【ラブライブ!】にこ「真姫ちゃんの病院で働かせてもらうことになったわ」
- 2020.04.05
- SS

にこ「はあ…褥瘡処置って点数何点だったっけ…看護必要度に点数書いてあるから、点数取れるわよね」
高校3年の春…私、矢澤にこの所属していたスクールアイドルμ’sは、スクールアイドルのビックイベント、ラブライブを優勝した。
そして、私たち3年の卒業と共に、μ’sは解散。みんなそれぞれ、少しずつ別々の道を歩き始めた。
にこ「ああもう!また必要度だけ取って記録に記載がないじゃない。ちゃんと記録は書けっての看護師!」
凛「ご、ごめんにゃ~にこちゃん…」
にこ「わあっ!いきなり出てくんじゃないわよ!」
私は卒業後、なんとかギリッギリ受かったFラン大学に進学し、個人でアイドル活動を続けていた。
そしてμ’sでの功績もあり、大手事務所から運良くスカウト。進学して1年で大学を辞め、私は本物のアイドルになった。
最初はトントン拍子に成功していった。元々スクールアイドル時代のファンも着いてきてくれ、CDも順調に売れた。
やっと本物の宇宙No.1アイドル、にこにーになれたんだわ!そのときは、そんなことを思っていた。
しかし、トントン拍子にいったのは最初だけ。たくさんのアイドルが犇めく芸能界で、私1人の力では生き残れなかった。
どんどんCDも売れなくなり、メディア露出も減る一方。足掻いても足掻いても、私の努力が実ることはなかった。
改めて、ラブライブ優勝はあの9人が揃ったから成し遂げられたんだわ。そんなことを思い知らされた。
そしてとうとう、私はアイドルを諦めひっそりと引退。
学も技術も何もない私は途方に暮れたけど、引退を知った真姫ちゃんが連絡をくれ、真姫ちゃんの家が営む西木野病院で医療事務として働くことになった。
凛「カルテにちゃんと記載してコスト取らないとお国から色々言われるからしょうがないんにゃ…」
にこ「じゃあちゃんとあんたらが記録しなさいよ!」
凛「ひええごめんにゃ~!」
シュンと項垂れながら、凛はラーメンを啜る。
この病院で働きはじめてからほぼ毎日凛とお昼ご飯を食べているけど、凛は病院の食堂のラーメンを食べているところしか見たことがない。
栄養面は大丈夫なのかしら…。仮にも看護師なのに。
にこ「はあ~。それにしてもあんたが看護師だなんて、いまだに信じられないわ。噂では聞いてたけど」
凛「酷いにゃ!これでももう6年目だよ!」
にこ「しかもICU…μ’sのおバカ担当だったのに…」
そう、凛は高校を卒業後アイドルをすっぱり辞め、予想に反して看護の専門学校に進学した。
そして今は、同じく真姫ちゃんの病院で看護師として働いている。
凛「最初は凛もICUでなんて働くつもりじゃなかったにゃ…。
でも真姫ちゃんが『あんたは追い込まれないと勉強しないんだから、ICUで修行しなさい』って真姫ちゃんの一存で決められたんにゃ!
まだ医学生だった真姫ちゃんに!」
にこ「でもあんた、国家試験のとき大分真姫ちゃんにお世話になったんでしょ。
そんな真姫ちゃんが言うんだから間違いなかったんじゃない?」
凛「うう…その通りだったにゃ…。
真姫ちゃんのおかげで国試に受かり、就職後もちゃんと勉強出来て今看護師として一人前に働けてて…。
その上高待遇で雇ってもらってるにゃ…真姫ちゃんには一生頭が上がらないにゃ…」
にこ「今の凛は真姫ちゃんのおかげであるのね…。そんな真姫ちゃんも、今年度からやっと医者でしょ?」
凛「うん。やっと2年の研修が終わったって喜んでたよ。
まあ元々真姫ちゃん、研修医以上に動けてたけどね」
にこ「はあ…。気が滅入るわ」
凛「にこちゃん…。新しい職場は環境が違いすぎて大変だけど、続けさえすれば一人前になれるよ!凛もそうだったし!」
にこ「凛……」
凛「凛でも一人前になれたんだから大丈夫!
医療事務のことは分野が違いすぎてわかんないけど、手伝えることがあるなら手伝うにゃ!一緒にがんばろ!」
にこ「…そうね。ありがと」
明るくそう言ってくれる凛。いつも凛は、笑顔で私を元気付けてくれていた。でもそれでも、私の気が晴れることはない。
にこ(やっぱり嫌ね…。病院って)
アイドルとして失敗したことも、今の仕事が出来ないことも、真姫ちゃんや凛に差をつけられていることも、全部辛い。
でも私の気が晴れない原因は、この病院という存在にあった。
にこ「保険証と診察券お返しします。この紙に書かれている番号をお呼びしますので、座ってお待ちください」
にこっ☆と効果音がつきそうなくらいの満面の笑みを患者に向ける。
ふう…やっぱりレセプトより受付がいいわね。私の笑顔に、患者もデレデレ。
この宇宙No.1アイドルにこにーの可愛さに、患者はみんなイチコロよ!って、おじいちゃんしかいないんだけど。
「あのー…すみません」
にこ「はっ!すみません。診察券と保険証を…って、絵里?」
絵里「ふふっ…久しぶりね、にこ」
にこ「えっなんで絵里がここに?!」
脳内トリップしていたところにいきなり現れるもんだから心臓に悪い。
しかも、現れたのはもう何年も会っていない絵里。
会ったのは3年ぶりくらい?相変わらずモデル並みのスレンダーな身体をした、笑顔の絵里がそこにいた。
絵里「ふふっごめんなさい。ちょっと腰痛と肩こりが酷かっただけなんだけど、にこが整形外科の受付で働いてるって聞いて来ちゃった」
仕事終わり、私たちはご飯でも食べようということになり、居酒屋に来ていた。
お互い明日は休み。すでにジョッキは、4本ほど空になっていた。
にこ「はあ…大方凛に聞いたんでしょ。全く…プライバシーもなにもあったもんじゃないわね」
絵里「いいじゃない。私たち9人の間でくらい」
にこ「……まあ、そうね」
溜息をつきながらも、9人、という言葉に嬉しくなる。
10年経っても、私たちは変わらず仲間なんだ。そのことが、実感出来て。
絵里「で、どうなの?新しい仕事は」
にこ「どうもこうも、わけわかんないわよ。知らないことばっかりで」
絵里「当然よね…。私も今から転職しろ、なんて言われたらおうちに帰っちゃうわ…」
にこ「帰れるもんなら帰りたいわよ…。で、そっちはどうなの?音ノ木坂は」
新しいジョッキに手をつけながらそう聞く。
私たちの母校、音ノ木坂。その高校で、絵里は教師をやっていた。
にこ「うるさいわね!どーせバカよ!」
絵里「ふふっそんな怒らないでよ。にこは音ノ木坂で英雄よ。ラブライブ優勝校のアイドル研究部を作った、本物のアイドルとしてね」
にこ「……やめてよ」
絵里「にこ……」
絵里の言葉が、重く心にのしかかった。
英雄。……英雄。ラブライブを優勝したμ’sからの、唯一の本物のアイドル。
いや、本物のアイドル”だった”。
絵里「にこ。本当にあなたは、音ノ木坂の英雄よ。そして私たちμ’sの、自慢でもある。あなただけが本物のアイドルになれたんだから」
