【ラブライブ!】鞠莉「年上をからかうのはよくないわよ?」曜「からかってない、本気だよ」
- 2020.05.01
- SS

曜「うん!」
鞠莉「どうしたの、急に?」
曜「ちょっと早いけど、ホワイトデーだよ!」
鞠莉「それならさっきみんなに配ってたじゃない、私も貰ったし」
曜「うーん、そうなんだけど……ほら、鞠莉ちゃんにね、とってもお世話になったなって……だからもう一つ!」
鞠莉「?」
曜「大分前だけど、千歌ちゃんとのこととか……それ以降もなにかありそうな度声をかけてくれたなーって!」
鞠莉「あらあら、義理堅いのね」
曜「そうかな?」
鞠莉「じゃあ、ありがたく貰っておくわ。中は何?」
曜「クッキー!」
曜「もっちろん!」
鞠莉「じゃあ間違いなし、ね」
曜「でも鞠莉ちゃん普段美味しいものいっぱい食べてるだろうし……ちょっと不安かも」
鞠莉「もう、そんなこと気にしない気にしない」
曜「あはは、そうだよね。ごめん」
鞠莉「こんな呼び出してまでホワイトデーを渡すなんて……あなたは特別感を出すのが好きなのねえ」
曜「そういうんじゃなくって……実際お世話になったし……もう鞠莉ちゃんたちは毎日学校に来るわけじゃないし」
鞠莉「さーては、こうやって色んな人を呼び出して……心を掴んじゃおうって魂胆ね? 肝心のちかっちには渡さないの?」
曜「千歌ちゃんはそういうのじゃないから」アハハ…
鞠莉「――そういうの?」
曜「だからね……私にとって鞠莉ちゃんは、特別だよ」
鞠莉「そ、そう……」
鞠莉「真正面からそんな真剣に言われると……流石のマリーも、照れちゃうわ」
鞠莉(特別……? それって一体……一番の友達はちかっちって、言ってるし……)
鞠莉(……いえ)
曜「じゃあ私の勝ち!」
鞠莉「なにそれ! 照れさせたら勝ちだなんて!」
曜「だって私照れてないもん」
鞠莉「むむ……はぁ、まあいいわ」
鞠莉「このクッキーは私のためにわざわざ作ってくれたのよね?」
曜「うん」
曜「お礼!? いいってそんなのっ!」
鞠莉「だめよ! もう会う機会も多くないし……できるだけ返しておいた方がいいし」
曜「……」
鞠莉「タダより高いものはないってやつね! 私も、これをタダで貰っちゃったんだから、それ相応のお返しをさせていただきます」
曜「それをいうなら……鞠莉ちゃんから貰った今までの環境が、私にとってのタダで……それに対するお返しなのに……」
鞠莉「気にしない気にしないっ! じゃあね、いいこと考えた! ――今度、そうね……ちょうどホワイトデーの日に、私の家に来れる?」
曜「へ、鞠莉ちゃんの家……」
鞠莉「そ、たまにはいいでしょ? ――ふたりきりって言うのも」ササヤキ…
曜「っ///」
鞠莉(……)
鞠莉「あ、今照れた」
曜「急に近づくからでしょ!」
鞠莉「じゃあ今のところはドローって、ことで!」
曜「いやどう入ればいいのさ……」
曜「ここまっすぐいけばいいのかな……」
曜「でも宿泊者以外は禁止って……うーん」
曜「でも一応宿泊者だし……いいや行っちゃえ!」
曜「し、しつれいしまーす……!!」
曜「っ……」
曜(ひ、ひゃー……ホテルだ、中綺麗……ここってめちゃくちゃ高いんだよね!! ど、どうしよう変なカッコじゃないかな……い、いやー……変なカッコだよね……庶民すぎるっていうか)
曜「あ、あの……小原鞠莉さんの友達の……渡辺なんですけど……」
曜「あ、はい……はい、お、お願いします」
曜(うー……案内されるのも緊張する……そいえば鞠莉ちゃんちは普通に初めて……どんな感じなんだろう……)
曜「ここですか?」
曜「はい、ありがとうございました」
曜「……ホテルの部屋、ほんとに鞠莉ちゃんの部屋……?」コンコンッ
曜「鞠莉ちゃんー……?」
ガチャッ
鞠莉「Hi、いらっしゃい曜」
曜「あ、合ってた!」
鞠莉「?」
曜「いやーなんか不安で」
鞠莉「そう? まあいいわ、とりあえず入って」
曜「お邪魔しまーす……うわ」
曜「普通にホテルじゃん……いや、普通のホテルより凄いけど……っ!!」
鞠莉「ありがと、でもここはマリーの部屋だからノープロブレムよ」
鞠莉「あ、ちょっと緊張してる?」
曜「当たり前だよ! こんな豪華なホテル来たことないもん!」
鞠莉「ふふ、緊張しなくていいのよ?」
曜「もお……」
曜「あの、本当に泊まっていいの?」
鞠莉「準備してきた?」
曜「一応お泊まりセットは持ってきたよ」
鞠莉「うんうん、素晴らしいですね」
鞠莉「じゃあ、これからご飯にしましょうか。いい時間だし」
曜「ごはん……」
鞠莉「ちょっと待っててね、確認してくる」
曜(ご飯までご馳走になるって……大丈夫、なのかな……ていうか部屋広すぎ……これだけで家じゃん……)
鞠莉「うん、うん……じゃあ出来上がり次第お願いします。はーい、失礼します」
鞠莉「もうちょっとで出来上がるから、そうしたら持ってくるって」
曜「本当にいいの? ご飯も、高いだろうし……」
鞠莉「いーのいーの、細かいことなんてどうでもいいでしょ」
曜(こまかいのかなあ……)
曜「も、もちろん! そんなこと考えてくれてたんだ、嬉しい」
曜「私はこういうの慣れてないから人目も気にしちゃうと思うし、この格好だしね……」
鞠莉「それならよかった」
曜「あはは、鞠莉ちゃんにはなんでも見透かされてる気がする」
曜「人のこと、すっごく見てるよね、鞠莉ちゃんて。すごいと思うな」
鞠莉「そ、そうかしら」
鞠莉「お互い様、じゃない?」
曜「……そう、かもね」
鞠莉「あ、来たみたい」
曜「は、ハンバーグ……」キラキラ…
鞠莉「好きって聞いてたから……作ってもらったんだけど……」
曜「あ、ありがとうっ!」
曜(うわあ……絶対高級なハンバーグだよこれ……他にもなんか、美味しそうなのがいっぱい……)ゴクッ…
曜「なんか私の方だけ量が多いような……」
鞠莉「曜は結構食べる方でしょ? 足りないと困るなって思ったから」
曜「ぅ……お恥ずかしい限りです」
鞠莉「水泳とかそういうスポーツやってるとカロリー消費が凄いらしいから……たくさん食べてね」
鞠莉「別にマナーとかも気にしなくていいし、私と曜のふたりだけ、なんだから」
曜「う、うん……」
曜(鞠莉ちゃん……私が少しでも気使わないようにしてくれてる……優し)
曜「ハンバーグから……」ゴクッッ…
曜(これだけ鉄板の上に乗ってる……冷めないように、かな?)
