【ラブライブ!】真姫「紅い瞳の魔女」
- 2020.03.29
- SS

「母を亡くしたシンデレラは意地悪な3人のお姉さんと暮らしていました」
時々裏返ったりしてる花陽ちゃんの声がマイクを反響して静まり返った講堂に響く
少し恥ずかしそうで、照れくさそうに花陽ちゃんがシンデレラの冒頭を語ると暗幕がゆっくりと上がった
そして照明が私を照らす
あまりのまぶしさに少しの間客席が見えなかったけど、次第に目が慣れてきた
目の前には人
人、人、人―――――人
講堂にはたくさんの人がいて、私は今舞台に立っているの
「あぁ、私はシンデレラ!」
なんだかやけくそ気味な大声を上げた
そう、私はシンデレラ。30分限定のシンデレラ
希ちゃんの提案でくじ引きで決めた配役。私こういうの得意じゃないんだけど
むしろ苦手――――
台詞をかんだりして笑われたらきっと立ち直れないかも
ううん、だめよ。花陽ちゃんだって苦手な役やってるんだもの。私もしっかりしなきゃ!
なんだかライブやピアノの発表会とは違った変な恥ずかしさがある―――
ああ、どうしてこうなったのかしら?
そう―――――あれは2週間くらい前だったかしら?
土曜。昼下がりの午後――――
花陽ちゃんとことりちゃんが作ってくれたワッフルを食べて、少し長めの休憩をとっていた時だった
午前中は生徒会の仕事をやりたいから――――ということで生徒会室に籠っていた絵里ちゃんと希ちゃんが屋上にやってきて
「あ、お帰りなさい絵里ちゃん希ちゃん。あのね、ワッフル作ったんだ。食べて食べて♪」
二人を見つけた途端、ワッフルの入った小箱を抱えてパタパタと駆け出すことりちゃん
「お―――ありがとうな。くすくす。なんかすっごく甘くていい匂いが生徒会室に迷い込んできたと思ってたら、こんな美味しそうな物持って来てたんか。うーん、もうお腹ペコペコだから――――いっただきまーす♪」
その希ちゃんとは正反対で、屋上にやって来てからずっと難しい顔の絵里ちゃん
ことりちゃんのワッフルにも手を付けないで、何かを言いたそうな顔をしていた
まだそんなに付き合いは長くはないのだけど、なんとなくわかる
面倒事を引き受けてしまった顔
別に私が特別なわけじゃないわ。だってそれは海未ちゃんもことりちゃんも花陽ちゃんも気づいていて――
良ければ…どうぞ
話を切り出したのは意外にも花陽ちゃん
「あ、あのね。その―――学園祭のライブで忙しいってのはわかってるんだけど、そのね――」
ものすっごく歯切れの悪い言葉を続けちゃってる
もう、いつもの絵里ちゃんらしくないわっ!そう言うと、隣にいた希ちゃんが絵里ちゃんの分であろうワッフルを頬張りながら
「んとなー、ごめんけどμ’sのみんなでシンデレラすることになったから」
たいした説明もなく、あまりにもあっさりと言っちゃうもんだから少し困惑しちゃったわ
ええと、確か私たちって学園祭の日に講堂ライブがあったはずだけど、それは間違いないわよね?
心の中で自問自答
うん。確かに学園祭の日の午後2時から講堂でやるわ
海未ちゃんがセンターで和をイメージしたコスチューム
超支援
だとすると―――
「ごめんなさいっ!先生にどうしてもって何度も頼まれて―――」
ああ、絵里ちゃんの悪い癖出ちゃってたみたいね。人に頼まれると断れない性格
そういう性格嫌いじゃないけど、やっぱり損だと思う
なんて――――案外人に言える立場でもないような気がしちゃうけど
「わぁー☆シンデレラなんてニコに相応しい役ね。ニコが主演もらったニコ☆うんうんっ。これでμ’s主演シンデレラ満員御礼間違いなしニコ♪」
「色々と言いたいことはありますが、決まってしまったのでは仕方ありません。恥ずかしい演技なんてみせられません。しっかりと練習を行いますよ。そうですね――――まずはシンデレラのストーリーを復習しましょう。図書室に本があったはずです」
「シンデレラかぁ。白雪姫の衣装はこの前真姫ちゃんに着てもらったけど、シンデレラの衣装なんてあったかなぁ?くすくす、楽しくなってきちゃった」
突然の事なのに意外や意外、反対意見を言う人なんていなくて、むしろみんな乗り気――――
このフットワークの軽さってなんなのかしら?
この集団にいるだけで私もいつかみんなみたいになれるのかしら。なんて―――
希ちゃん、当事者の筈なのにまるで他人事
ある意味希ちゃんのこういうトコ憧れちゃったりしちゃう
なんでもかんでものらりくらり
だけど、なにが起こっても結果的に解決しちゃう
今回もきっと、希ちゃんがなんとかしてくれるかも
忘れてたけど、アイドル喫茶もやるのよね?確か。
だとすると午前中アイドル喫茶、午後1時からシンデレラをやって――――
午後2時には講堂ライブ?リハやってる余裕もないじゃない!