にこ「…でも、結局失敗したわ」
絵里「そんなことない!みんな、にこの活躍を知ってるわ!」
にこ「アイドル一発屋としてね。いや…μ’sとして知ってる人もいるかしら。所詮その程度よ」
絵里「にこ……」
にこ「結局私は、宇宙No.1アイドルにはなれなかったの。
μ’sのみんなは宇宙No.1アイドルにこにーなんて言葉、冗談としか思ってなかったと思うけど、私は本気でなる気でいたわ。
…本気だった、本当に。叶わなかったけどね」
絵里「にこ、私たちは…」
にこ「ごめんなさい。空気悪くしちゃったわね…。今日は帰るわ」
絵里「にこ…」
にこ「……また、会いましょ」
もう絵里の顔は、見れなかった。
私は、英雄なんかじゃないわよ、絵里。
私はただの、負け犬なの。
にこ「はあ…またレセプト…。月初めは地獄ね」
今日もまた、私はパソコンに向かってよくわからない点数をつけていた。
これはコストが取れる…でもこっちはコストが取れない…。その線引きがまだ曖昧でわかりにくい。
まだパソコンが扱えるのが救いね。同期の子は電子カルテの見方ですでに躓いてたから。
にこ「でもパソコンか使えるからってできるもんでもないわよぉ…」
真姫「苦戦してるわね。お疲れ様、にこちゃん」
にこ「真姫ちゃん!」
がっくりと項垂れていると颯爽と白衣を着た美女が現れる。
医事課でもファンが多く、周りは真姫ちゃんにうっとりとしていた。
こんな美人が医者でこの病院の跡取りなんだからねえ…。やんなっちゃうわ。
にこ「苦戦どころじゃないわよ、わけわかんないわ。ていうか、医事課に来て大丈夫なの?研修医脱却して忙しいんじゃない?」
真姫「そうでもないわよ。研修医のときとやることは変わらないもの。
私たちは患者を助ける。ただそれだけ。
まあ独立してのびのび出来るようにはなったわね」
にこ「相変わらず言うことがカッコよくて腹立つわね…」
真姫「ふふん、当然よ」
にこ「ほんと、変わらないわ。で?なんで医事課に?」
真姫「ちょっとにこちゃんを元気付けてあげようと思ってね。何もわからない職場に放り込んだ張本人だし」
にこ「なに言ってるの。元気も元気。今日もにっこり笑顔のにこにーよ」
真姫「嘘ばっかり」
真剣な表情で私を真っ直ぐ見つめる。
真姫「にこちゃん、遠慮しないで。にこちゃんはもっと、弱音を吐いていいのよ」
にこ「…そんなの、出来ないわ。真姫ちゃんには何もできない私を雇ってもらっただけで感謝してる」
真姫「それが遠慮だって言うのよ。
大体にこちゃんは何もできないっていうけど、そんなことないわよ。
出来ないって言いながらもミスしないよう丁寧に仕事してくれてるって医事課のベテランさんも言ってたし…。
それに、受付の対応も良いって。
私はにこちゃんがちゃんと仕事をこなせると思ったから雇った。それだけなんだから」
にこ「真姫ちゃん……」
真姫ちゃんの言葉に、少し涙腺が緩む。
真姫ちゃんは私を信じてくれてた。そのことが、嬉しくて。
真姫「……それに、にこちゃんを雇ってってパパにお願いしたのは、私のためでもあるんだから」
にこ「え?」
真姫「……にこちゃんと一緒に仕事したかったの。今までお互い忙しくて、なかなか会えなかったから……」
にこ「!」
顔を真っ赤にしながら、小声で真姫ちゃんは言う。そんな真姫ちゃんに、自然と笑みが零れた。
にこ「…まぁーったく!ほんと、真姫ちゃんはにこにーが大好きなんだから!」
真姫「うるさいわね!にこちゃんだって、私のこと大好きなくせに!」
にこ「あはは!もうなによこのやりとり!」
2人で周りも気にせず大笑いする。
いけないいけない、いくら真姫ちゃんが病院の跡取りでも、仕事の邪魔はダメよね。
にこ「ありがと、真姫ちゃん。心配してくれて」
真姫「…なに言ってるの。当然でしょ」
にこ「私は大丈夫よ。…確かにちょっと、真姫ちゃんや凛を病院で見かけると、落ち込んだりもするわ。アイドルがダメになった私と、差がありすぎてね」
真姫「そんなことないわ。実際病院にだって、にこちゃんのファンが来たりしてるじゃない」
にこ「そうね。それは嬉しいことだけど……でも、ファンに会いたくないのも事実。
挫折した私を見せたくないの」
真姫「にこちゃん…」
にこ「引退した時点で私の負けだわ。そしてアイドルという土俵から降りた私にはなにも残らなかった。
そしてみんなは変わらず仕事を続けて、確実にスキルアップしていってる。
そんな現状が不安で堪らないわ。ただ漠然と、不安だけがあるの」
私にはもう、目標というものがなくなってしまった。
何に向かって頑張ればいいかわからないの。
にこ「仕事が嫌だっていうわけじゃないわ。
わけわかんないけど、少しずつ出来るようになってるし。
でも…そうね。この不安は、私にも解決法がわからないから。
私をここに雇った張本人だからといって、そんな気負わなくてもいいのよ」
真姫「そう…。でも、相談くらいは乗らせてよね。
今の状況はにこちゃんの人生の分岐点で、まだにこちゃんはそれに対応出来ていないんだわ。
ただ、それだけよ。きっとその不安を払拭出来るときが必ずくるわ」
にこ「真姫ちゃん…ありがと」
真姫ちゃんなりのエールに、私の気持ちは少し上昇する。
全くやーね。最近ほんと、情緒不安定だわ。
真姫「まあとりあえず、にこちゃんには息抜きが必要ね。
今日の午後、楽しみにしておきなさい。とびっきりのゲストが来るわよ」
にこ「ゲスト?」
真姫ちゃんは明らかに悪巧みしてます!っていう顔で笑ってる。
ゲストって誰よ…?
真姫「ゲストもにこちゃんに会いたがってたしね。ま、会ってからのお楽しみということで」
そう言って、真姫ちゃんは手を振り医事課を後にした。
ゲスト…。誰だかわからないけど、嫌な予感しかしないわ…。
少し身震いをし、また仕事に戻った。
昼休み。
今日は凛が休みで、私は1人食堂にいた。
にこ「はあ…。凛が休みの日は静かね」
言いながらラーメンを啜る。
凛が休みの日は決まって、食堂のラーメンを食べていた。
凛の面影を追ってるようで、なんか嫌ね。
にこ(ここのラーメンおいしいんだもの。
でも凛と並んでは食べたくないのよね…なんかしゃくで)
そしてまたひと啜り。
うん、やっぱりおいしいわ。
にこ「はあ…しあわs「わしわしするでー!」ひええええ!?!」
ラーメンのおいしさに浸っているところに、胸に衝撃。
この声と、背中に当たるふかふかは……。
希「にこっち!久々やね!」
にこ「希!」
案の定、μ’sのセクハラ帝王、希だった。
希「はあ~にこっちのツッコミ久々や…やっぱにこっちのツッコミが1番しっくりくるわぁ…」
にこ「ちょっと聞いてんの!?」
希「あはは、ごめんごめん…聞いとるよ~。相変わらずキレキレのツッコミやな。
そして相変わらず胸もぺったんこやな」
にこ「はっ倒すわよ!?」
人が気にしてることを!
