【ラブライブ!】海未「怪談ライブ、ですか?」
- 2020.04.02
- SS

ことり「うん、昨日ほんとかもしれない怖い夜見てたら、皆の怖い話を聞きたくなっちゃって……」
海未「理事長に話した結果、何故か我々の語りを衆目に晒す羽目になったと」
ことり「先走る人だから……」
凛「凛は怖い話苦手だなあ」
花陽「私もだよぉ……」
凛「っ……ああ……」ブルブル
凛「かよちんは見るからに苦手そうだからにゃー」
花陽「う、うん」
花陽(何で今目を押さえて空を仰いだんだろう……)
絵里「まあ……決まってしまったものは、仕方ないんじゃない?」
希「怪談となればウチの出番や! やったるでえ!」
ことり「今日です」
にこ「は?」
穂乃果「ええっ!? 穂乃果、怖い話の用意なんて何もないよ!?」
海未「穂乃果は先日体験したあれでいいのでは?」
穂乃果「ああ、あれ……でもあれはなぁ……」
ことり「とっても怖かったし、あれがいいと思うよ!」
真姫「あれ、って?」
穂乃果「実は私、先週ね……」
希「待つやん。お楽しみは後にとっておいたほうがええやろ」
絵里「私も一つあるけど、真姫は?」
真姫「怪談話のストックなら、そうそう負けないわよ!」
にこ「それは頼もしいことね。にこの番もあげたいくらいだわ」
海未「にこ、それはいけませんよ」
にこ「だって、本当に怖い話なんて……」
希「皆が話してる間に何か思い出せばええやん?」
にこ「うーん……」
ことり「何はともあれ、怪談ライブの開幕です!」
穂乃果「わーい」
海未「拍手をしています」
希「この平坦な反応こそホラーちゃうんかな」
凛「何も思いつかなかったにゃ。かよちん、助けてー」
花陽「あれがああなって……これがこうだから……」ブツブツ
凛「かよ、ちん?」
凛「何故だろうか、嫌な気がするにゃ」
穂乃果「お客さん結構いるね」
希「真姫ちゃんが一番やな、ほら行ってき!」
真姫「言われなくても分かってるわよ」
こんばんは、西木野真姫と申します。本日はよろしくお願いします。
……こんな時間に怪談ライブなんて本当に人来るのかって心配してたけれど、結構人入ってるわね。
もうすぐ終わるとは言え、まだまだ暑い日も続いているし、涼みに来たのかしら。
その期待に応えられるかどうかは分からないけれど、精一杯やらせてもらうわ。怪談を、ね。
皆は猫って飼ったことある?
猫って可愛いわよね。小さくて、柔らかくて、丸くって。そんな猫を、私も小さい頃から一匹飼っていたのよ。
名前の理由? 付けたのはお父さんだから正確なところは分からないけれど、多分、静かな子だったからじゃないかしら。
そう、ミュートはとても静かな子だったの。普通、猫ってゴロゴロ喉を鳴らしてみたり、飼い主を呼ぶために鳴いてみたりするじゃない? それが、ミュートには一切無かったのよ。
声帯が切除されてたわけじゃないわよ、だって、二ヶ月に一回くらいは気紛れのようにみゃあって声をあげていたもの。
ミュートが鳴いた日は外食をしよう、なんて厳格なお父さんが言い出す程度には、ミュートの鳴き声は稀だったのよ。
今日私が話すのは、そんなミュートのお話。私の可愛い、猫の話よ。
小さい子にとってペットは動くおもちゃのようなもの、とはよく言ったもので、私もよくミュートにちょっかいを出したりしていたわ。尻尾を引っ張ってみたり、毛を毟ろうとしたり。
そんな悪戯をされた時も、迷惑そうな顔はしていたらしいけれど、声はあんまりあげなかったそうよ。らしい、って言うのは、これもお母さんから聞いた話だから。
今、記憶が残っている頃には、ある程度の分別もつくようになっていたしね。家族の一員だって、理解も出来ていたからおもちゃ扱いしたのを謝ったりもしたわ。
ペットを飼いだすと、徐々に家族と同じように大事になっていくでしょ? 私の場合は最初から家族の一員としてそこにいたから、大事になっていく過程をすっ飛ばして家族になっていたのよ。
お父さんと、お母さんと、私と、ミュート。この四人で、ずっと生活をしてきたの。
猫のいる生活っていうのはいいわよ、本当に。嫌なことがあった日も、毛を撫でているだけで癒されるし、愚痴も聞いてもらえるし……。
