【ラブライブ!】真姫「星座早見盤と天体望遠鏡」
- 2020.03.27
- SS

寒空の中、1人ベランダに出る。今日はひときわ風が冷たく、寒さが肌をちくちくと刺激する。
天体望遠鏡を手慣れた手付きでセットして、準備完了。
小脇には星座早見盤。小さい頃に、天体望遠鏡と一緒にパパが買ってくれたもの。ペラペラで安い、子ども用のもの。
長く天体観測をやってる私には最早必要ないものだけど、なんとなく、これが無いと落ち着かない。
ファインダーを覗く。今日の月は、上弦の月。
はぁ、と白い息を吐く。
もうすぐ、何十年に1回の綺麗な満月が観れるらしい。
…毎年、『○○年に1回の満月!』とかいうのを聞く気がするけど。
そんなことを思いながら、星座早見盤の星座を意味もなく くるくると回してみる。もう、これが癖になってしまっている。
まだ天体望遠鏡の調整が出来なかった頃は父と一緒にやっていたが、今は準備から調整まで、全部1人で出来る。
今度の満月はせっかくだし、凛と花陽も呼んでみようかしら。ふふ、凛なんて、天体望遠鏡を見ただけで大はしゃぎしそうね。
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「お邪魔しまーす♪真姫ちゃん家久しぶりだにゃー」
…む。私、ちゃんと防寒してきなさいって言ったのに、薄着じゃない。そんなんじゃ風邪ひくわよ。
「え、これでも着込んできたつもりなんだけどなー…」
さっきのハイテンションはどこへやら、しょんぼりと肩を窄める凛。仕方ないわね。私のコートを貸してあげる。
花陽は、親戚の集まりがあるとか言って今日は来ていない。また次の機会にでも誘おうかしら。
「あ、真姫ちゃんのコート!へへ、あったかくてもふもふしてる!真姫ちゃんの匂いがするにゃー♪」
上着の上から更にコートを着ているから、着ぶくれしてモコモコしてる。なんだかちょっと面白い。
「?真姫ちゃんなんで笑ってるのー?」
ふふ、内緒。
「うー!やっぱり外の風は冷たいね…真姫ちゃんあっためてー!」
私の背中に、凛の体温。
「真姫ちゃんあったかいにゃー」
…今日は、いつもより寒くないわね。むしろ、ちょっと体が火照ってるみたい。
私の背中から ばっ、と離れて、天体望遠鏡にキラキラと目を輝かせる凛。
…なんでかしら、ちょっと天体望遠鏡に妬いてしまう。
「…あれ、何も見えないよー…?」
はしゃいだりがっかりしたり、忙しい子ね。こんなにくるくる表情を変えてて、疲れないのかしら。
貸して、と凛から天体望遠鏡を奪い取り、調整をする。
「真姫ちゃんすごいにゃー」
近い近い、顔が近い。…多分、私じゃなくて天体望遠鏡を見てるんだろうけど。
もし、もしこの状態で私が凛の方を振り向けば…
…いや、何を考えてるの私。スマートな真姫ちゃんらしくないわ。
凛が手をパタパタさせて喜ぶ様を見て、勝手に私の口元が綻ぶ。
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「やっぱり天体観測って良いね!次はかよちんも来れると良いなぁ…ん、真姫ちゃん、それなーに?」
凛が指差したのは、星座早見盤。
「わー、懐かしー!これ、小学校の理科で触ったことあるよー!これ回すんだよね!」
新しいおもちゃを買い与えられた子どものようにはしゃいじゃって。
早見盤の上でくるくる変わる星座。
まるでくるくる表情が変わる凛みたい。
「…え?くれるの?…でもこれ、大事にしてたものなんじゃない?」
確かに、大事にしてたけど。…今はもう、使ってないし。いつも持って行ってたのも、惰性みたいなもので。
特に意味なんて無かった。ちゃんと使ってくれる人のところにある方が、道具も嬉しいでしょうし。
「ありがとう!大切にするにゃー!毎日星を観るよ!」
それに、今の私には必要ない。
「今日はありがとう!今度は3人で観ようね!」
凛を見送った後、また1人、ベランダで夜空を眺めてみる。
…さっきより風が冷たくなった気がする。乾いた空気が肺に満たされていく。
柔らかく降り注ぐ月の光が、私を包み込む。
…星座早見盤、使ってくれるかしら。くるくる回し過ぎて、壊さないといいのだけれど。
くすり、と月に笑いかけて、最後にもう1度、ファインダーを覗いてみた。
おわり
凛ちゃん生き生きしてる
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