確かに高校の時から1mmも変わってないけど!!
希「いや~でもほんま久々やね。えりちと3人で会った時ぶり?」
にこ「そうね。3年ぶりくらいよ」
希「はー、うちらも歳とってしまったなあ」
にこ「ソレハイワナイデ…」
考えたらもう28なのよね…。
にっこにっこにー☆なんて言っちゃいけない歳になってきたわ…。
希「でもにこっちはほんま変わらんね!
まだJKでもいけるで!」
にこ「嬉しくないわよそれ!
あんたは順調に歳とってるわよね。
絵里もそうだけど、綺麗なお姉さんって感じ」
希「そう?のんたんのナイスバディーは健在やで~」
にこ「ムカつくけどその通りね…。
で?なんでここにいるのよ」
希の勢いに乗せられて本題が置いてけぼりだったわ。
なんでスーツ着込んだ希がここにいるのよ。
今度うちの会社の新薬をこの病院がつこてくれることになってな、その勉強会のために来てん」
にこ「ああ…そう言えば希は製薬会社の営業になったんだったわね。
朝真姫ちゃんがとびっきりのゲストが来るっていうのは、希だったの」
希「せやで~。とびっきりのゲスト、みんなの愛人のんたんや♪」
にこ「みんなの愛人てなによ…。橋本なんとか的な?」
希「お医者さんはおじさまが多いからね。
うち、おじさまキラー言われてておじさまの医者にモテモテなんやで?そんで業績もいちばん!
やからおじさまみんなの愛人のんたんやねん♪」
にこ「ああなるほど…。ていうか愛人とかいうとエロく聞こえるわよ。枕やってるんじゃないでしょーね?」
希「そんなんやるわけないやーん。ちょっと胸元開いて『うちのお薬使ってください♡』言うだけやで。
たまにお客さんが焼肉とかは奢ってくれるけど」
にこ「ホステスみたいね…。
まあいいんじゃない。天職っぽいわ」
希「にこっちそれ褒めとるー?
まあいっか。んじゃそろそろ勉強会の準備しに行かななあ」
んーと伸びをする希。
勉強会かあ…聞くだけでうんざりする響きだわ。
希「へ?なに言うてんの。にこっちも勉強会来るんやで」
にこ「え"っ」
なんで医療事務が薬の勉強会なんか行くのよ!
希「あ~にこっち初めての勉強会かあ。
薬の勉強会ってのは医者や看護師だけじゃなく、医療事務とか栄養士とかみーんな来るんやで。
どの職にも少なからず関わってくるからね。
保険の話しとかもするし」
にこ「うっ…なんか頭が」
希「あかんあかーん!仮病なんかあかんからね!
こののんたんの仕事っぷり、しっかり目に焼き付けるんやで!」
にこ「に、にこぉ☆」
希「………にこっち、うちらの歳知っとる?」
にこ「やめなさいよ!はあ…レセプト溜まってるのに…」
希「にこっち新人やし、周りの人が勉強会行けるよう調節してくれるよ。
そういうもんやからね。」
にこ「そういうもんなの……」
希「そうそう。やから新人のうちは勉強会がついて回るで~!
ま、真姫ちゃんが絶対引っ張ってくる!言うてたからどの道来ることになってたやろけどね」
にこ「逃れられない運命だったのね…」
希「まあうちがビシッとわかりやすく説明するから任せとき!
今日は糖尿病のお薬やで~。
んじゃまた後で!」
そう言って希は、嵐のように去っていった。
はあ、勉強会……憂鬱だわ。
希「んじゃ!勉強会の成功を祝って!
かんぱーい!」
にこ「かんぱーい……」
時は変わって午後7時。
仕事を終えた私と希は、希の希望で焼肉を食べに来ていた。
希「もうにこっち暗いよー?
テンション上げていかな!」
にこ「仕事終わりで疲れてるのよ!
今日は慣れない勉強会もあったし!」
希「でもうちの勉強会わかりやすかったやろー?
他の勉強会よりはマシなはずやで」
にこ「確かにね…」
希の言う通り、勉強会はとてもわかりやすかった。
データ結果よりも事例の方に重点を置いてくれていて、医療用語がまだよくわからない私でも理解出来る内容になっていた。
にこ(希も着実に、スキルアップしていってるのね…)
知らなかった希の仕事ぶりを目の当たりにして、また気が滅入ってくる。
希も今の職について6年。当然と言えば当然なんだけど、やっぱり自分と比べてしまっていた。
希「…にこっち、色んなもん、1人で抱えたらあかんよ」
にこ「希…」
希は、静かに語る。
ああ、なんだか懐かしいわ、この感じ。
希「うちも今はやーっと一人前になって、こうやって勉強会やって開けるようになってる。
でもそれは当然や。もううち7年目やもん。
うちやって仕事始めた時は悩んだり辞めたいって思った時もあったよ。
でも、続けてこれたから一人前になれた。
うちはただ、この仕事を続けただけなんよ」
にこ「…それ、凛も言ってたわ」
希「…そっか。凛ちゃんもそんなこと言えるようになったんやなあ」
にこ「わかってはいるのよ、そんなこと……」
希「うん…」
にこ「わかっては、いるんだけどね……」
長年の夢だったアイドルを失敗した失望感。
着実にスキルアップし、私より遥かに前に進んでるみんな。
そして、病院という職場。
私の気分が晴れない要因は、こんなにもある。
1人暮らし、寂しかった?」
希「え?いやあの頃はμ’sのみんながおったし…。
両親もたまに遊びに来てくれてたし、寂しくはなかったなあ」
にこ「そう…。やっぱり違うのね。
離れてても、親がいるいないじゃ」
希「…にこっち…?」
困惑する希。
そりゃあそうよね。出会ってから10年以上、こんな話したことなかったんだから。
希だけじゃなく、他のμ’sのメンバーにだって。
にこ「言ってなかったわよね。
私のパパ、私が中学の時に交通事故で死んだの」
なんで10年以上言わなかったことを、今更言ってるんだろう。
でも何故だか、希に聞いて欲しくなった。
希なら、私の気持ちを少しだけ、晴らしてくれると思ったから。
にこ「悲しかったわ。たまたまこころの予防接種でたまたま病院にいて、騒がしいなと思ったら自分のパパだったんだから」
あの時、私はこころと2人で病院にいた。
パパは事故な上かなりの重症で、逝ってしまうのもあっという間で。
死に目に会えたのは、私とこころだけだった。
『パパ、パパ、死なないで』って。
でも、私は何も言えなかったわ。
ただひたすら、ぼんやりパパがオペ室まで運ばれているのを見ていた」
その時の映像は、今でも鮮明に覚えていた。
全てがスローモーションに見えて、全てが現実だとは思えなかった。
全部全部、夢だと思ったの。
にこ「こんなはずない、パパが死ぬなんてありえない。
そんなことを思っていたら、パパはあっさりオペ室で息を引き取ったわ。
こころは大泣き。でも私は、泣けなかった」
希「にこっち……」
どんどんと希の顔が歪んでいく。
ああやめて、そんな顔しないで。
もう思い出したくないの。あの日のことなんて、忘れてしまいたいの。
にこ「今にも夢に見るわ。あの日のこと。
なんであの時、私は逃避しちゃったんだろうって。なんで、あの時声を掛けなかったんだろうって。
声を掛ければ、大きな声で死なないで!って言えば、少しは未来が変わったんじゃないかって」
真姫ちゃんが言ってた。
『家族とかその人にとって大切な人の声ってすごいのよ。
聞こえるはずがない状況でも本当に聞こえてるみたいにその声に反応して、状態が良くなったりするんだから』って。
病は気からって言葉があるけど、それは本当なんだなって思ったわ。実際臨床現場でそんんことが起こってるんだから。
私はきっとあの時、無意識に諦めたんだと思う。
心の根底でひどく冷静に、パパはもうダメだって思ってしまった。
馬鹿ね。中学生だったんだから、がむしゃらに声を掛ければよかったのに。
そうしたらパパは、奇跡を起こしてくれたかもしれないのに。
このまま医療事務を続けて、一人前になりたいって気持ちもあるわ。
でも、ダメなの。どうしても色んなこと思い出しちゃって。アイドルをやってた時みたいに、がむしゃらに頑張れないの。
そして私が動けないまま、みんなはどんどん前に進んでいく。
……私1人、取り残されたままだわ」
色んな感情がごちゃまぜで、苦しい。
ああもう、私はどこに向かえばいいんだろう。
アイドルやってた時はよかったな。
ただひたすら、ファンのみんなを笑顔に、って歌ったり踊ったり。
アイドルとして成功出来ていたならどれだけよかっただろう。
私の長年の夢、本物のアイドルに、実際になれたのに。
私の何がダメだったの?
