【ラブライブ!】海未「吾が背子と二人し居れば山高み」
- 2020.04.03
- SS

成人済みのほのうみがお月見するお話。
穂乃果「ありがとー、ごめんね任せちゃって」
海未「いえいえ、毎年この時期には美味しいお団子を頂いてますから」
穂乃果「ふふっ、穂むら自慢のお月見団子です!」
海未「さて、それでは……」
穂乃果「うん、じゃあ綺麗なお月さまの記念に、かんぱーい!」
海未「乾杯」カラン
穂乃果「ほんとにねー、去年は海未ちゃんの誕生日がまだだったし」
海未「この年になって、3月生まれが色々と不便なことを痛感しますよ」
穂乃果「まぁまぁいいじゃん、そのおかげでこうしてずーっと一緒にいられたんだもん!」
海未「ふふ、その通りですね」
穂乃果「……」
海未「……」
穂乃果「……ほんとに綺麗だねー、お月さま」
海未「風情がある、とはこのことなのでしょうね」
海未「どうしたのですか?」
穂乃果「ねぇねぇ、海未ちゃん」
海未「はい?」
穂乃果「月が綺麗ですねっ!」
海未「なっ……!」
海未「ほ、穂乃果……!」
穂乃果「お返事ちょうだい!私、死んでもいいよ、がいいなぁ──」
海未「どこでそんな教養を身につけてきたのですか、穂乃果!」
穂乃果「……あれっ?」
穂乃果「え、そういう反応?なんか思ってたのと違う……」
海未「……成長したのですね、穂乃果……」グスッ
穂乃果「泣くほど!?もー、これくらい穂乃果でも知ってるよ!有名でしょ!?」
海未「けど、高校生のときには知らなかったでしょう?」
穂乃果「うっ、確かに知ったのは今年だけど……あーあ、もっと照れる海未ちゃんが見たかったなー」
海未「貴女の考えてることなんて、もうわかりますよ……けれど、そうですね」
穂乃果「えっ?」
海未「里には月が照らずともよし──先程の返事ですよ、穂乃果」
穂乃果「え、えーっと……ど、どういう意味?」
海未「さて、どんな意味でしょう?」
穂乃果「もー、教えてよー!」
海未「ふふ……まだまだですね、穂乃果」
穂乃果「いいもん、携帯で調べるから……えーっと、わがせこの……せ、せこって何……?」
穂乃果「……へ?」
海未「親愛なるあなたと二人でいるので、山が高くて月がこの里に照らなくてもかまいはしない……という意味ですよ」
穂乃果「海未ちゃん、それって……」
海未「これが私からの返事ですよ。いかがですか?」
穂乃果「えっ、だって、あれは海未ちゃんをからかうための冗談で……」
海未「私の気持ち、伝わりましたか?」
穂乃果「えーっと……だ、ダメだよ海未ちゃん!だって私達、ほら、その……」
海未「ちなみに先程の歌は……友情の歌、なのですけどね?」
穂乃果「へっ?」
海未「はい」
穂乃果「……もしかして、からかった?」
海未「……」
海未「バレました?」クスッ
穂乃果「もぉー、海未ちゃぁーん!」
海未「先にからかおうとしたのはそちらでしょう?それに、私に言葉遊びで勝てると思ったのですか?」
穂乃果「むぅー……」
海未「背子とは一般に、男同士が互いを親しんで呼ぶ言葉ですよ。……一つ賢くなりましたね?」ニコッ
穂乃果「く、悔しい……!」
海未「ええ、相手のことを大切に思っているのが伝わってきます」
穂乃果「誰の歌なの?」
海未「高丘河内(たかおかのこうち)という人です。聖武天皇の時代の学者官人で……この歌は、あの万葉集に記されている数少ない友情の歌なのですよ?」
穂乃果「へぇー、流石文学少女だねぇ……」
海未「やめてください、ただの文学部の大学生です」
穂乃果「いやいや、そんなことないよー?やっぱり絵になるもん!」
海未「それに、言葉に……日本語に触れる楽しさは、貴女と過ごしていなければきっと見つけることはできなかったでしょうから」
穂乃果「……えへへ、そっか」
穂乃果「なになに?」
海未「夏目漱石が”I love you”を”月が綺麗ですね”と訳したのは、後世による創作の可能性が高いそうですよ?」
穂乃果「……え、そうなの?」
海未「ええ、少なくとも裏付けとなる資料は一切見つかっていないそうです──知らなかったのですか?」
穂乃果「……」カァッ
海未「まったく、穂乃果らしいと言うか、何と言うか……」
海未「まぁ、早い段階で知られて良かったじゃないですか」
穂乃果「それはそうだけど……もういいっ!元々お月見なんだから、月見よ、月っ!……って、あれ」
海未「完全に建物の影に入ってしまいましたね」
穂乃果「えーっ、つまんないのー」
海未「ふふっ、まさにあの歌の状況にぴったりですね」
穂乃果「え、そうなの?」
海未「ええ。あの歌は、友人との宴の席で詠まれたとされていますから」
穂乃果「そうなんだ……じゃあ、私達も」
海未「ええ。月が出ていなくても、貴女と二人でこうして過ごせるのならそれでいいんです」
穂乃果「ふふっ、そうだね。じゃあ改めて」
海未「乾杯」
穂乃果「乾杯──」
────
────────
海未「何です?」
穂乃果「さっきの歌さ、やっぱり私達とは違うよ」
海未「ほう……それは、どうして?」
穂乃果「今は、海未ちゃんと二人だけどさ。ほんとはもう一人、ここにいてほしい人がいるでしょ?」
海未「なるほど。ええ、その通りですね」
穂乃果「どうしてるかなー、ことりちゃん」
海未「きっと今は、海の向こうで──夢を叶えるために頑張っているはずですよ」
穂乃果「うん、きっとそうだよね」
海未「はい」
穂乃果「いつか、皆で……あの9人で集まって、こうやってお酒を飲みながらお月見できたら……」
穂乃果「きっと、素敵だろうなぁ」
海未「ええ。それはきっと、物凄く」
穂乃果「なんだか、皆と久しぶりに会いたくなっちゃったなー」
海未「すぐに会えますよ。来年には、花陽達の成人式もありますから」
穂乃果「皆綺麗なんだろうなー、今から楽しみだよ」
海未「ええ、そうですね」
海未「……ふふっ……さて、目を覚まさないうちに後片付けをしましょうか」
海未「……」
海未「穂乃果、貴女が導いてくれた世界は、4年経った今でも輝いたままです」
海未「貴女が私の友であることは、私にとってこれ以上ない幸福なんです」
海未「ありがとうございます、穂乃果。そして、願わくばずっと、こうした日々が続きますように──」
海未「さて、残りのお酒を台所に……」トットッ
穂乃果「ん……私も、だよ……ありがと……」スースー
これにて完結です!
昨日が中秋の名月、今日がスーパームーンということで8月のブルームーンの時から温めてた月に関するSSを。
表題にもなってる歌は自分自身大好きだったりします。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
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