曜(うわ……ナイフが簡単に……あ、あれ)
曜「中が半生……」
鞠莉「静岡のソウルフード……こんな感じでしょ? 前に熱く語ってたじゃない」
曜「ま、鞠莉ちゃん……」ウルウル
曜「はむ……んっ――」
鞠莉「どう?」
曜「ぅ……う……おいじい……」ウルウル…
曜「な、なにこれ美味しいっ!! 美味しい!!」
鞠莉「ふふっ、よかったわ」
曜「私がいつも食べてるのより、とにかく美味しい! ごめん、言葉が出てこない……」
曜「そ、そっか、なんか恥ずかしいね」エヘヘ…
曜「こんな綺麗な景色見ながらご飯食べられるなんて、幸せだな……私」
鞠莉「そう?」
曜「うん……鞠莉ちゃんと一緒っていうのも」
鞠莉「な……///」
曜「今のわたし、世界で一番幸せな自信、あるかも!」
鞠莉「言い過ぎよ全く」
曜「そんなことないよ、あ、これも美味しい……うぅ……」
鞠莉「ふふっ、もう」
鞠莉「美味しそうに食べてくれるからこっちまで嬉しくなっちゃう、良かったわ二人きりで食べられて」
曜「私も!」
鞠莉「食べ終わったらデザートもあるから……ほどほどにね?」
曜「うん!」
鞠莉「先にお風呂、入っちゃって」
曜「うん、わかった」
曜「こっち、かな?」
鞠莉「そうそう」
曜「行って来ます」ピシッッ
曜「はぁ……幸せ……」
曜「まさか鞠莉ちゃんの部屋に来れるなんて、なぁ……」
曜「……言わなきゃなあ。私の気持ち」
曜「いつ言おっか……」
スルスル…
鞠莉「――えーいっ!」フニフニッッ
曜「ひゃっ」///
鞠莉「うーん、やっぱりいい感じ♡弾力もあって形もよくって……」
曜「っ、ま、鞠莉ちゃん……また投げちゃいそうになったよ」
鞠莉「ん?」フニフニ…
曜「とりあえず……触るのやめて」
鞠莉「あら残念」
曜「もうっ! どうしていきなり」
鞠莉「趣味だもん」
曜「ひどい趣味……」
鞠莉「じゃあごゆっくり!」スタスタ
曜「もう、なんなのさ……」スルスル…
ガラッ
曜「わぁ……きれー……。月が明るいから海が見える……最高」
曜「お風呂でもオーシャンビュー……贅沢」
曜「なんで乾かすのは鞠莉ちゃんなの……」
ブワァァ…
鞠莉「こっちの方が楽でしょ? マリーにお任せなさい♡」
鞠莉「知ってたけど……結構癖っ毛ね」
曜「そうなんだよね……はぁぁ、ストレートの方が良かったなあ……」
鞠莉「でもこれくらいの癖なら巻かなくても柔らかいワックスかムースだけで決まりそうだけど」ワシャワシャ
曜「そ、そうかな……全然わかんなくて」
曜「鍛えることならお任せ……っての違うしなぁ……」
曜「鞠莉ちゃんみたいに可愛かったら……そういうのも楽しいのかもしれないけど」
鞠莉「?」
鞠莉「相変わらず口がお上手なのね」
曜「いやあ本心言ってるだけだし」
鞠莉「はい、こんな感じね。じゃあ私もお風呂入ってくるから、ゆっくりしててね」
曜「はーい」
鞠莉「……」スタスタ
スルスル
鞠莉(やっぱり、そうよねえ……)
曜「――えいっ!!」フニュフニュッ
鞠莉「ひゃぁ」////
曜「わ、お、おっきい///」フニフニ
曜「す、すごいね鞠莉ちゃん、実際触ってみると///」
鞠莉「……」///
曜「め、メロンみたいっていうか……手に収まんなくて――鞠莉ちゃん?」
曜「え――ご、ごめん!?////」バッ
鞠莉「……///」
曜「あ、えと……その……なんていうか仕返しのつもり、だったんだけど……調子乗りすぎちゃったね……ごめん」
鞠莉「う、ううん……触られる方は慣れてないの!」
曜「あ、あはは……ご、ごゆっくり」
鞠莉「え、ええ」
曜(ひ、ひゃー……な、なにあの表情///可愛すぎ///)
鞠莉(さ、触られた//曜に///)ドキッ…
鞠莉(……私)ドキドキ…
鞠莉「歳上をからかうなんて感心しないわね?」
曜「いやいや、鞠莉ちゃんがやってたことだし」
鞠莉「だって誰も胸なんて触ってこないんだもの、慣れるわけないでしょ」
曜「……まあ」
鞠莉「あ、そろそろデザートタイムね♡」
曜「デザート!」ウキウキ
コンコンッ
鞠莉「来た来た」
テラス
鞠莉「コーヒーと紅茶どっちがいい?」
曜「じゃあ……コーヒーで」
曜「うぅ、やっぱり寒い……」
鞠莉「ふふ、まあまあ……厚着してるし、平気でしょ?」
曜「まあね……風もないし。うぅ、コーヒーを手に持つといい感じ……」
曜「ん……コーヒーもなんかすごい美味しい気がするよ」
鞠莉「そう? 私はコーヒーが大好きだから、それ用に作ってくれたのかも」
曜「へえ……奥が深そう」
曜「はぁぁ……あったまる」
曜「ケーキも、頂きます」
鞠莉「どうぞ♡」
曜「ティラミス……はむ、んぅぅ……美味しい……」ウットリ…
曜「お、美味しいんだもん、だって食べることは幸せだからね!」
鞠莉「素直で素晴らしいわ」
曜「えへへ……なんかこんなオシャレな感じ私に合わないような気しかしないけど……」
鞠莉「あら、私の家でも普段みたいに騒いでもいいのよ?」
曜「流石に無理っ!」
鞠莉「ふふっ」
曜「いやあホワイトデーもね、男の人みたいに……アクセサリとかあげようかなって考えたんだけど……ほら、私すぐにお金使っちゃうから……」
鞠莉「気にしないで? 特別に貰えるってだけで嬉しいんだから」
鞠莉「でも、すぐにコンビニで食べ物買っちゃう癖はなんとかしないとね?」クスッ
曜「だ、だってー……レジ横のホットスナック……美味しそうなんだもん!」
鞠莉「ふふっ」
曜「……」ズズッ
鞠莉「ええ」
鞠莉「月も明るくて大きいし……夜の海がとってもよく見える。良かった、この景色を見せられて。これがお返しってことで、いかがかしら?」
曜「……うん、最高だよ。見入っちゃう」
鞠莉「……」
鞠莉「ほんとに綺麗ね」
曜「うん……」
鞠莉「ねえ曜……私たちも、あんな風に輝けたかしら」
曜「え?」
鞠莉「最近思うのよね、私たちがしたことはあの高校のためになったのかどうか」
鞠莉「もう廃校が決まってしまった中で……私たちはどれだけの人の心の中に、残れたのかどうか」
曜「……鞠莉ちゃん」
曜「ふふっ……うん、がんばる。少なくとも私は覚えてるよ、一つ上の先輩で、すっごく輝いている人が居たって、いうことを」
鞠莉「全く……」フフッ
鞠莉「センチメンタルになるのはやめましょうか!」
鞠莉「スクールアイドルも大切だけど、華の高校生よ? 恋愛も楽しんでみたら?」
曜「わ、私はそういうのは……」
曜「じゃあ質問! そういう鞠莉ちゃんこそ、恋人居たことあるんですか!」
鞠莉「ぅ……そ、そう言われると」///
曜「ほらー、お互い様!」
鞠莉「年上の威厳もあったものじゃないわね……」
鞠莉「でも、曜はモテるでしょ?」
曜「え?」
鞠莉「ちかっちから聞いたんだからね、女の子から告白されてたことあるって」
曜「あ、あれは……」