希「……っち、にこっち!」
にこ「っ!…ごめん」
随分考え込んでいたようで、希が心配そうに覗き込んでいた。
…ああもう、アイドルへの未練は、捨てなきゃいけないのに。
希「にこっち、うちが思ってたよりもずっと、色んなことに悩んでたんやね。
もっと早く、話だけでも聞いてたらよかった…。ごめんね」
にこ「なっ…希が謝ることじゃないでしょ」
希「ううん。ほんまは、アイドル引退したって聞いたときにすぐ電話するべきやったんや。
わかってたはずやのに。あんなに努力して努力して、すっごく頑張ってたにこっちが、アイドル引退して、辛くないはずなかったのに」
にこ「希……」
希「その時はそっとしてあげるんが1番かなって思ってた。
…でも、そんなことなかったね。にこっち昔から、誰にも相談せずに溜め込むとこあったから」
全く、なんであんたがそんな顔するのよ…。
あんたがそんな顔、する必要ないのに。
希「その上アイドル引退だけじゃなく、他の悩みもいっぱい持ってたなんて…。
もう!電話の一本くらいしてくれてもいいのに!水臭いやん!」
にこ「へぶっ!」
そう言って希は、おしぼりを私に投げつけた。
そして見事、私の顔にクリーンヒット。
にこ「っちょっと!なにすんのよ!!」
希「水臭いにこっちにお仕置きや!
もっとうちに頼ってくれてもいいのに!
10年経った今でも、μ’sは仲間なんやから!」
にこ「希……」
希の言葉に、また涙が出そうだった。
やーね、朝も、真姫ちゃんにちょっと泣かされたのに。
最近涙腺が緩い。歳だから?
希「全く…確かににこっちの悩みはおっきすぎて、うちには絶対的なアドバイスなんか出来んよ。
それでも話を聞いて、ちょっとしたアドバイス言ったりも出来るん。
やからもっと頼ってな?」
そう微笑む希は、なんだか女神様に見えた。
ほんとに希は、μ’sの女神様なのかもね。
なんか最近、μ’sのメンバーに励まされてばっかだわ。
絵里に真姫ちゃん、凛にまで。
ちょっと情けない…」
希「ええんよ。仲間なんやから、情けない部分見せたって」
にこ「…ははっそうね」
希「そう、情けない部分見せたってええんや。
……やからね、にこっち。真姫ちゃんに仲介してもらった手前、今の仕事、辞めにくいと思うけど…。
でも、ほんまに辛かったら辞めてもええんよ?
理由が理由やし、真姫ちゃんは絶対わかってくれる。そういう選択肢も、うちはにこっちに持っていてほしいんよ」
にこ「……うん。きっと真姫ちゃんは、わかってくれると思うわ」
優しい希。私にちゃんと、逃げ道を作ってくれて。
にこ「でもね…やると決めたからには、もうちょっと頑張りたいの。
今ここで辞めちゃったら、アイドルも普通の職も挫折した、何もできない私になっちゃいそうで」
希「にこっち……」
にこ「でも、ありがとう、希。
少し、気が楽になったわ」
本当にありがとう、希。
その逃げ道を他人に言ってもらえただけで、私の気持ちは少し軽くなった。
辞めない、けど全力で仕事が出来ない。
こんな中途半端な私、最悪よね。そんな態度なら辞めなさい!って、私が他人なら言っちゃうかも。
でも、私は辞めない。これは、ただの我儘。
私はまだ、足掻いていたいの。
足掻いて、私の居場所を、見つけたいの。
にこ「ふあ…さすがに眠いわね」
欠伸を噛み殺しながら、私はぼんやり目的の地へと歩いていく。
今日は土曜日。待ちに待った休日だった。
最近の休日は大体昼過ぎまで寝て…ご飯食べてネットして…昼寝してまたご飯、みたいな怠惰な生活を送っていたんだけど、今日は珍しく朝早く起き、まだ午前10時だというのに外を歩いていた。
にこ「ったく…あの子は本当に朝早いわね」
規則正しくを体現したような彼女。
そんな彼女に会うのも、もうかれこれ5年ぶりくらい?
時の流れは本当に早い。あの頃は尚更、アイドル活動で忙しかったから。
にこ「っと、ここね…」
目当てのカフェを見つけ、中へと入る。
辺りを見渡すと、5年前から幾分大人びた彼女がいた。
にこ「いた。…久しぶりね、海未」
海未「こちらこそ、お久しぶりです、にこ」
にこりと微笑む彼女。
園田海未は、懐かしさを覚える笑顔で私を迎えてくれた。
なにか食べますか?」
にこ「いや、朝はあんまり食べないから。
すいません、ロイヤルミルクティーお願い」
海未「もう、ダメですよ。
朝食は1日の元気の源なんですから」
にこ「ったく…あんたも変わらないわね」
小言をいう海未に思わず笑みが溢れる。
懐かしい。いつだって海未は、μ’sの保護者のような存在だった。
海未「人間そう易々と変われるものではありませんよ。
……にこも、変わっていないようで、安心しました」
にこ「私だってそう簡単に変わらないわよ。
……で?今日はどうしたの?」
唐突な呼び出し。しかも、μ’s時代からほとんど2人で会っていなかった海未から。
…まあ、大体想像はつくんだけどね。
海未「…希から、にこの話を聞きまして。
すみません、貴重な休日に」
にこ「いいのよ。そんなこと気にしなくても。
それにしても…ほんとμ’s内ではプライバシーなんてあったもんじゃないわね」
海未「すみません…勝手に話を聞いてもいいものかと悩んだのですが…」
シュンと項垂れる海未。
全く、海未はクソ真面目なんだから。
にこ「別に怒ってないわよ。
絵里とも言ってたけど、μ’s内ではそんなの気にしてないし」
海未「そうですか…ホッとしました。
触れられたくない部分かと思いまして」
にこ「まあ無闇に触れてほしくはないわね…。
海未は希から、どう聞いてるの?」
海未「…にこがアイドルを引退して、不安定になっていると。
私が聞いたのはそれだけです」
にこ「そう…」
やっぱりパパのことは伏せておいてくれてるみたい。
まあ希のことだから、そこは触れてないと思ってたけど。
でも希から話を聞いて、どうしても話したいことがあったんです。だから今回、連絡させてもらいました」
にこ「そう。話したいことって?」
海未「話す前に、ちょっと一緒にしてほしいことがあるんですが…いいですか?」
にこ「え?まあいいけど…」
海未が私とやりたいことがあるなんて、出会って初めて言われた気がする。
なんだか微妙に、嫌な予感がするんだけど…。
にこ「で、何したいの?」
海未「そんなに難しいことじゃありませんよ。
山登りです」
にこ「なんだ、そんなこと。
………ん?」
んん?
