
彼女はみかんな自分が嫌いだったのだ。
千歌「…ごめんね」
曜「…バカだなぁ」
千歌「…ごめん」
曜「…ほんと、バカ千歌だよ」
千歌「…」
曜「私もう一生ティラミスもマカロンも食べないでいいや」
千歌「…え?」
曜「みかんしか食べない」
千歌「…曜ちゃん?」
曜「…」
曜「私はずっと千歌ちゃんに憧れてたんだよ?」
曜「マカロンじゃなくて、みかんな千歌ちゃんに」
曜「ほんっと、千歌ちゃんって何も分かってないんだね」
千歌「…」
曜「ムカつく」
千歌「…」
曜「…みかんは風邪にいいんだよ」
曜「ビタミン豊富だからね!」
千歌「うん…」
千歌「…うん?」
曜「便秘、高血圧、動脈硬化の改善もする」
曜「ついでに美肌効果もある!!」
千歌「おぉ…」
曜「最近だと抗がん作用もあるって言われている!!」
曜「脂肪肝に骨粗しょう症!あと花粉症!アトピーも!!」
曜「枚挙にいとまがないよ!!」
曜「見た目の可愛さや綺麗さだけじゃない、本当に大切なものを見失なわないでよ!」
曜「私の大好きな千歌ちゃんに気付いてよ!!」
千歌「…曜ちゃん」
曜「私が好きな千歌ちゃんは…そんなみかんみたいな千歌ちゃんなんだよ…」
千歌「…」
曜「優しくて、暖かくて、自分を曲げないひたむきな千歌ちゃんが大好きだった…」
曜「私はそう思ってるし、みんなだってそう思ってるよ!」
曜「千歌ちゃんの魅力を知らないのは千歌ちゃんだけなの!!」
曜「だから、自分を嫌うのはもうやめて!!」
千歌「…」
曜「…ふぅ」
千歌「…」
曜「…」
千歌「…う」
千歌「…うぅ…ヒック…」ウルウル
曜「…えっ」
千歌「ぅう…あ”…ヒック…」
曜「ご、ごめん…言い過ぎたよ…」
千歌「…うぅん…」
千歌「…ちがうの」
千歌「あんしんしたの…」
曜「…安心?」
千歌「ずっと、ずっとなやんでた…」
千歌「このままじゃだめだって…はやくかわらなきゃって…」
曜「千歌ちゃん…」
千歌「だから…曜ちゃんのことばがうれしくて…」
千歌「あ”あ”…うぅ…ヒック……」
曜「…千歌ちゃん」
曜「…うん、そのままがいい」
千歌「曜ちゃんの隣にいてもいい?」
曜「私の隣にいて欲しい」
千歌「うぅ…あ”ぅ…」グスグス
曜「…」ギュゥッ
千歌「…」
曜「…落ち着いた?」
千歌「…うん」ゴシゴシ
曜「ああ、そんなに擦ったら腫れちゃうよ」
千歌「ん…」
一日の終わり、世界はみんなみかん色。
空も、海も、砂浜も、私も、千歌ちゃんも、夕陽の暖かなみかん色に包まれてなんだか甘酸っぱい心地。
千歌「…綺麗だね」
曜「うん…」
千歌「ずっと胸の奥につっかえてたものが取れたよ」
曜「私も、言いたいこと言えてすっきりした」
千歌「…みかん、まだある?」
曜「いっぱいあるよ」
千歌「うん…えへへ、やっぱりこれだよね」モグモグ
私たちの絆もより一層深まった。
これからのアイドル活動にも身が入ることだろう。
ただ、私には一つ言い残してることがある。
この甘酸っぱい感情を、恋心を、千歌ちゃんに伝えたかった。
千歌「はい 曜ちゃん、あーん」
曜「…あ、あーん」パクッ
千歌「えへへ、これ なんだか懐かしいねっ!」
曜「…」
千歌「うん」
私は千歌ちゃんと向かい合った。
伝えるべきか、伝えぬべきか。
悩みに悩んだことだが、今のこの溢れんばかりの想いは、千歌ちゃんに伝えなければ折り合いがつけられそうになかった。
千歌ちゃんが好きで、大好きで
我慢できなかった。
千歌「…」
曜「…言いたいことが…あるんだけど」
千歌「なに?」
曜「…」
心臓がバクバクなっている。
顔はもう真っ赤だろう。
でも夕陽が赤面を隠してくれる。
波の音が心音を掻き消してくれる。
言うんだ。
「千歌ちゃん、好きです」って…
人生初めての告白。
気張れ、渡辺曜…!!