鞠莉「――やっぱり男の子がいいわよね?」
鞠莉「ええ」
曜「正直……女の子でも、私はいいんだ」
鞠莉「っ……へえ」
曜「好きになったら、関係、ないかなっていう」
鞠莉「……」
曜「だから、嬉しかったよそう言われて」
鞠莉「じゃあなんで?」
曜「忙しいのもあるし……それに」
鞠莉「曜……あなた、今好きな人がいる、違う?」
曜「っ……///」
曜「やっぱり、鞠莉ちゃんには隠せない、ね」
鞠莉「そうね、あなたが隠すの下手っていうのも、あるけど」
曜「……」
鞠莉(……だめ、だめよ……わたし)
鞠莉「私が知ってる人でしょ」
曜「……て、いうか」
鞠莉「?」
曜「私が好きな人は――鞠莉ちゃんだよ」
鞠莉「ち、ちち、ちょっと待って」
曜「恋愛的な意味で、ね」ジッ…///
鞠莉「ぅ、あ、あの……さっきも言った、けど……」
鞠莉「年上をからかうのはよくないわよ?」
曜「からかってない、本気だよ」ジッッ
鞠莉「~~~////」カァァアアアアッッッ
鞠莉「だ、だからっ」
曜「……迷惑だってこと、わかってる。でもでも……言わせてっ」
鞠莉「……うん」
曜「鞠莉ちゃんのこと好きって思ったの最近なんだ……結構前から気になっては、いたんだけど」
曜「卒業、しちゃうでしょ? 三年生としばらく会えなくなるの寂しいなーなんて考えてたらさ、鞠莉ちゃんのこと考えた時だけ……なんか、無性に苦しくなって」
曜「ああ、好きだなって思った」
鞠莉「……///」
鞠莉「曜……」
曜「だから、言うね……私は鞠莉ちゃんのことが、好きだよ。女の子同士だから、変だよね……気持ち悪い、よね。でも、でもね」
曜「――あなたと恋人になりたい、私と付き合って、ください」ジッ/////
鞠莉「……///」ドキッ…ドキドキッ…
鞠莉(だめ、だめ、よ……)
鞠莉「……私、もう三月の最後には海外に行くの。わかってる?」
曜「……うん」
鞠莉「全然会えないわよ、電話しかできない」
曜「うん」
鞠莉「それでもいいの?」
曜「……当たり前だよ」
鞠莉「……だめよ、だめに、決まってる」
曜「……そう、だよね」
鞠莉(だめなのっ、だめなのっ……)
鞠莉「一日考え、させて……?」
曜「え」
鞠莉「お願いっ」
曜(どういうこと? 断るんじゃなくて? 意味、わかんない……)
曜「わかった……」
鞠莉「ごめんね……」
鞠莉「……」
曜「……」
曜「あ、あはは……ごめんね、泊まるのにいきなり、こんなこと言っちゃって……」
鞠莉「ううん、曜の気持ちが知れて、嬉しいわ」
鞠莉「これだけは言っておくけど、気持ち悪いとか思ってない、本当に本当に……嬉しいわ」ナデナデ
曜「う、うん……///」
鞠莉「じゃ、この話は一旦終わり、いいわね?」
曜「うん……」
曜「ベッド一つしかないけど……」
鞠莉「私の部屋用だしね。じゃ、一緒に眠るに決まってるじゃなーい!」
曜「ほ、本気!?」
鞠莉「当たり前よ?」
鞠莉「さあさあいらっしゃい」
曜「うぅ……」
鞠莉「……ごめんね、一個しかなくて」
鞠莉「い、いやだったら……私がソファでも……」
曜「ううん、そんなことないよ!! ご、ごめん!!」
曜(ぁぁ、最悪っ、勝手に告白したのは私なのに気使わせた……)
曜(返事が貰えないっていうのは私が勝手に告白したから、タイミングも考えなかった私のせい……)
曜(あぁ、バカだなぁ……私は)
曜「失礼しまーす……わ、ふかふか」
鞠莉「……」
曜「あはは……なんか鞠莉ちゃんと一緒のベッドなんて、新鮮……」
曜(嬉しいけど、複雑)
曜「ちょっと話したいことあるんだけど、いいかな?」
鞠莉「うん?」
曜「私さ……千歌ちゃんがね、私に弱いところ見せない理由、わかった気がする、んだよね」
曜「千歌ちゃんはさ……梨子ちゃんが転校してくる前にあってて……その時に色々自分の中のことを言ってたんだって。よくあるよね、見知った人よりも知らない人、二度と会わない人の方が相談しやすいっていうの」
鞠莉「そうね……」
曜「それに……私の方に原因があったんだなって。私は千歌ちゃんに、そういう弱いところとか、全然見せたことない。自分で言うのもあれだけど……私は強い人って、見えてたんじゃないかな」
曜「そりゃそうだよね、いくら仲良くたって、近くにいたって……千歌ちゃんはどこか心の奥深くで私に親近感は感じられてない、んじゃないかな……」
曜「私は千歌ちゃんの前では笑ってたい、ずっとずっとそう思ってる。泣いちゃったことも、あるけど……千歌ちゃんもきっと……そうなんじゃないかなあって」
曜「だって、さ……私も弱い部分を見せる人は鞠莉ちゃんで、おんなじように、きっと千歌ちゃんはそれが梨子ちゃんなんだと思う。相性って、あると思うし」
曜「でもね、例え私が千歌ちゃんと相性が悪いとしても……側にいたいって、思うの」
曜「そう納得出来たのは、鞠莉ちゃんのおかげ、だよ」
鞠莉「……心の内を全部言い合えるのが親友、だなんて決め付けは私も好きじゃないわ。人によって関係性は色々だもの。周りがどうこうじゃない、曜がちかっちのことを親友だと思い続ける限り……それはそうなんだと思う」
曜「うん……」
鞠莉「でーも、憶測ばっかり。やっぱりもうちょっとちゃんと話し合った方がいい、かもね?」
曜「うぅ……」
鞠莉「ちゃんと大切にするのよー?」
曜「わかってます」
鞠莉「あなたは抱え込みすぎるんだから、爆発させないように、ね?」
鞠莉「私としては……ちかっちにまで完全に曜の弱いところを見せ始めたら頼られなくなるから、少し寂しいけど」クスッ…
曜「本当?」
曜「迷惑じゃないなら、良かった……」
鞠莉「もう、普段は雑なのにこういう時は細かいわね」
曜「あはは……」
鞠莉「そろそろ寝ましょうか」
曜「うん、あ……寝息うるさかったらごめん……」
鞠莉「あはは、細かい細かい」
鞠莉「じゃ、おやすみ……」
曜「うん、おやすみ……」
カーテンの隙間から差し込む朝の光を視界の端に捉える。
不思議なもので、それだけで私は重たいはずの瞼がすっと開いて、つられて意識が見る見る覚醒していくのもわかった。
上体を起こして隣で眠っている曜に視線を向けると、静かに深く寝息を立てながら横向きに眠っていた。最初は背中を向けられてた、んだけど。
この部屋で誰かと一緒に眠るっていうのは最近はほとんどなかったし、少しだけ果南やダイヤが来た時のことを思い出す。
あの時は、昨日みたいな真剣な話はしなかったと思う。
曜が未だに眠っている、ということは私が想像している通りのいつもの起床時間ではないってことよね。結構私は遅くまで眠っている方だし、曜は見るからに朝型ですって感じだしね。
こんなにスッと起きられたのは自分でも少し驚いていた。事実、昨日はあんまり眠れていない。眠ろうと思っても曜からの告白を思い出しては……言葉にならないような、ぐちゃぐちゃに掻き回された感情が私を睡眠へ向かうのを許さなかった。