海未は今、なんて言った?
海未「おお!にこがそんなにあっさり了承してくれるとは思いませんでした、嬉しいです!」
にこ「え?いや、ちょっと待って……」
海未「にこにも山に対する思いが多少なりともあったのですね!
では早速行きましょう!山頂アタックです!」
にこ「ちょっと、人の話聞きなさいよ!
山に対する思いなんてないし!」
海未「さあ!青春の山を登りましょう!」
にこ「全く話聞いてないし!ああもう!
ダレカタスケテー!!」
………とは言っても、誰かが助けてくれるわけでもなく。
私はそのまま、海未が言う青春の山とやらに連れて行かれたのだった。
にこ「はぁ…はぁ……ぅおえっ………」
あかん…あかんやつだわこれ……。
にこ「ちょ、ちょっと…待って……、海未…足がついてかない……」
海未「情けないですよにこ!身体が鈍りすぎです!」
にこ「そんなこと言ったって…今はパソコン向かってばっかだし……休みは寝てばっかで……」
海未「いけませんよ、そんな怠惰な生活を送っていては!
たとえ事務職であろうと、日々の鍛錬を怠ってはいけません!」
言いながら、海未は私をズルズルと引っ張って山を登り続ける。
登山を始めて2時間。海未は別段疲れた様子もなく、ズンズンと歩みを進めていた。
確かに私が鈍ってるってのもある。
でも、そうだとしてもこの子の体力はなんなのよ…!
にこ「た、体力おばけ……」
海未「なっ、誰がおばけですか!
私は生身の人間です!」
にこ「そういうことじゃないわよ……」
もう突っ込む気も起きない。
山頂は…山頂はまだなの……。
海未「ほら、にこ。あそこを見てください」
フラフラになりながら、海未の指差した方を見上げる。
そこには、オレンジ色の夕日が見え隠れしていた。
にこ「……綺麗ね」
海未「…そうですね。山頂はもっと綺麗ですよ」
さっきまでは本当にぶっ倒れそうで、周りなんて見れていなかった。
少し上を見上げれば、こんなに綺麗な景色が広がっていたなんて。
にこ「……頑張るわ。ここまで来たんだものね」
海未「ええ、頑張りましょう」
気持ちを入れ替え、山頂に向かって歩みを進める。
とは言っても、体力が戻ってくるわけでもなく。
そのまま海未に引っ張ってもらいながら、残りの山道を私は登りきった。
***
にこ「ぜぇっ…ぜえっ……もうだめ……このまま寝る…」
海未「何言ってるんですか!折角登りきったというのに!」
にこ「いや…ほんとだめ……景色見る余裕もない……立てない……」
海未「全く……ほら、あそこのベンチに座りましょう」
そう言って海未は私を抱き抱えてベンチに向かう。
本当この子、まごうことなく体力おばけだわ……。
にこ「なっ…失礼な!太ってないわよ!
……3kgくらいしか」
海未「やっぱり太ったんじゃないですか…。
たるみ過ぎですよ。気持ちも身体も」
にこ「うるさいわね!身体はたるんでないわよ!!」
気持ちはともかく、身体もってなによ!
海未「ふふっ…それだけ軽口を叩けているなた大丈夫ですね。
ほら、これが山頂からの景色ですよ」
にこ「っ……」
ベンチに腰掛け、山頂から街を見下ろす。
街は、夕焼けに照らされてキラキラと輝いていた。
にこ「…綺麗。さっきよりもずっと」
海未「でしょう?
この景色は、山の上からでないと見ることはできません。
諦めず山を登りきった者だけの特権なんですよ、この景色は」
だから登山はやめられないんです。
そう、海未は微笑む。
その微笑みも夕日に照らされて、いつもよりも綺麗に見えた。
にこ「…そうね。
移動で3時間、登山で2時間もかけた甲斐があったわ。
フラフラだったけど、ちゃんと最後まで登りきれたし」
海未「そう思ってもらえたならよかったです。
私の目標も達成することが出来ました」
にこ「目標?」
海未「にこが山を登りきった達成感を味わえるよう、サポートすることです」
何気ない言葉なのに、なんだか随分聞いたことない言葉のように思えた。
達成感。μ’sのとき、ライブの度に感じていたこと。
頑張って頑張って頑張って、その頑張りが実って、そして得られる最高の気持ち。
海未「そうです。μ’s時代に比べれば小さな小さな達成感かもしれませんが、久々ではないですか?達成感を味わうのは」
にこ「……そりゃあ、達成感とは無縁な生活してたからね」
アイドル時代は、頑張っても努力は実らなかった。
今の仕事では、達成感を味わえるほど頑張っていなかった。
……達成感なんて、もうとっくにわすれちゃったわ。
海未「…少し、私の昔話をしていいですか?
にこが卒業して、アイドルになった頃の話です」
ぼんやりしていると、静かに海未は語り出した。
私の知らない、海未の過去を。
2年生ではμ’sとしてアイドル活動に没頭していましたが、μ’sも解散し、私達は受験に重きを置きました。
そして私は、成績も上位でしたし、プライドもあったんでしょう。日本でもっとも優秀だと言われるT大を志望していました」
そこで海未は一息置く。
その横顔は、なんだか呆れたような、困ったような。そんな、不思議な表情だった。
海未「私は来る日も来る日も勉強しました。
アイドル活動、弓道部の活動、生徒会活動…
どれも疎かにすることなく、しかし勉強を優先し、充実した毎日を送れていたと思います。
努力しました、本当に。努力という言葉に恥じないほどには」
にこ「……それで、どうだったの?」
恐る恐る聞いてみる。
話の流れで、結果はわかってしまったけれど。
海未「…結果は、ダメでした。二次試験で見事に不合格。
そして私は、浪人生になりました」
にこ「そうだったの……」
海未「ひどく落ち込みましたよ。
穂乃果やことりは失敗することなく進学していって、私だけ、取り残された気分でした。
ずっと一緒だったのに、私を置いて、2人とも進んでしまったと」
にこ「…!」
今の、私と一緒…!