曜「千歌てゃん”っ!!」
舌噛んだ。
口の中に血の味が広がる。
千歌ちゃんは幽霊でも見たかの様に目を白黒させていた。
そりゃそうだ、幼馴染が改まって何を言い出すのかと思えば「ちかてゃん”」という謎の単語が飛び出したのだ。
本当に何やってんだ私。
砂浜の上で私は正座した。
そしたら、戸惑いながらも千歌ちゃんも私に向き合って正座してくれた。
でも、このおかげでリラックスできた。
言うぞ。
言うぞ。
こんどこそ。
千歌「…はい」
曜「…」
曜「好き…です」
千歌「…え、うん…チカも曜ちゃんのこと好きだけど」
曜「違う、そういうんじゃなくて」
曜「…恋愛感情として、千歌ちゃんが好きなの」
千歌「…」
曜「…」
千歌「…」
千歌「えっ」
曜「恋愛感情として千歌ちゃんが好
千歌「ちょ、ちょっと待って!」///
千歌「チカも曜ちゃんも女の子だよ!?」///
千歌「そんなのアリなの!?」
曜「アリかナシかで言うと…う~ん、アリ」
千歌「あ、アリなんだ…」///
曜「千歌ちゃんは私のことどう思うの…?」
千歌「わ、わかんないよ…///」ドキドキ
千歌「で、でもそれが恋愛感情なのかって言われると…」
曜「う…」
曜「そうだよね…いきなり言われたって困るよね…」シュン
千歌「…」
千歌「…曜ちゃんはチカと恋人になりたいって思うの?」
曜「うん…」
千歌「…それで、どんなことがしたいの?」
曜「…」
曜「ハグとかチューとかいっぱいしたい」
曜「あと、たまにはエッチなこともしたい…かも」
千歌「…」///
曜「とにかく、千歌ちゃんとずっと一緒にいたい…」
曜「ずっと私を見てて欲しい…」
千歌「…」
千歌「適当に答えたくないから」
曜「…そっか」
千歌「…いつか、必ず答えるよ」
曜「…」
千歌「…」
千歌「で、でも、チカがどれくらい曜ちゃんのことが好きかは知ってもらいたい…」
曜「…うん」
千歌「だ、だからねっ、エッチなことはできないけど…」///
千歌「ありがとうって想いと、大好きって気持ちを込めて」
千歌「あーん…するね」
真っ赤な顔をして私の瞳をじっと見つめたあと、
それを私の唇押し付けてきた。
なにが起こったのか、全く分からなかったが甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。
千歌ちゃんはそのまま私の身体を強く抱きしめた。
だから私も強く抱きしめ返した。
ファーストキスは、みかんの味がした。
千歌ちゃんは唇を離すと、潤んだ瞳で私を見つめて
「愛してる」って言ってくれた。
「これ、キスだよね?」
消え入りそうな声で私が聞くと
「あーんだよ」って千歌ちゃんが恥ずかしそうに言った。
鞠莉「はぁ~、ほんとうに手のかかる後輩よ、全く」
曜「あははは…ごめんごめん」
鞠莉「ま、よかったわね 仲直り?できて」
曜「うん…ありがとう鞠莉ちゃん」
鞠莉「私も似たような経験あるから、ほっとけなかったのよ」
鞠莉「あ、今度何か奢ってよ?」
曜「じゃあ、とびっきりのオレンジジュースをご馳走しようかな」
千歌「よーうちゃんっ!」ギュッ
曜「千歌ちゃん!」
千歌「鞠莉ちゃんと何話してたの?」
鞠莉「ふふふ、なんでもないわよ」
曜「…ねぇ千歌ちゃん」
千歌「うん?」
曜「…またあーんしてよ」
千歌「ええっ、それは…」
曜「お願い!この通り!!」
千歌「う…」
千歌「仕方ないなぁ…」///
千歌「じゃあ、うちくる…?」
曜「うん!」
鞠莉「…」
千歌「またねー!」
鞠莉「…うん、ばいばい」
鞠莉「…」
鞠莉「…このオレンジジュースは…ちょっと甘過ぎかも」
告白の答えはまだもらっていない。
私と千歌ちゃんの関係はまだまだ未完だ。
ようちかはいいぞ
とてもいい雰囲気だった
ちょいちょい斜め上のギャグ入るのもすごい好み
やっぱりようちかなんだヨーソローなぁ
乙です
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