……そんな生活が、ずっと続くと思っていたのよ。
私が中学校から帰ってきたら、お母さんが泣いてて。どうしたの、って聞いたら、ミュートが死んじゃったのって。
慌てて、ミュートがいつも寝ていた居間に行くと、いつものようにクッションの上で丸くなったまま、冷たくなったミュートがいたわ。
死因は分からなかった。お父さんは寿命だろうって言っていたけど、信じたくなかった。
だって、お隣の飼っている猫は十七歳なのにまだまだ生きていたのよ? それなのに私のミュートは、十二、三歳で寿命なんて。
あの時は、凄く悲しかったなあ……。幼い頃からずっと一緒にいた存在が、いなくなっちゃったんだから。
朝起きて来ても、居間の、あの子のお気に入りのクッションの上には何もいない。
いってきます、って声をかけてみても、尻尾を振ってくれる相手がいない。
そんな事実が、とっても、悲しかった。
あれだけ悲しかったのに、ミュートを思い出すことも減ってきていたの。
そうやってミュートを忘れそうになっていたある日のこと。私が居間でテレビを見ていたら、何処かから「みゃあ」って猫の鳴き声がしたの。
隣の家の猫でも迷い込んだのかしら? そう思いながら、辺りを見回したけど猫なんていない。
テレビの音声がたまたまそう聞こえただけね、そう思いながらソファに座り直した瞬間、はっとしたわ。
さっきの声、ミュートに似ていた。そう気付いた瞬間、怖くなるよりも、何だか嬉しくなってね。ミュート、いるの? って言ってみたのよ。
当たり前だけど、返事は無かった。ミュートはもう死んでいるんだから、居間に居る筈がないもの。
けれど私は、きっとミュートはまだここに居るんだって、信じていたのよ。ミュートが声を出さないのはいつものことだから、私が居ることに気が付かなかっただけだって。
倉庫にしまっておいたクッションを、いつもの場所に置いて、今ミュートはあのクッションの上にいるんだろうな、なんて思って。端から見ると相当おかしな行為よね。
信じた、と言うよりは、私がまだ落ち込んでいるんだと思ったんでしょうけど。猫を失って現実逃避がしたいんだってね。
それ以降、私は居間にいる時間が増えたわ。だって、ミュートが鳴いた時に、聞き逃しちゃったら嫌じゃない。
居間でジッとクッションを見続けている私を、両親は気味悪がっていたけれど、私は満ち足りた気持ちだったわ。
それからまたしばらく、ミュートの声は聞こえなかったの。私もじりじりしてきて、本当は鳴き声なんて聞こえなかったんじゃないかと思い始めた頃。
また、「みゃあ」って声が聞こえたの。その時は、お父さんもお母さんも一緒に居たわ。
私は嬉しくなって、ねえ、聞こえたでしょう? ミュートの声。って、二人の方へ振り向いたわ。
その瞬間を、私は今でも忘れないわ。
今まで見たこともないほど、真っ青になった両親の顔。譫言のように何か呟いているお父さんと、涙目のお母さん。
意味が分からなくって首を傾げる私の手を、不意にお父さんが引っ張ったの。ここから出るぞ、って。
そう言う私に、お父さんは顔を顰めながらこう言ったの。
あれがミュートの声だと? 私には、殺してやると低く呟く男の声にしか聞こえなかったぞ!
……その後は大変だったわ。お父さんがお寺に駆け込んだり、神社でお祓いをしてもらったり。よく分からない霊能力者なんてのも来てたわね。
そのどれかが効いたのか、それ以来声はしなくなったわ。
後でお母さんにも聞いてみたんだけれど、やっぱり低い声で殺してやるって聞こえていたらしいの。
何でその声は私にだけ、ミュートの声で聞こえていたのかしら。そこだけが不思議なのよ。
ひょっとしてミュート、悲しかったのかな。忘れられそうになって、殺したいほど悲しかったのかなあ。
私も両親のようにミュートの死を完全に受け入れていたら、殺してやるって声が聞こえたのかもしれないわね。
本当のところは何も、分からないままだけど。
私の話はこれでおしまい。あんまり怖くなかったかしら? 大丈夫よ、他の皆はもっと怖い話をしてくれるから。
それでは、ありがとうございました。
第一夜 猫のいる生活 完
これ自作なの?