海未の言葉にドキリとし、強くそう思った。
進学に失敗して、取り残された海未。
アイドル活動に失敗して、取り残された私。
私達の境遇は、とても似ていて。
海未「…にこ。今のあなたも、同じなんじゃないですか?」
にこ「海未…」
他のμ’sのメンバーとは違う、そう思った。
海未は本当の意味で、私を理解してくれるかもしれないと。
大きな目標の失敗、挫折。そして周りから置いていかれる孤独感…。
私が受験に失敗した時と同じ場所にいると、そう思ったんです。
そうしたら居ても立っても居られず…今日にこを誘いました。
どうしても、聞いてほしい話があったのです」
海未は真剣に私と向き合い、そう言った。
今の私と同じ場所にいた海未。
文武両道で、挫折を味わったことのないような海未が、この場所で何を思ったのか。
海未「本当に受験失敗後は、絶望感しかありませんでした。
私は今までこんな大きな失敗をしたことがなく、どうしていいのかわからなかったのです。
たくさん泣きましたよ。あれだけ努力したのに、私の何がダメだったのかと。
でも、受験ではまた1年経てばチャンスがやってきます。
泣いてばかりいた私でしたが、ある時開き直りました。
去年は受験前半、アイドル活動、弓道部、生徒会活動…そんな色々な活動に追われていました。
そのせいで勉強への時間が削られ、落ちたのだと。この1年勉強だけに時間を費やせば、きっと合格出来ると。
そう考えて、私は必死に勉強しました。来る日も来る日も、1日14、5時間は勉強していましたね。あんなに勉強したのは人生で初めてだと思います」
にこ「うわ…すごいわね」
でも海未はそこまでしてでも、目標の大学に行きたかったのね。
私がアイドルとして売れたくて、がむしゃらに頑張っていた毎日と同じ。
きっと海未は、勉強するしかなかったんだわ。それ以外、努力する方法がわからなかったのね。
にこ(……全く、どこまでも同じね)
あの時は、歌やダンス、ファンへのサービス…アイドルとして出来る活動を全力でやるしかなかった。
ただただそうやって、努力するしかなかったの。
それ以外、私が出来ることが、見つからなかったの。
海未「毎日の勉強は、辛く長いものでした。
本当にこのまま勉強していれば受かるのかという疑問、そして不安…。色々な感情がありました。
でもそういった負の感情を払拭するのも、勉強しかなかったんです。
だから私はただひたすら勉強しました。
そしてセンター試験を迎え…私は上々の結果で、二次試験を迎えることが出来たのです」
にこ「……それで、どうだったの?」
ドキドキしながら、結果を促す。
そういえば私、海未の大学知らないのよね…。
にこじゃ絶対行けない大学よって、前絵里に教えてもらったんだけど。
海未「……結果は、そうですね。
にこと同じです」
にこ「私と…同じ?」
海未「ええ。にこと私は本当に、よく似ています」
そう言って海未は微笑む。
その笑顔にはもう、後悔なんてこれっぽっちもないようだった。
海未「はい。結局その年も私は落ち、私大のK大に進学しました。
その大学も難関校ではあったので、満足はしていますよ」
にこ「満足って…そうかもしれないけど…そんなに頑張ってダメだったのに、辛くなかったの?」
どうしてそんなにも清々しく振る舞えるのか。
アイドルに未練タラタラの私には理解出来なかった。
海未「そうですね…。辛くなかったと言えば嘘になりますけど、諦めはつきました。
実は私、二次試験が終わった瞬間に確信してたんですよ。
ああ、落ちたなって」
にこ「試験、出来なかったの?」
海未「ええ。苦手な数学に手も足も出ずでした」
海未は笑っていた。所詮過去のことだとでも言うように。
にこ(海未は完全に、乗り越えられてるのね…。
羨ましい)
私も乗り越えたい。アイドルなんてバカな夢、もう忘れたいのよ。
海未「まあ、そうと言えばそうなんですが…。
その年の数学、私の苦手な分野の問題ばかり出たんです。
それで全然出来なくて…それで思いました。
運が、なかったのだと」
にこ「…運?」
努力じゃなく、運なの?
海未「ええ。私はもうこれ以上頑張れないくらいに努力したんです。
でも、苦手な問題ばかりが出て、そして落ちた。
ここまできたらもう、運がなかったんだなと。そうとしか、思えなかったんです」
にこ「運……ただ、運がなかった……」
海未「そうです。ただ運がなかったんですよ。
私も、そしてにこも」
にこ「っ…!」
名前を呼ばれ、ドキリとした。
ドクドク、心臓がうるさい。
私が無意識に気付こうとしなかったことを気付こうとしている。
成功には努力はもちろん必要不可欠ですが、数パーセントの運も、必要不可欠なのだと。
私たちはラブライブを優勝しました。
あの頃私たちはたくさん練習をしていましたし、優勝に値する努力はしてきたと思います。でもそれはきっと、A-RISEも同じだった。
だけどどうして、A-RISEに私たちは勝てたのか。
それは、μ’s9人誰1人欠けることなく揃ったからだと、私は思っています。
9人が揃った奇跡という運が、ラブライブ優勝を呼び込んでくれたのだと」
にこ「っぅ……!」
ぶわり、涙が溢れた。
ぼろぼろ、涙は止めどなく流れてくる。
海未「…にこ、プロ意識の高いあなたのことです。アイドルとして成功するために、たくさん努力したんでしょう。
でも、失敗してしまった。自分の何がダメだったのかと、責めてしまったと思います。
でも、違うんですよ。にこの努力が足りなかったわけじゃない。ただほんの少し、運が足りなかっただけなんです」
にこ「っ私……私…!」
海未「運がなかったと、諦めるのも辛いものです。
それを受け入れたくないという気持ちもわかります。
……でも、どうやっても、私たちは進まなきゃならないんですよ。時間は、止まってはくれないのです」
たかが運、されど運。
そんなささいなことでアイドルとして成功出来ないなんて悔しい、と気付かない振りをしてた。
でも、ダメなのね。
気付かなきゃ、私はきっと乗り越えられなかったのね。
海未「にこ。少し立ち止まったとしても、長い人生、また挽回出来ます。
現に私も受験で遠回りをしましたが、家業を継ぎ、穂乃果やことりと同じよう働けています。
にこもきっと、私と同じように挽回出来ますよ」
だって私たちは、本当によく似ているのですから。
そう言って笑う海未にまた涙が溢れた。
なんだろう、この感情。
ずっとウジウジして、立ち止まっていた私。
だけど一歩、動けた気がした。
海未が背中を、押してくれたおかげで。
にこ「っ私、ほんとはちょっと気付いてた…
でも、それが悔しくて、気付かない振りして……
それでずっと、ウジウジ悩んでた…引退決めた時にもう、わかってたはずなのに…!」
海未「…はい」
にこ「アイドルで成功するって夢、諦めきれなかった…!