朝起きた直後、普段ならばすぐにシャワーを浴びて眠っている時に掻いた汗を流して綺麗さっぱり、一日が始まるんだけど……今日はとてもじゃないけれどそんな気分になれなかった。
冬、寝汗は少ないはずの季節だけれど、今日の私は嘘のように、びっしょりとパジャマが濡れてしまっていた。
曜とのこと、考えれば考えるほど、苦しくなって汗が止まらなかった。
曜の言う通り、私は多分……人が何を考えているのかなんとなく読むのが上手いんだと思う。普段はそんな中でハイテンションに楽しく周りに迷惑をかけてるわけなんだけど……。
そう、だから曜の様子が近頃おかしいなって言うのは気がついていた。そして私と話す時だけ声が高くなったり嬉しそうな顔をするなっていう違和感にももちろん気がついていたわ。
様子がおかしくなりはじめたのは確かに緩やかだったと思う。でもその異変は、確実に強くなって……曜は私のことが好きなんだって、確信に変わっていった。
確信を持った瞬間には、嬉しい反面……だめだよって気持ちの方が強くなっていた。人の気持ちに気がつくっていうのは、その気持ちにもいち早く影響されやすいってこと。私は我が道を行くってタイプだけれど……燃え盛るような曜の瞳に、当てられてしまったのだろう。
――私は曜のことが好きになっていた。
曜が私のことを好きなのをわかっていながら、今まで以上のスキンシップをとって、ましてや部屋に呼んで……告白されるんじゃないかって言うのも、なんとなくわかっていた。
鞠莉「ごめん、ね……」
静かに寝息を立てる彼女の頰には、涙が伝った跡。おそらく、不安になって……夜泣きでもしてしまったのだろう。曜は普段、かなり大雑把な方だけど……こういう繊細な問題に関しては、人一倍敏感なのね。
私は紛れもなく、曜のことを傷つけた。
どれだけの勇気を振り絞ったのだろう、女の子同士、そして、私は外国へ行ってしまう、障害しかない。それなのに、曜は……しっかりと言葉にして見せた。
断らなきゃいけないってわかってるのに、人の心を弄んで部屋に呼んで……ドキドキしてた私なんか……本当に、最低……っ。告白した相手、しかも保留されてるのに一緒のベッドで眠るだなんて……ほんとに気を使ったに、違いない……。
曜「ん……」
鞠莉「あ」
曜「うーん……おはよ、鞠莉ちゃん」
鞠莉「ハロー」
ああ……この時が来てしまった。
私は今から断らなければいけない。きちんと、曜の言葉に、答えなくては、いけない。
鞠莉「曜……いきなりで悪いんだけど……」
曜「ん?」
鞠莉「返事、するわね」
きゅぅっと、唇をお互いが噛みしめる。一瞬にして空気が張り詰めたその中心で……曜は私を真っ直ぐ見つめ……そこには不安の炎は燃えていない。何かを悟りきったような、そんな目だった。
諦めているんだろう、そう、それなら……話は早い。
鞠莉「……えと、えと」
言葉が、つまる。喉の奥にへばりついたように張り付く、ごめんなさいという一言。これを言えば終わる。そう、全部終わる。
――私は、曜と恋人になることは……出来なくなる。
だって、好きだもん。今日みたいに、ふたりきりになってお話ししてご飯食べて……また二人で一緒のベッドで……今度は二人で向かい合って眠りたい。
今日の心の高鳴りを、どこへやればいいの? なんで、告白されてるのに……好きなのに、断らなきゃいけないの? わかってる……っ、私で縛り付けるのが嫌なんだって。曜は曜で、私に縛られないで、生きて欲しい、んだもの。
でもやっぱり――曜と、恋人になりたい、よ。
鞠莉「ひっ、ぐ……うぅ……」
曜「え、え!?」
言葉は喉でせき止められ、出てきたのは言葉にならない嗚咽と、頰を勢いよく伝っていく涙だった。
私より曜の方が辛いはずなのに、こうやって目の前で涙を流してしまう自分のことも……どんどん嫌いになる。
鞠莉「ひっぐ……ぅぅ、ごめ……なさ……わたし、わたし……っ」
ぐしゃぐしゃになってしまっている顔を手で拭いながら、言葉にならない声を上げ続ける。そう、一言が、最後の一言が出ていかない。
そうして――。
曜「落ち着いて」
ふっと、曜のくせがかった毛先が頰を掠める。腕を背中に回されて、少し引き寄せられる。曜の暖かな腕の中に包み込まれ、背中をさすられる。すると……喉に詰まっていた何かが、解放された。そうして私は……今までで詰まっていた言葉を全て、曜にぶつけてしまっていた。だめだと告げる脳のリミッターは、優しく解きほぐされてしまった。
鞠莉「ごめんね……」
曜「ううん、鞠莉ちゃんの気持ち知れて……嬉しい」
鞠莉「うん……あー……みっともない。ごめんね、ほんとに」
曜「そんなことないよ」ポンポン
鞠莉「……///」
曜「ねえ……本当に私と付き合ってくれる、の?」
鞠莉「……私は付き合いたい。でも、本当にいいの? 障害しかない、わよ?」
鞠莉「これから海外に行くし、全然会えなくなる。曜は私のことなんて考えないで……もっと幸せに生きる道があるはず……本当にそれでも、私と付き合ってくれる、の?」
曜「そんなの関係ないよ! 私は鞠莉ちゃんのことが好きなのっ、それ以外……考えてないよ」
鞠莉「曜……」
曜「鞠莉ちゃんは優しいね……いつもいつも、私のこと考えてくれる」
鞠莉「そんなことないっ、今回だって私……曜を傷つけたっ……」
曜「ううん、大丈夫だよ……もっと鞠莉ちゃんと一緒に居たい。私と付き合って?」ギュッ
鞠莉「ぅ……うぅ」////ドキドキ
鞠莉「……いい、のね? 私、面倒かもよ」
鞠莉「時差あるのに、すぐ電話したいって駄々こねるかも」
曜「気がすむまでする」
鞠莉「帰ってきたら毎日会おって言うかも」
曜「多分こっちから会いに行く」
鞠莉「……っ///」キュンッ
鞠莉「じ、じゃあ……お願い、します」
曜「ほんと!?」
鞠莉「え、ええ」
曜「やっ、たー……!!!」
曜「ぁぁ……嬉しい。ほんとにほんと!?」
鞠莉「……///」コクッ…
曜「じゃあ私達今から恋人だよね!? ど、どうしよっ!!」
鞠莉「どうしよって……今まで通りでいいんじゃないかしら」
曜「そうなのかな」
鞠莉「でも、これなら二人きりで会うのに遠慮とか理由とか要らない、わよね?」
鞠莉「早速だけど……向こうに行くまではできるだけ二人で会って過ごしたい……どう?」
曜「……もちろん」
曜「デートもしようね」
鞠莉「どこ行こっか」
曜「鞠莉ちゃんとならどこでもいいけど……」
鞠莉「そ、それは禁止よ」//
曜「そうだよねあはは……」
曜「普通だけど買い物したり公園とか行ってお弁当食べたり……そういうのしたい」
鞠莉「じゃあそれにしましょ! えーと、学校ある日でも泊まっていい? もうすぐ曜も春休みだけど、できるだけ一緒にいたいし」