皆さんこんばんは、小泉花陽です。
わぁ……私達の話を聞くために、こんなに人が集まってくれたんだ。ちょっと緊張しちゃうな。
皆の期待に応えられるかは分からないけれど、私も精一杯怖い話をさせてもらいます!
と言っても、私は怖いと思っているだけで人が聞いて怖い話なのかは分からないけど……。勘違いって可能性もあるし。
と、とにかく頑張ります!
皆さんは、望遠鏡って覗いたことありますか? 遠くを見るための、あの長い筒。
あまり親しみが無い人も多いかもしれないね。普通は家に無いし、高いタワーとかに登らないと置いてなかったりもするし、ね。
といっても私が買ったんじゃなくて、お兄ちゃんが天体観測したいからって理由で買った物だけど。
うちのお兄ちゃんは良く言えば多趣味、悪く言えば広く浅い飽き性で、よく趣味にのめり込んでは飽きて別の物にまたのめり込む、そんな人だったの。
望遠鏡もそんなお兄ちゃんの趣味の一環として我が家にやってきて、すぐに飽きられて押し入れに放り込まれていたんだ。
けどやっぱり高級品、お兄ちゃんも諦めきれなかったのか、たまに惰性のように取り出してはベランダでぼうっと空を眺めたりしていたの。
私も最初のうちは物珍しさもあって、お兄ちゃんの天体観測に付き合ったりしていたんだけどね。
星を見るのが退屈で、そのうちお兄ちゃんが望遠鏡を取り出しても着いていかないようになっていたんだ。
予習を終えて暇だった私は、暇潰しに本でも借りようと思ってお兄ちゃんの部屋に向かったの。
お兄ちゃん、何か面白い本無い? そんなことを言いながら部屋に入ったんだけど、お兄ちゃんは部屋にはいなかったんだ。
私の部屋、階段のすぐ傍だから、出て行ったら音がする筈なのにおかしいな、なんて思っていたら。
お兄ちゃんのベッドに、黒いカバーが無造作に放り出されているのが見えたんだ。
ああ、ベランダで天体観測しているんだ。
そう納得して、私はベランダの方に向かったんです。普段なら、そのまま部屋に帰るんですけど、何故かその時だけは何も考えずにベランダの方に向かっちゃったの。
ベランダを開けると、つまらなさそうな顔をした兄が、小型の椅子に座りながら望遠鏡に目を当てていました。
なんだ、花陽か。ノックぐらいしろよ、驚くだろ。
それだけ言って、また望遠鏡の方に向き直ってしまったんです。
兄がぶっきらぼうなのはいつものことなんですが、私はその言葉にわずかな違和感を覚えました。
というのも、お兄ちゃん自身も天体観測に飽きていることもあってか、普段なら私が来ると、花陽も見ろよなんて言ってすぐに場所を譲る筈なんです。
だけどその日に限っては、私に順番を変わる素振りの一つも見せないんです。それでいて、相変わらずつまらなさそうな顔をしている。
お兄ちゃん、何か面白い物でも見えるの? 私がそう聞いても、兄はあー、や、うん、なんて生返事でまともに取り合ってもくれません。
しかし、どれだけ目を凝らしても、目の前に広がっているのはいつも通りの夜空と、いつも通りの街並みにしか見えません。
一体何が面白くて望遠鏡をじっと覗いているんだろう。そんな風に思いながら、兄を見ているとまたおかしなことに気付いたんです。
お兄ちゃんは天体観測が趣味、なんて言っていますが星のことなんて何一つ分からない人です。だから、望遠鏡も一点を見るわけでもなく、早ければ数秒、遅くても数分で見る場所を変えるの。
その兄が、私が来てから一切望遠鏡の向きを変えていない。
何処か一点を、ずっと凝視しているようなのです。私は何だか、お兄ちゃんが気味の悪いことをしているんじゃないかと思いました。
ひょっとしてお兄ちゃんは、覗きをしているんじゃないかな?