でも、そうよね…もういい加減、進まなきゃ」
海未「にこなら大丈夫ですよ。
この山は初心者用の低めの山です。
アイドルとして成功するという夢は非常に高い山でしたが、医療事務としての山はこのくらいだと思います。
この山を登り切れたにこならきっと大丈夫。
焦らずゆっくり進みましょう。
辛くなったら私たちμ’sがまた、助けますから」
にこ「っ…海未、ありがとう…!」
それから私は、今までの思いを吐き出すかのように泣き続けた。
泣き終わったあと目は痛いわ気はずかしいわだったけど、海未はただ微笑んでくれて。
とてもとても、清々しい気分だった。
次の日のお昼休み。
私はいつものように凛と食堂にいた。
にこ「ぃたたた……ダメだわ…やっぱ筋肉痛が……」
昨日の海未との山頂アタック。
海未に色んな感情を吐露して、とても清々しい気分になり、人生の1つの分岐点となった。
山頂まで登りきり、達成感に満ち溢れていた私。
まだその時の私は気付いていなかった。本当の、山頂アタックの恐ろしさに。
凛「まさかにこちゃんまで山頂アタックの餌食になるとは思わなかったにゃ~…合宿のときのあの辛さは忘れないにゃ……」
合宿時山頂アタックの餌食となった凛が震え上がる。
それほどまでに恐ろしいのよ、あの山頂アタックは…。
にこ「あれは忘れられないわね……。
山頂まで登りきったら終わりだと思ってたわ。
まさか下りがあんなにきついなんて……」
凛「ほんとだよ………凛もう絶対絶対登山なんかしないにゃ……」
そう。山頂アタックの本当の恐ろしさは下りだった。
山頂まではまだいい。山頂まで登りきるという目標があるし、スタートはHP満タン。
でも、下りはそうじゃない。ほぼHP0からのスタートで、下りるだけだから登りよりも楽かと思いきや、びっくりするほど膝にくる。
山を下りきった私の足はほんとに産まれたての子鹿のようだったわ……。
私がもし看護師だったら確実に仕事になってないわね」
凛「だろーね。まあ凛はICUだからそんなに動き回らなくてすむけど、病棟だったら走り回ってる人とかいるもんなあ」
にこ「だよねー。か弱いにこには絶対無理ー☆」
凛「バカにされた気分にゃ…。
でもにこちゃん、疲れてる割には元気だよね。なんか吹っ切れた感じ?」
にこ「そう?そんなことないにこ☆」
凛「ほら、軽口叩けるとことか!
前は仕事中溜息ばっかだったのに!」
にこ「んーまあ、そうかもね」
凛にそう軽く笑ってやる。
さすがμ’sの仲間。やっぱり、すぐ気付いちゃうわね。
凛「なにそれ!何があったか気になるにゃ!」
にこ「大したことじゃないわよ。
でもまあ…そうね。
心配かけたけど、もう大丈夫よ。
色々ありがとう、凛」
凛「にこちゃん……」
その言葉を聞いて、軽く涙目になる凛。
バカね、泣くことないのに。
凛「よかったにゃあ……。
にこちゃん、医療事務になってから暗い顔ばっかりだったから……」
にこ「何泣きそうになってんのよ、大袈裟ね。
私がもう大丈夫だって言ってるんだから、あんたは私と一緒に笑ってなさい」
凛「…!うん、そうだね!」
にこ「ちょ、危ないわよ!」
にこちゃーん!と勢いよく抱きついてくる凛。
いきなり抱きつかないでよ!と悪態をつきながらも、私は自然と笑っていた。
決めたにゃ!今日は仕事終わったら一緒にラーメン行こう!凛が奢っちゃうよ!」
にこ「全く、何テンション上がってんのよ……。
まあ、有り難くご馳走になるけど?」
凛「へへ。やっぱにこちゃんは素直じゃないにゃ!
っと…ピッチなってる」
そんな約束を取り付けた直後、凛の持っているピッチが無機質な音を上げた。
凛は急いで電話に出る。
凛「はい、星空です。
……はい…はい、わかりました。15分後ですね?
はい、すぐ戻ります。失礼します」
にこ「…なに?急患?」
凛「うん、そうみたい…。
ごめん、凛行かなきゃ。仕事終わったら連絡するね!」
にこ「わかったわ。じゃああとでね」
凛、今日は救急外来にいるって言ってたわね…。
そんなことを思いながら、残りのハンバーグを頬張る。
そしてまた昼も頑張ろうと、自分に喝を入れた。
にこ「う~。先生見つからないわね…。
今日中にこの書類書いてもらわなきゃいけないのに~…」
昼休憩後、私は書類にサインを貰うべく、ある先生を探し回っていた。
先生って色んなとこ歩き回ってることが多いから、ほんと捕まらないのよね。
溜息をつきながら、先生のいそうな場所に目星をつける。
にこ「まだ病棟回ってんのかしら…。
とりあえず整形外科に……」
凛「血圧52/37!脈圧低いです!」
真姫「点滴最大で落として!輸血準備の連絡も!」
凛「わかりました!」
大きな、凛と真姫ちゃんの声が聞こえた。
その声音で、大変な状況だってことがわかる。
にこ「なに…?っ!」
驚いて振り返ると、そこには。
「おとうさん……」
血塗れで重症の患者と、震えながら顔を真っ青にした小さな女の子がいた。
外傷が酷く、意識はなし。
小さな女の子は震えた手で、傷だらけのヘルメットを抱えていた。
真姫「オペ室準備出来てる!?」
凛「大丈夫です!このまま直行で!」
真姫「血圧上がってこないわね…急いで!」
真姫ちゃんたちは忙しなく患者の対応をしていた。
私は邪魔にならないよう端に寄り、ぼんやりと向かってくる喧騒を見つめる。
患者は状況的にバイク事故のようだった。
しかも、かなりの重症。
医療のことはほとんどわからないけれど、やばいってわかる。
そのくらい、お腹の傷からの出血が多かった。
にこ(こ、わい)
こわい、こわい。
恐怖という感情だけが私を支配する。
だって、あまりに似すぎているの。
パパが死んだ、あの時と。
段々と向かってくる喧騒が恐ろしかった。
いや、来ないで。
見せないでよ、そんな状況。
いやなの、もう、忘れたいの。
思い出したくない。
後悔したって、もうおそいの。
もう、おそいの。
こうかいしても、こうかいしても。
ぱぱはかえって、こないんだから。
にこ「っ!」
遠退いていた意識が、凛の声によって引き戻される。
気付けばもう、喧騒はもう目の前に迫っていた。
にこ(凛…!)
凛はモニターを確認しつつ、大声で患者に呼び掛けていた。
なんとか、意識が戻るようにと。
にこ(声…やっぱり声を…!)
看護師である凛が実際に呼び掛けているところを見て、やっぱり声をかけることが重要なんだと改めて思った。
声が届いて、この状況が変わる可能性だって…!
にこ(っ……わかったところで、どうするのよ)
私が声を掛けたところで、本当に、この患者に声が届くの?
会ったこともない赤の他人の私の声で?
にこ(そんなこと、あるとは思えないっ……)
目の前を、喧騒が通って行く。
やっぱり私は声を掛けられない。
あの日のように、私はただ、見ているだけ……。
その時ふと、ヘルメットを抱えた女の子が目に入った。
あの日の、私と同じ。
目の前の現実が理解出来なくて、怖くて…。
声が出ない。
声、きっとかけたほうがいいのに。
パパ、死なないで、って。家族の、私が…!
にこ「声をかけなさい!!」
「っ…!」
にこ「家族のあんたが、声をかけるの!!
そしたら、そしたらきっと…!
あんたのお父さんに、絶対声が届くんだから!!」
凛「にこちゃん…!」
真姫「っ…!」
気が付いたら、叫んでいた。
女の子も、凛も、真姫ちゃんも、みんなびっくりしてる。
そうよね、医療事務である私が口を出すことじゃないわ。
私は、こんなこと言っていい立場じゃない。
でも、嫌だったの。
この子に、私と同じ後悔してほしくなかったの…!