あーもうどうなっちゃうのかしら
なんでもかんでもみんなに任せてはダメね
しっかりしなくちゃ――――
「あー。憂鬱だわ」
しっかりしなくちゃ――――
そう思っていたのも遠い昔のように感じる
希ちゃんの提案がなかったらよかったのに
スポーツドリンクをひとくち口に含んで溜息をついた
まさか私が主役になるなんて――――
「ニコニーの運がもうちょーっとよかったら、ニコニ―がシンデレラだったのにー。もー、真姫ちゃんてばずるーい」
となりでニコちゃんがなにか言ってる
今更あれこれ言ってもどうしようもないんだけど
変われるものならニコちゃんと変わりたい。だってニコちゃんの役、魔女よ?中盤にちょこっと出番があるだけじゃない
私もそういう役がよかったな
ああ―――私も希ちゃんやニコちゃんみたいに、のらりくらりとやっていけたら楽なのに
「えー、でもでもニコはー、こっちのほうがいいと思うなー。今までにない新感覚のプリティーなニコニ―魔女なんてぜーったいウケるとおもうんだけどなぁー」
「だからと言って、王子様からシンデレラを奪う魔女なんてどこの世界にいるんですか!」
「大丈夫大丈夫♪本番は練習どおりきちんとするからー☆」
絵里ちゃんが、まぁまぁ、と海未ちゃんをなだめてる
王子様役の穂乃果ちゃんはなんだか楽しそう。ついでに希ちゃんもガッツポーズなんてしちゃってる
見ている分には確かに楽しいんだけど――――
ホント、私も希ちゃんやニコちゃんみたいに、のらりくらりとやっていけたら楽なのに
薄暗い講堂の中、私や凛ちゃん。ことりちゃん、絵里ちゃんらの声が響く。
「それじゃあシンデレラ。私たちがお城から戻るまでに屋敷の掃除すませておくのよ」
「そうざます」
「私の部屋は念入りに掃除しなさいよねっ」
「そーざます」
練習の時からそうだったんだけど、凛ちゃん確実にお嬢様キャラ勘違いしてるよね?
観客の笑い声につられて笑いそうになるのを何とかこらえながらも演技を続ける
「その願い――――叶えてあげるわ!」
突然のスモークとスポットライト――――
やたらと露出の多い黒色のローブととんがり帽子。魔女って言うよりファンタジーな漫画に出てくる魔法使いみたいなニコちゃん魔女がルンルンと舞台に登場
なんでか主役の私より派手に登場しているニコちゃん
それよりも観客がわぁっ!ってざわついたのが少し気になっちゃったけど
ニコちゃんが自作した可愛らしい杖をふいって振りかざす
それを合図に私を照らした照明はいったん消えて
10秒ほどで再び私を照らすと―――――再び観客がわぁっ!って
それもそのはず。だって私はことりちゃんの自信作のドレスに早変わり
方法は簡単。今まで着ていた灰色の洋服の下にドレスを着ていたの
灰色の洋服は簡単に脱げるようになっていて、脱いだ洋服は舞台そでにいた絵里ちゃんに―――
ことりちゃんも乗り気で、脱ぎやすい洋服も作るとか言っちゃうし
だったら私、頑張るしかないじゃない
自宅で何度も何度も洋服を素早く脱ぐ練習をしたのを思い出して、これは墓場まで持っていく思い出だなと改めて思ったわ
再び杖をふいって振りかざすと
「ひひーん」
舞台そでから少しだけ、穂乃果ちゃんと凛ちゃんが顔を出した
これ、何度も思うけど、馬じゃなくてトナカイよね。角生えてるし
なんだかんだで物語は終盤に差し掛かり、私と穂乃果ちゃんがダンスを踊り終えたところ
王子様の穂乃果ちゃんとシンデレラの私は様になっていたようで
黄色い歓声が会場を包み込んだのは少し驚いちゃった
トナカイの角を生やしたまま王子様が出た時にはどうしようかと思ったけど
ニコちゃんもさすがに本番はおとなしくて問題なく進行してるわ
「ごめんなさい。王子様。もう時間なの」
「まってくれシンデレラ!もう少し僕と――――」
練習通りに舞台そでに下がろうとしたとき――――
「ざんねーん♪これからシンデレラはー、ニコニ―と一緒にお茶会なの♪」
ニコちゃんは私を抱き寄せると
「いい夢見れた?でも残念ね。シンデレラはニコニ―のものだから、そろそろ返してもらうんだからね」
沸き立つ観客
ニコちゃんってば本当に練習に忠実――――
台本通りじゃないけど
しまった。私の認識が甘かった。―――――ニコちゃん最初からしでかすつもりだったんだ
ふと、舞台そでに目をやると
魔法にかけられたかのように直立不動で放心している海未ちゃんと
やれやれ、とため息をついてる絵里ちゃん
それに100点満点の笑顔の希ちゃん
ああ、これもう止められないのね。心の中で溜息ついちゃった。だって――――
「おぅおっ!なんだって!?シンデレラは僕のものだ!返してもらうぞー!」
舞台に立っている穂乃果ちゃんとニコちゃんがノリノリなんだもの
おまけに観客も盛り上がってるし
私、どうしようもないじゃない
ああもう降参!好きにして―!
結局、演劇は予定より20分も押して終わって
そのあとバタバタと準備をして、ライブをして――――
ライブが終わると同時にニコちゃんに海未ちゃんの雷が落ちて――――
悪乗りをしたという理由で穂乃果ちゃんまで巻き添えになってしまっていた
ふたりで抱き合いながら涙目になってる王子様と魔女はなんだか可愛いくて
さっきまで私を奪い合ってたなんて嘘みたい
「もうこんな役こりごりよ」
誰にも聞かれないように小さな声で呟いた
あ、でも――――
私を奪い合うなんてなんだか嬉しかったかも
実のところ、ニコちゃんが私を抱き寄せたとき、少しだけドキッてしちゃった
意外と強引な人に弱いのかも――――
これも墓場まで持っていく思い出なんだなって考えながら
ライブを終えた各々の姿を眺めながら、変な充実感に満たされてた
なんだか今日はいつもの10倍は疲れたけど
100倍楽しい思い出が作れた気がした。そんな一日でした♪
おしまい
面白かったです!
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