しかし覗きをしているにしては、鼻の下も伸びてはいませんし、興奮している様子もありません。つまらなさそうに見ているだけなんです。
私は意を決して、お兄ちゃんに変わってほしいと言ってみたんです。
絶対に駄目だ。
普段のお兄ちゃんからは想像も出来ないほど、厳しい声でした。
驚きで身体を震わせた私に、お兄ちゃんは罰が悪そうにそろそろ飯だろ、下に降りよう。と優しく言って私に部屋を出るよう促しました。
食事の最中、私はずっとお兄ちゃんが何を見ていたのか考えていました。
覗き? それともただの天体観測? 知られたくないこと?
いくつもの可能性が頭の中で浮かんでは消えていきます。
その考えは、どんどん恐ろしい物になっていきました。あれほど厳しく言うのだから、きっと絶対に知られたくないことなんだ、と。
そこまでして隠したい物って何なんだろう。殺人現場? お宝を埋めた場所? 考えがエスカレートするごとに、私の好奇心も高まっていきました。
何とかして見てみたいと思いましたが、お兄ちゃんが自分の部屋にいる以上、私はどうやっても望遠鏡を見ることは出来ません。
無理やり見ようとしても、体格が一回りも違うお兄ちゃんに、私が腕っぷしで勝てる道理はありません。
そこでふと、良い考えが浮かんだんです。
単純に、兄が一階のトイレに行った隙に望遠鏡を覗こう。
兄はずぼらなところがあるので、きっとトイレに行くくらいでは望遠鏡も出しっぱなしにしている筈。
私はじっと息を潜め、その時を待ちました。一分経ち、二分経ち、何分か数えるのをやめた頃、部屋の前の廊下がぎしっと音を立てました。
兄が部屋の前を通ったんです。階段をとんとんと降りていく音が聞こえなくなった頃、私は部屋の扉を開きました。
これは、お兄ちゃんが悪いことをしていないかの確認だから。自分にそう言い聞かせながら、私はそっと望遠鏡を覗き込んで。
あれっ? と思ったんです。だって、予想していたような恐ろしい物は何も無かったから。
そこは、マンションのベランダのようでした。ベランダの向こうに見える部屋は、カーテンがついていないせいで中が丸見えになっていました。
けどその部屋は荒れ果てていて、どうやら無人のようです。廃屋、という印象すら受けました。
なんだ、お兄ちゃん廃屋を覗いていただけだったんだ。変なことするなあ。
そう思いながら、部屋の中をよく見てみた瞬間。
息が、止まりました。
ちょうどベランダに出る窓、その窓の向こうから、女性がこっちを見ているんです。
こっちは望遠鏡を使っているんです、勿論、向こうからは豆粒くらいにしか見えていない筈なんです。
なのに、はっきりと目が合っていると分かりました。
荒れ果てた部屋で、女がジッと立ってこっちを見ている。怖いのに、その光景から目を離すことが出来ませんでした。
私が震えていると、女がゆっくりと口を開けたのが分かりました。何かを言おうとしているんです。
嫌だ、見たくない。そう思っても、身体が自由に動いてくれないんです。
女が口を開け切った瞬間、私は誰かに肩を掴まれて我に返りました。
その瞬間、鉛のように重く、動いてくれなかった身体がすっと楽になりました。
望遠鏡から目を離し、隣を見ると、兄が怖い顔をして私のすぐ傍に立っていたんです。
ねえ、お兄ちゃん。あれ、何なの?
私がそう聞くと、兄は静かに、俺にもよく分からないと答えました。
あまり、あれのことを聞いてほしくはなさそうでした。私も、詳しく聞きたいとは思いませんでした。
人間にしろ、人外にしろ、あんなものと関わりたくはなかったんです。
無言で片付けを続ける兄を横目に、私は部屋に戻ろうとして、ふと思いつきで望遠鏡が向いていた方へと目を向けたんです。
そっちの方角に、マンションなんてありませんでした。
……あれが何なのかは分かりません。何を言おうとしたのかも、聞いたらどうなっていたのかも。
今でも兄は、たまにベランダで、望遠鏡を覗き込んでいます。
私の話は以上です。聞いていただき、ありがとうございました。
第二夜 こっち見てる 完
-
前の記事
【ラブライブ!】もし二年生組が幼馴染みじゃなかったらさ 2020.04.02
-
次の記事
【ラブライブ!】絵里「さすがにこのブラジャーは小さすぎたかしら…」希「はみ出ちゃうわぁ」 2020.04.02