曜「もちろん!」
鞠莉「ふふ……とんだホワイトデーの贈り物、だったわ全く」
曜「受け取ってくれて、感謝であります」ビシッ
鞠莉「ふふ」
鞠莉「じゃあモーニングご飯、食べましょうか」
千歌「えー!! 付き合えたの!? おめでとっ!」
曜「う、うん……良かった」
曜「あ、あんまり言いふらさないでね?」
千歌「Aqoursのみんなには?」
曜「そこだけにして……」
千歌「わかったよ。えへへ、本当に良かった」
千歌「でもでもー……鞠莉ちゃんのことばかりじゃなくて千歌のことも構ってね?」
曜「構うって……いつも通りにするよ、当たり前だよ」
千歌「それなら良かった! 曜ちゃんが鞠莉ちゃんとばかり居たらちょっと、寂しいもんっ」
千歌「でもさ――鞠莉ちゃんは海外に言っちゃう……んだよね?」
曜「うん……」
千歌「そっか……もし、辛くなったら言ってね? 千歌が話聞けることなら、喜んで聞くから。たまには千歌にそういうことも、話してね?」
曜「っ……」
曜「千歌ちゃん……ありがとう……」ギュッ
もし色々あって次に投下来るまでにスレ無くなったりしてたらまた建てて一気投下します
そう
ふたなりこそ至高
公園
曜「宣言通り、お弁当を作ってきました!」
鞠莉「グレイトっ! 嬉しいわ」
鞠莉「どんななのかしら……」
鞠莉「おー……」
曜「女の子っぽい感じじゃないと思うんだ、ちょっと男の人っぽいお弁当かもしれないけど……あ、味なら結構自信ある!」
鞠莉「これだけ見た目が美味しそうなんだもの、心配ないわ。私が料理作ると、なんかダメみたいだし?」
曜「あ、あれはね……」
鞠莉「はい、あーん」
曜「うぇぇ……恥ずかしいって」
鞠莉「気にしちゃいけません、恋人になって三日目……初デート。ステップアップも重要ですよ?」
曜「う、うーん。ていうか、私が作ったお弁当なのに私があーんされるの!?」
鞠莉「いいからいいから♡」
曜「あーんして、はいあーん」
鞠莉「もう、照れ屋さんなんだから♡」
鞠莉「あーん……あむっ」
鞠莉「んー!!♡♡」
曜「ど、どう?」
鞠莉「とってもデリシャスよ、ありがとう」
曜「えへへ、良かった♡鞠莉ちゃんのために頑張ったんだ」
鞠莉「んむ、美味しい♡」
曜「……」ジッ
鞠莉「どうかした?」
曜「い、いや……言い忘れてたんだけどさ……今日の鞠莉ちゃん……なんか、普段より可愛い、大人っぽい」
鞠莉「///」
曜「服も可愛いし……お化粧も……」
曜「そ、そう、だよね//」
曜「私は全然気使ってないけど……もうちよっと頑張る……」
鞠莉「今のままでも、全然平気よ?」
曜「そう、かな? 鞠莉ちゃんと少しでも釣り合いたい、な」
鞠莉「釣り合うとか釣り合わないとか……そういうのじゃないと思う。私はあなたのことが好きで、あなたは私のことが好き。それでいいでしょ?」
曜「……そう、だね」
鞠莉「はい、あーん」
曜「うぇぇ……あ、あーん……」
鞠莉「はー楽しかった♡」
曜「ね!」
スタスタ
鞠莉「曜の家はここから近いの?」
曜「うん、全然歩いていける距離だよ」
鞠莉「……日もだんだん長くなってきたわね。真冬ならもう真っ暗なのに」
曜「そうだね……」
スタスタ
鞠莉「曜?」
ギュッ…
鞠莉「///」
曜「家に行くまで……手、繋いでて、いい? この辺りは人目もないから、女の子同士でも平気だよ」
スタスタ…
鞠莉(ああもう……ドキドキしすぎて……手繋ぐのも計算に入れてこのルートにしたのね? 最初からそのつもりで。周りに人もいないから、手繋いでても、大丈夫……)
鞠莉「よ、曜?」
曜「ん?」
鞠莉「ドキドキして手汗とかかいたら……ごめんね」
曜「なに言ってるの、私の方がドキドキしてるって! 自信、あるよ?」
鞠莉「ふ、ふぅん////」
鞠莉(絶対絶対……私、顔赤くなってる。それなのに曜はこんなにさらっと……もう……///)キュンキュンッ…
曜(ぅぅ、鞠莉ちゃん可愛い……)////
曜(手繋いじゃってるヨーソロー!!!///)
鞠莉(……嬉しい)
曜「ほんと、ごめんね部屋狭くって」
鞠莉「ううん」
曜「ベッドも小さいけど……いいかな」
鞠莉「こっちの方がくっついて眠れるでしょ?」
曜「そ、そうだね!」
曜「ふぁ……もう眠いよ」
鞠莉「普段どのくらいに寝てるの?」
曜「9時にはもう……」
鞠莉「ちょうどそのくらいだしね」
曜「ね、寝ないからまだ! 鞠莉ちゃんとお話してたい」
鞠莉「無理しないの、今日歩き回って疲れたでしょ?」
曜「それは鞠莉ちゃんだって」
曜「……」
鞠莉「ありがとね、今日は楽しかったわ」
曜「うん……///」
曜「ね、ねえ……」
鞠莉「うん?」
曜「……」ギュッ…///
鞠莉「っ////」
曜「ま、鞠莉ちゃんはハグとか慣れてる? わ、私は……全然」
鞠莉「そ、そうね……えっと、恋人とするのは初めてだし……」
鞠莉(すっごく、ドキドキする……)
曜「そっか、そうだよね。しばらく……こうしてていい?」
鞠莉「ええ、もちろん」
曜「……」ギュッスリスリ…
鞠莉「甘えんぼさんね、私の恋人は」クス…ナデナデ
曜「だ、だって……だめ、かな?」
鞠莉「っ♡」キュンッ…
鞠莉「ううん、私もこうしてるの……好きみたいだから」ナデナデ…
曜「もっと近くに来ないと、寒いよ?」
鞠莉「確かに」
曜「ほらほら」グイッ
鞠莉「///」
曜「腕組んで寝よ? ね?」
鞠莉「き、今日だけで随分……す、ステップアップするのね?」
曜「そうかな? 鞠莉ちゃんがステップアップが大切って」
鞠莉「ま、まあいいけど……」///
鞠莉「あったかい……」
曜「うん……」ギュッ
曜「……好きだよ」ジッ…
鞠莉「っ/////」カァァアアアアッッ
鞠莉「わ、わたし、も……」///
鞠莉(ああっ、暗くて良かった……きっと今の私、すごい顔してる、し……)
曜「……良かった」
曜「おやすみ鞠莉ちゃん……」
鞠莉「ええ……おやすみ」
鞠莉(幸せ……)
駅
曜「新幹線……来るね」
鞠莉「そうね」
曜「みんなに気を使わせちゃった、ね? あはは、みんなも鞠莉ちゃんとまだ話してたいと思うのに」
鞠莉「あの子たち、優しいから」
曜「そう、だよね……」
鞠莉「じゃあ曜……しばらくの間、お別れね」
曜「……うん」
曜「頑張ってね! 私も頑張るから!」ニコッ…
鞠莉「ええ……浮気しないでね?」クス
曜「し、しないよー!」
鞠莉「ジャパニーズジョーク、よ」
鞠莉「とりあえず向こうに着いたら一回連絡するから」
曜「うん」
鞠莉「じゃあ……」クルッッ
スタスタ…
曜「――鞠莉ちゃんっ!!!」ダッッ
ギュッ
鞠莉「っ///」
曜「……」ジッ
鞠莉「……よ、曜?」
曜「――ちゅっ」
鞠莉「っ!?」
曜「えへへ……キス、してなかったなって」
鞠莉「~~////」