にこ「っ!」
「おとうさ、ん。おとうさん!おとうさん!やだよお、しなないで!!」
震えるだけだった女の子の瞳から、ボロボロと涙が溢れる。
そして、堰を切ったように大きな声で叫んだ。
おとうさん、と。
にこ「…ほら、ちゃんと言えるじゃない……」
喧騒は、そのまま過ぎ去っていく。
その姿が見えなくなるまで、私の耳には最後まで、確かにあの女の子の声が届いた。
にこ(……よかった。)
あの女の子と、昔の私が重なった。
あの日、パパに声を掛けられなかった私。
でも、あの日の私がいたことで、あの女の子は声を掛けることが出来た。
後悔は完全に消えることはないけれど、あの日の私にも意味がある。そう思えた。
にこ「あ……先生、探さなきゃ…」
そう思うのに、足が動かない。
そしてぽろりと、私の瞳から涙が溢れた。
にこ「凛、遅いわね…。急患入ったし、やっぱ残業かしら…」
仕事終わり、私は中庭のベンチで凛を待っていた。
ぼんやり夕陽を眺めながら、ここ最近のことを思い浮かべる。
ここ最近、色々なことがあった。本当に、μ’sのみんなに支えられて…。
にこ(私、少しは進めたかしら…。)
アイドルを辞めて、停滞していた私から。
少しは、変われた?
真姫「お疲れ様、にこちゃん」
にこ「真姫ちゃん…!」
後ろから声を掛けられ、振り向くとそこにはオペ着のままの真姫ちゃんがいた。
その表情は少し疲弊している。
にこ「こんなところにいて大丈夫なの?オペは?」
真姫「終わったわ。今はICUで経過観察中。
心配しなくても助かったわよ、あの事故の人」
にこ「っ!そう…」
私から見てもヤバそうだったから、どうなってるか不安だったけど…助かってよかった。
パパと同じ境遇の人。パパと同じようになってほしくなかったの。
私、勝手に声かけちゃって…声を掛ける立場じゃないのに……」
パパと同じようになってほしくなかった。
だから咄嗟に、私と同じだったあの子に声を掛けてしまった。それも偉そうに。
私、言える立場じゃないのにね。
真姫「…なに言ってるの。間違いなく、あの声掛けはよかったわよ。
あの患者は助かったけど、本当に助かるかは五分だった。
あの患者が助かったのは、様々な要因があってのこと。
その要因の中に、娘の声掛けは確実に入っていたわ。それを促した、にこちゃんの声掛けも勿論。
自信を持っていいわ。にこちゃんはあの患者の治療に携わったのよ。
にこちゃんも、あの患者の命を救った1人なの」
にこ「そんな…私、そんな大それたこと……」
してないわ。
ただ私は、私と同じようになってほしくないって…私と同じような後悔してほしくないって、ただ、それだけで。
全く…スクールアイドルやってた頃は過大評価ばっかりだったのに、今では過小評価しすぎよ。
実際、あの娘も…」
「あ、いた!にこちゃんだ!!」
そう名前を叫ばれ、真姫ちゃんと2人驚きながら振り返る。
するとそこには、私が声をかけた、あの女の子が立っていた。
真姫「あなた…!いいの?お父さんについてなくて」
「もうお父さん大丈夫だから、にこちゃん探してきていいよって星空さんが!
見つかってよかったー」
にこ「あんた…なんで私の名前…?」
その女の子は名乗った覚えのない私の名前を連呼していた。
名札を見たのかもしれないけど、名札にも名字しか書かれていないはず。
どうして、この子は私を知ってるの?
「知ってるよ!私ファンだったんだ~アイドルの矢澤にこちゃん!」
にこ「っ!!」
「会えて嬉しい!握手してもらっていいですか?」
にこ「え、あ……えっと…いい、わよ」
少し震えながら、私はその女の子と握手した。
アイドルの、矢澤にことして。
「やったー!まさかこんなとこでにこちゃんに会えるなんて!
わたし、初めて買ったCDがにこちゃんの曲なんだ~」
にこ「そう、なの……ありがとう」
「それで初めて行ったライブもにこちゃんのライブで~…にこちゃんのこと、大好きだったの!
だから、アイドル辞めちゃってかなしかったんだけど…」
にこ「……」
ファンの直の声を聞いて、どんどん気持ちが沈んでいく。
そう、引退間近まで応援してくれるファンは少なからずいた。
でも私は続けていく自信がなくて…ファンを裏切るような形で、アイドルを辞めてしまった。
それもずっと、心残りで……。
「でも、にこちゃんはやっぱりわたしのスーパーアイドルだった!」
にこ「!!」
その言葉に、弾かれたように頭を上げる。
そして目の前に立っていた女の子は、溢れんばかりの笑顔だった。
きっとわたし、にこちゃんが声掛けてくれなかったら、なにも言えないままだったと思う。
最初はね、パパに必死でにこちゃんだってわからなかったんだけど、後からあの人にこちゃんそっくりだなあって…。
そう言ったら、星空さんって人があの人がにこちゃんだよって教えてくれて。
やっぱりにこちゃんは、わたしが辛いときも助けてくれる、笑顔にしてくれるスーパーアイドルだなって思ったの!」
真姫「にこちゃん……」
私は、何も言えなかった。
笑顔の女の子に、笑いかけることすらも出来なくて。
涙が溢れそうになるのを、必死に堪えてた。
アイドルはファンに、涙を見せちゃいけないから。
にこ(私、アイドルになってなにも出来なかったと思ってた。
でも…出来てるじゃない。
アイドルとして、1番やりたかったこと)
ファンを笑顔にさせること。
私ちゃんと、出来てたんだわ。
ありがとう、本当に…」
この子のおかげで、過去の後悔も、アイドルとしての後悔も、拭い去ることが出来た。
感謝してもしきれないわ。
「なんでにこちゃんがありがとうなの?
へんなのー」
真姫「ふふっ…にこちゃんはね、元々変なのよ」
にこ「うるさいわね!変じゃないわよ!
……変じゃないにこ☆」
「わー!にこちゃんだー!」
真姫「……」
ファンの前だと慌てて取り繕うと、女の子は大喜びで、真姫ちゃんは呆れた表情をしていた。
でも、呆れていたけど、笑っていて。
私をここに雇ってくれて。
いつも私を気にかけてくれて。
大好きよ、真姫ちゃん。
「にこちゃん、あれもやって!
にっこにっこにー!」
にこ「んもう、しょーがないわねー!
んじゃあ、真姫ちゃんもご一緒に!」
真姫「う”ぇえ!?私も!?」
みんなのおかげで私、確実に変わることが出来た。
もう、くよくよなんかしないわ。
真っ直ぐ前を向いて、生きてやるんだから!
「「「にっこにっこにー!」」」
-END-
なんとなく書き始めた話でしたが書ききれてよかったです。
忙しくて中々書けず1回スレ落ちしましたが…。
見てくださる方がいれば幸いです。
もうひとつ書きたいお話があるので、そちらで活躍出来ればなあと思います。
では長々とありがとうございました。
のんたん大好きです。
感動した
1人で頑張って結果が出なくて腐ってる時でも、周りの人の優しさをちゃんと受け取って進んでいけるにこちゃんの強さが綺麗でした。好きです次のお話も期待してます!
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