鞠莉「も、もうっあなたは人のことをからかいすぎよっ」カァァアアアア/////
鞠莉(人から見えない死角……最初から、このつもりだったのね)クスッ
曜「ふふ」ニコッ
曜「ほら行った行ったー!!」グイックィッ
鞠莉「……ち、ちょっとー!」
千歌「……大丈夫?」
曜「うん、へーきだよ」
千歌「そっか……」
曜「出発前の鞠莉ちゃんに泣きつくわけには行かないからね」アハハ…
曜「まあ電話もあるしね! 向こうで頑張ってくれると、いいな」
千歌「そうだね……」
曜「よし……私たちも頑張ろうね、三年生達が残してくれた分まで!!」
千歌「うんっ!!!」
夏
あの時の私は、少し、いや想像以上に子供だったのかななんて、めくられたカレンダーを見ては思う。鞠莉ちゃんが海外の大学へ行ってから、丸々四ヶ月が経っていた。
最初はゴールデンウィークの辺りには帰れるかもしれない、と言われて……その日をとにかく待った。毎日毎日カレンダーを見ては、遠いなあってため息を吐きつけながら、日々を過ごしていた。
しかし、ゴールデンウィークは忙して帰れない、と電話で聞かされると……途端に目の前が暗くなってしまったような錯覚に陥った。
その辺りから、鞠莉ちゃんの恋人になるということがどういうことなのかわかってきた気がする。私がこういう気持ちになるってことを、鞠莉ちゃんはわかっていたんだね。
――そして夏。
予定通り飛行機で出発したとの連絡があって、きゅぅっと胸が締め付けられる様だった。会えるんだ、やっと、会えるんだ。
愛おしい恋人、好きで好きでたまらない人。
会えない期間だなんて、暦上では短いし電話もあるんだから余裕で耐えられるよ……と電話で鞠莉ちゃんに宣言した言葉は、いつの日からか、簡単に崩れてしまっている。
実感が湧いてなかったんだろうなって、第一に考える。それはそうだ、遠距離恋愛だなんて、する人の方が少ないだろうから。ましてや相手は海外……私に追いかける経済力はないし、相手も大学以外のことでもとにかく忙しい様子だったから。
携帯電話を開くのは本日何度目か、現在時刻を確認する。これだけ色々と考えたというのに、一向に時間が進んでくれない。あと少し、あと少しで鞠莉ちゃんがここ淡島にヘリコプターでやってくる。
とにかくそわそわしちゃって早めに淡島に上陸して、軽く景色を見ながら外周を歩き回っていた。果南ちゃんと遭遇して、ちょっとからかわれたりもした……みんなにまた気を使わせてしまった。
一番に鞠莉ちゃんに会うのは私にするってみんなが言って、Aqoursのみんなで集まるのは明日の予定になっている。なんか……とてつもなく悪い気がするけれど、一回だけ謝って私はすぐにその提案を受け入れていた。
会いたい、とにかく早くふたりきりに、なりたかった。今日もお泊まりセットを持参して、また鞠莉ちゃんの家に泊まることになっている。
真夏の日光は容赦なく私のことを照りつけている。汗でべちゃべちゃになった胸元をパタパタと仰ぎながら、視線を広がり切った蒼い空へと向ける。鞠莉ちゃんのヘリコプターを待ち始めて十分余り、流石に何もしないで立ちっぱなしは身体にこたえる。
淡島に自生している木の陰に腰を下ろして、ペットボトルの水を身体に流し込んだ。ぬるくて、美味しくない。
早く淡島に入りすぎたせいか、汗くさい……。これじゃあ鞠莉ちゃんにハグ出来ない。
曜「まだかな……」
予定時間までは少し時間がある。どこへともなく呟いた言葉は、あっという間に蝉の大合唱の中に蕩けて消えた。
――そして、風が吹いた。
それは自然が巻き起こす普通の風だっただろう。でも続けて、木が揺れる音、蝉の大合唱、それらを瞬間に搔き消す、辺りに響き渡る人工的な轟音。
大きく目を開いて瞬きも何度もして、現実だと理解する。
――鞠莉ちゃんが、帰ってきた。
その時が来ることを誰よりも願っている自信があったのに、その時が来てしまうと誰よりも緊張してしまう自信もあった。現に一言目はなんて言おうか、考えていなかったことも直前になって思い出す。
でも。
曜「ヨーソロー!!!」
そんな思考が回りきる前に、身体が動いていた。
鞠莉「んー、本当に久しぶり!」
曜「あーもう、ほんとだね!」
鞠莉「くす、汗びっしょりだったわね?」
曜「シャワーの後のクーラー効いた部屋……最高」
鞠莉「もー怠け者みたいなこと言わない」
曜「えへへ」
曜「日が沈んできたねえ」
鞠莉「もうちょっとでご飯よ?」
曜「うう、やっぱり申し訳ない気が」
鞠莉「やだって言っても食べさせるわよ? あんなに美味しいって喜んでくれたんだもの」クス
テラス
曜「はぁぁ……潮風が気持ちいい」
鞠莉「夏だから涼しくていいわね」
曜「クーラーもいいけど、自然な風も気持ちいいね」
曜「こうしてると……告白した時のこと思い出すな」
曜「あの時すっごく不安で……でも、ちゃんと言えたからこうして鞠莉ちゃんとふたりきりになれてるわけで」
曜「やっぱり鞠莉ちゃんには……本当に感謝してる」
鞠莉「……私もよ」
鞠莉「一歩を踏み出してくれたあなたのおかげ。本当にありがとう」
曜「ふふっ」
ベッド
鞠莉「電気消すわねー」
曜「はーい」
曜「鞠莉ちゃん、ここ座って?」
鞠莉「いいけど……」
曜「ん……」ギュッ
鞠莉「なるほど♡甘えんぼさんなのは変わらず、ね?」
曜「だって……鞠莉ちゃんが目の前にいる、んだもん」ギュッ
鞠莉「曜……?」
曜「……寂しかった」
鞠莉「うん……ごめんね」
曜「ぐす……」
鞠莉「……やっぱり寂しい思い、させてたわよね」ギュッ
曜「電話してもやっぱり、寂しくて……ずっと会いたくて……」
鞠莉「うん……私もよ」
鞠莉「ごめんね、ごめんね……」
曜「違うの、謝らないで……こんなワガママ言う私が、悪いの……」
曜「だって、こうなるのがわかってて鞠莉ちゃんと付き合ったんだもん」
曜「鞠莉ちゃん……」ジッ…
鞠莉「……うん」スッ
曜「んっ……」チュッ…
曜「えへへ……今のでわかったの?」
鞠莉「当たり前です、曜がキスしたいって時……じーっと私の目見てくるの、前回で学習したもの」
曜「流石鞠莉ちゃん」
曜「あの、もう一回……いい?」ギュッ
鞠莉「……ええ」///キュンッ
曜「んっ……♡」
鞠莉「んっ……♡」
曜「んっ……ちゅぅ」
鞠莉「!?」
鞠莉(き、キス長くない!? し、舌が!? しかも、腰に手、回されて逃げられ、ない)ビクッ
鞠莉「よ、曜……?」
曜「鞠莉ちゃん……好き」ギュッ
鞠莉「私も、好き……」
鞠莉(曜、普通じゃない……これは)
曜「っ♡////」ガバッッ
鞠莉「ひゃっ♡」
鞠莉「曜……あの」
曜「こんな気持ちになってるの、私、だけなのかな? 鞠莉ちゃんと電話すればするたび好きになって苦しくなって……好きになって。こうやって、キスしたり抱き合ったり――その先までしたいって思うの……変、なのかな」
鞠莉「っ///」
鞠莉「……変じゃないわ、好きな人と……もっと深い関係になりたいっていうのは自然なことよ」
曜「ごく……」
鞠莉「――あなたとなら、私も嬉しいわ」ドキドキッ…
曜「んっ……ちゅっ♡はっ♡んっ……♡」
鞠莉「ちゅ……んっ♡んっぅ♡よ、う♡」ビクッッ
曜「まり、ちゃ……♡すき……♡んっぅ♡」
曜「ぷは……♡」
鞠莉「んっ……♡」トロ-ンッ…///
曜「っ/////」ドキッッ♡
鞠莉「――は、初めてだから……」
曜「うん……優しく、する……」キュンキュンッ///
そこから先は……私でもよく覚えていない。まるで夢の中にいたかのようなふわふわとした感覚だけが私の中を満たしていた。
ギラギラと光が灯る私たちの瞳は、暗闇の中でも確かにお互いを捉えていた。乱雑に脱ぎ捨てられた寝着。ちらりと視界の端に捉えるだけで、自分達が貪るように行なっている行為に、途端に生々しさが増してくる。
鞠莉ちゃんは普段見せる余裕のある表情はほとんど見られなくて、私の手の中で、小さな嬌声を上げ続けた。だめ、やめて、と。それが本当の意味でのやめてでないことはすぐにわかって、その度私は彼女を強く抱きしめた。
涙なのか、唾液なのか、汗なのか、それともそれ以外のものなのか……辺りは恥ずかしいくらいにぐしゃぐしゃになっていた。それに気がついた時には、鞠莉ちゃんが私の頭を撫でている。すでにギラギラした光が消え、優しい瞳に戻った鞠莉ちゃんのは、まるで吸い込まれるようで、虚ろに見つめていることしか出来なかった。すると不意に霞めるようなキスを、額に落とされた。
そう、私が彼女に身体を委ね初めてからは本格的に、何も覚えていない。
体力に自信はある方だけれど、激しく上下する胸板に、切れる息が、行為の最中のことを物語っている。
絶頂の余波の中、視界が揺らぐ。まどろむ。
ドロドロに溶け合って、まざり合った心。どこまでも深いところまで、沈んだ気がする。
夢見心地のまま、私は鞠莉ちゃんを抱き寄せた。
私の腕の中で鞠莉ちゃんが優しく微笑んだのだけは、はっきりとわかったんだ。
鞠莉「ハロー」ズズズッ
曜「ん、んぅ……ん、おはよ……」ゴシゴシ
鞠莉「コーヒー飲む?」
曜「いやー……いいかな」
曜「ふぁぁ……」
鞠莉「眠そうね?」
曜「うん」
鞠莉「昨日あんなに頑張ってくれたんだもの、当然かしら♡」
曜「な////」
曜「ゆ、夢じゃないんだよね」///
鞠莉「夢が良かったの?」
曜「ち、ちがう違うっ!! 幸せすぎたっていうか……あの」ボソボソ
鞠莉「あなたって不思議ね? 昨日はあんなに堂々と甘い言葉ばっかり言ってきたのに」
曜「あ、あれは……えと」
曜「私からしたら鞠莉ちゃんの方が不思議だよ……。き、昨日あんなことしたのに、そんな余裕な感じで///」
曜(昨日の鞠莉ちゃん……全然余裕なさそうで、可愛かったな……余裕ないのは私もだったろうけど……)
鞠莉「昨日は誰かさんに、あんなに乱されたんだから……年上として、少しくらい余裕持ちたいって気持ちをちょーっとは汲んでくれてもいいんじゃない?」クスッ
曜「そ、そうだよねごめんっ!! あの、グダグダだった、よね。ごめんっ」
鞠莉「お互い初めてだったしね、仕方ない仕方ない」
鞠莉「でも――こんな瞬間がずっと続けばいいのにって、曜の腕の中で思ってた」
鞠莉「昨日はトラみたいに大胆だったのに、今は借りてきた子猫さんね」クスッ
曜「もうっ仕方ないでしょー!」///
鞠莉「ふふっ、そうね。さあさあ、今日はみんなと会うんだから、張り切って準備しないと、ね?」
スルスルッ…プルンッ
曜「っ///」
曜(鞠莉ちゃんの胸、おっき……///昨日、本当にあれを……///)
曜(ああもうっ、忘れなきゃっ。忘れちゃだめだけど!!)ブンブンッ
鞠莉「くすくす……」
鞠莉(本当に不思議な子ね)
曜「あ、シーツ……ごめん」
鞠莉「うーん……次からは考えなきゃね」
曜「つ、つぎ……///」
曜(次も、ある……?)///
鞠莉「?」
曜「なんでも!!」ブンブンッッ
千歌「曜ちゃん、なんか」ジッ
曜「え?」
千歌「全体的に艶々してる気がするっ!」
鞠莉「っ」ビクッ
千歌「なんかね、お水を与えられたみたい!」
曜「そ、そうかな!?」
千歌「んー……」チラッ
千歌「わかった、鞠――」
果南「こら千歌、変な詮索はしない」
千歌「んぅ……」
曜「ほ……」
鞠莉「ちかっちは、曜のことをよく見てるのね?」
千歌「もちろんだよ! 鞠莉ちゃんが戻ってきたからだねきっと!」
鞠莉「そうだと嬉しいわね」クスクスッ
九月
素直に言って欲しい。
鞠莉ちゃんの一言。私と鞠莉ちゃんが始まった言葉だ。それを後ろから優しく抱きしめられながら言われた次の瞬間には、あっけなく私の我慢は吹き飛んだ。
いつかの鞠莉ちゃんみたいに、ぐしゃぐしゃになって訳も分からなくなって、言葉すら出てこない。溢れる想いだけが涙となって、鞠莉ちゃんを縛り付ける。
素直になれば、確実に鞠莉ちゃんは苦しむ。なのに、それなのに。
鞠莉「ほーら、落ち着きなさい」ポンポン…
曜「うん……」
鞠莉「お願い。今思っていること、言って欲しいの」
曜「……」
とても、シンプルだ。
曜「――また離れ離れになるなんて、やだ、よ……」
唇も声も、震える。それでも私は……なんとかその言葉を外に吐き出した。
鞠莉「っ……」
曜「鞠莉ちゃんと一緒に、恋人として、まともにこんな長い時間過ごしたの初めてだったからっ! すっごく、すっごく幸せでっ、楽しくて……」
デートもたくさんした、遠出だってした、美味しいご飯もたくさん食べた、お金はほとんど鞠莉ちゃんとのデートで使い切った、手も繋いだハグもいっぱいした、身体だって何度も何度も重ね合った。女の子同士だから直接は繋がれないけれど、心が重なり合ってドロドロに溶け合う感覚が忘れられない。ふたりだけの世界。鞠莉ちゃんが私の腕の中で笑って、見つめ合って……幸せで幸せで……っ。
これから先もずっと、私の腕の中にいて欲しい、鞠莉ちゃんの胸に飛び込ませて欲しい。色んなしがらみも全部放り出して……ふたりだけで過ごしたい。私の前から消えてしまうこと、どこかへ行ってしまう鞠莉ちゃんを想像すると、鎖で結びつけて、酷いことまでしてしまうんじゃないかって私は……怖くなった。
、
曜「――毎日が怖かったっ!! 楽しくても、一日が終わるたび、鞠莉ちゃんが向こうへ行ってしまう日が近づいていくっ!!」
曜「あれだけ楽しみにしていたカレンダーの日付も、先に進んでいくのが、怖くて、怖くて……っぅ」
曜「やだ、ぐす――行っちゃ、やだぁ……ぐす」
鞠莉「曜……ごめん、なさいっ」ギュッ
抱きしめられる手に力がこもっていく。こうやって抱きしめられて、抱きしめ返して……それがずっと、続けばいいのに。
鞠莉ちゃんと二人でいる時間は、そう、さながら、劇薬の様。その名前は「幸せ」。
今まで苦しいことも辛いこともスポーツをしている身分として、何度も身に降りかかってきた。私は馬鹿だから、全力で走ることしか知らない。今まで全速でそれらを払いのけてきて……辛いのには耐えられる自信がある。でも、今回は違う。
人生で経験したこともないような幸福感が私を包み込んだんだ。その薬を飲み続けた私は、もうそれ無しでは……生きていけないんじゃないかなんて考えてしまう。どっぷりと幸せの沼に浸かりきった私、おそらく私は――幸せには耐えられない、んだと思う。
頭では行っちゃやだなんて言葉をぶつけていいはずないってことも分かってる。
曜「でも、わかってるよ……鞠莉ちゃんは自分のしたいことがあって……それに向かって頑張ってる。それを私が邪魔していいわけない。しかも、それを分かってて、告白、したんだもん」
頭では、嫌という程、わかっている。
鞠莉「うん……」
曜「……」コクッ…
鞠莉「私はね、曜……こうなるんじゃないかって思ってたわ。曜は内に溜め込むタイプだから」
鞠莉「一つあなたに選択権があります。私はね、あなたのことを縛り付けたくないの。今のあなたは……まるで私に縛り付けられて……苦しんでいるように見える」
曜「っ……」
鞠莉「曜には曜の人生があるわ。もっといい人もいくらでも、見つかる」
鞠莉「だから――私と別れる、選択肢」
曜「――そ、そんなのやだよ!! やだ、やだ!! 鞠莉ちゃんと、恋人でいたいよっ!!」バッ
思わず鞠莉ちゃんの手を振りほどいて向かい合う。
――鞠莉ちゃんの演技力には、心底驚いた。
曜「鞠莉ちゃん……」
鞠莉「――私だって付き合っていたい!! 曜のこと、大好きだものっ! 当たり前じゃない!!!」
鞠莉「ぅ……でも、でも」
曜「じゃあ……今まで通り恋人でいよう? 私は絶対鞠莉ちゃんのこと、待ってる……苦しくても、待ってる、から……」
鞠莉「でもっ……ほんとに、いいの?」
曜「うん……」
私より背は高いけれど、華奢な肩を抱き寄せる。ふわりとシャンプーの香りが鼻腔内に広がる。私の肩口に頭を預けた鞠莉ちゃんは、堪えるように、嗚咽を漏らし始める。
鞠莉「ごめんね、ごめんねっ……私のせいで、うぅ……私も、寂しいっ……」
鞠莉「曜が好きって言ってくれる度、嬉しいけど辛くなって! 好きな人のために何もしてあげられないのが、申し訳、なくって……」
そっ、か。鞠莉ちゃんも私と一緒で、寂しかったんだね。いつもいつも余裕があるように見えて……私と違って、やっぱり演技が上手いや。
鞠莉「うん……っ」
曜「ねえ鞠莉ちゃん……これからの話、しよっか?」
鞠莉「っ……」
鞠莉「や、だ」
曜「え?」
鞠莉「だって……会えない期間はどんどん長くなっていく……もしかしたら、冬だって帰ってこれないかもしれない」
鞠莉「もっと先……私は多分日本には帰ってこない……どんどん、どんどんあなたと、離れてっ……そんな話っ」
曜「――私は……頑張るよ。鞠莉ちゃんと会うためにこれから先も頑張る。縛り付けられてるんじゃなくてね、糧になって……生きて行ってみせる」
曜「だって、鞠莉ちゃんは向こうで頑張るのに……私が会いたい会いたいばっかりで駄々捏ねてたら、合わせる顔もないもんね」
曜「さっきは泣いちゃってごめん、あれが私の本心だよ。でも、鞠莉ちゃんもおんなじなんだって安心した、やっぱり……素直に話さないと、だめ、だね?」
鞠莉「……待ってて、くれる?」
曜「うん?」
曜「うん……待ってるよ。ずっと、待ってる」
曜「むしろ! 私が船の船長になって、迎えに行っちゃうのであります!!」
鞠莉「ふふ、もう……そんなことができたら、白馬の王子様ね」
曜「またまたそんなこと」
鞠莉「でも、本当よ、あなたは今でも私の王子様」
曜「っ////」
鞠莉「私を見つけてくれて、ありがとう」
曜「うん……」
曜「あはは……ごめん」
曜「でも、こうやって話し合うことって大事だね」
真剣に話し合うこと、それが不器用な私達にとって、最善な方法なんだと思う。
曜「よし、寝よっか?」
鞠莉「ええ」
鞠莉「いいの? 私に思いっきり甘えられるのもしばらくないけど?」
曜「うーん……そうだなあ、それもいいけど……最近ずっと甘えてたし」
曜「鞠莉ちゃんを甘えさせてあげる!」
鞠莉「え、え?」
曜「ほら、おいでー」
鞠莉「も、もう……」ギュッ
鞠莉「い、言ったんだから……今日はちゃんと、最後まで甘えさせてよね」///
曜「うん……」ギュッ
駅
鞠莉「じゃあ、またね」
曜「うん」
曜「またみんなにふたりきりにしてもらっちゃったね」エヘヘ
鞠莉「そうねえ……」
鞠莉「曜」
鞠莉「ちゅ……ん」
曜「ん……//」
鞠莉「前はされるがままだったし、リベンジ、ね?」
曜「そんなこと……」
鞠莉「あら、やられた方は覚えてるものよ?」
曜「わ、私だってファーストキスだったもん……」
鞠莉「ふふっ、そうだったわね」
鞠莉「……」
曜「――鞠莉ちゃん、行ってらっしゃい!!」ニコッッ
鞠莉「ええ、またね!」
曜「……うんっ!!」
私はいつも通り、愛おしい恋人を、最高の笑顔で送り出すことができた。それは昨日ちゃんと、お互いの内をさらけ出したおかげ。
改札の向こうへと鞠莉ちゃんが消えていく。このままその背を追って、駄々をこねたくなる気持ちもある。
でも私は、背を向けて、駅を飛び出した。
離れ離れになってしまうけれど、私の一つの幸せは、取り上げられてしまうけれど……次会うときまでに、もーっと胸を張って会えるように頑張ろう。
過ぎ去るからこそ美しいんだって、誰かが言っていた。私と鞠莉ちゃんが一緒にいられる時間は、他の恋人たちに比べたら決して多くはない。だから、だからこそ……再開出来た時、それは輝いてる時間になるんだ。
次にまた向かい合った時、鞠莉ちゃんが驚くくらい可愛く、かっこよくなっていよう。そしてそれを、糧にしよう。
私は私らしく、そうだよね?
明るく楽しく! そんな未来に向かって。
曜「全速前進、ヨーソロー!」
――にしし、なんちゃって♡
おわり。
良い作品をありがとう!
乙
曜ちゃんの寒がりとかお金遣いの粗さとか、細かいところもポイント捉えててニヤリとした。
素晴らしい作品をありがとう
感動した
あぁ、素晴らしかった…
ちょっぴり切なくもあり幸せでもあり
すごい惹きこまれました
こういう色んなしがらみがある中2人で支えあって愛を貫くっていうのいいよね
すごく綺麗
-
前の記事
【ラブライブ!】海未ちゃんの誕生日会で穂乃果ちゃんがしてくる攻撃 2020.05.01
-
次の記事
【ラブライブ!】海未ちゃんの画像たっくさん下さい 2020.05.01