【ラブライブ!】真姫「崩れてしまった当たり前の幸せは自分で組み立て直す」
- 2020.04.08
- SS

私はそれを身を持って知ることになった。
スクールアイドル活動に汗を流した思い出の場所音ノ木坂を卒業後、私は
現役で都内の大学医学部に合格した。大学進学後、高校在学中より頻度
は減ったけれどμ’sのメンバーと定期的に会うことは欠かさなかった。むし
ろ欠かさせてくれなかったというのが正確かもしれない。
大学2年の秋季定期総会は西調布のとあるとんかつ屋で開かれた。
主催者は希である。
希「カンパーイ!」
えりにこりんぱなことほのうみ「カンパーイ!!」
真姫「乾杯」
希「今回ごめんなぁ。会場決まるのが遅なって」
穂乃果「いいよいいよ!ここのとんかつすごく美味しいってTwitterで教えてもらったんだ!!」
そんな感じで皆思い出話なんかに花が咲く。
希「皆の近況報告!!」
定期総会では必ず近況を報告することになっている。1番目に報告する人は
いつも主催者のさじ加減で決まる。
希「今回の近況報告、1番目は・・・にこっちや!」
にこ「ふふん!今回は皆をびっくりさせるような報告をしてやるわよ!!」
にこ「なんと・・・私と真姫が結婚することになりました!!」
それを聞いた瞬間、私は飲んでいたウーロン茶を吹き出しそうになった。
いつそんな話した?プロポーズされた?そもそもにこちゃんも私も女性よ?
女性同士で結婚なんて・・・と色々なことが脳内を巡る
真姫「ちょっとにこちゃん、あんた酔ってるの!?」
にこ「シラフだけど?」
飲もうとせず、エリーに「たまにはビールでも飲んでリラックスしな」と田中亮一
の声真似で言われても頑なに拒否していた。まさかエリーが玄田版コマンドー
を見ているとは思わなかったけど。
真姫「そうじゃなくて!私何も聞いてないんだけど!?どうしてにこちゃんと私が
結婚することになってるの!?」
にこ「そりゃ今初めて言ったからよ。サプライズよ、サ・プ・ラ・イ・ズ」
真姫「こんなのサプライズじゃないわよ!それに!プロポーズなら・・・
その・・・もっと、ロマンチックに・・・」
希「そうやでにこっち。プロポーズは二人きりの西調布の駅でしてな」
にこ「ぬぅわぁんで西調布の駅なのよ!もっと別の場所考えてあるわよ!!」
その店の名物だという味噌ロースカツは穂乃果にあげた。目の輝かせ方が穂乃
果は完全に犬だった。その目を見て私が高校2年の時の穂乃果とのある出来事
を思い出してしまった。自戒
そして2時間ほどで秋季定期総会はお開きになった。私はにこちゃんと一緒に
代々木公園へ向かう。代々木へ向かう電車内で色々問いただそうとしたけど、
にこちゃんからは「全部は代々木公園に着いてから」としか返ってこなかった
真姫「さっきのは一体どういうこと?」
にこ「私は本気よ。最近仕事も安定して入るようになったし、真姫一人ぐらいなら
十分養えるわよ。蓄えもあるし」
真姫「・・・本当に、私でいいの?」
嘘で本心を隠して、高飛車に振る舞って。でもμ’sとして一緒に活動した1年間、
あんたは変わった。私の前で本心を隠さなくなった。それで決めたわ。私はスー
パーアイドルにこにーである前に西木野真姫のお嫁さんになるって」
真姫「・・・」
にこ「早く返事しなさいよ。恥ずかしいじゃない」
真姫「・・・ありがとう。その思い、受け取ったわ。でも」
にこ「でも?」
真姫「式を挙げるのは私が医師になってからにして。それまで待っててくれる?」
にこ「分かった。その日が来るまで、待つわ」
大丈夫としか返ってこなかった。
その日はにこちゃんとそう言って別れて一人家路についた。にこちゃんと私じゃ住ん
でいる家の方角が反対になるからしょうがなかった。
冬季定期総会もμ’s全員が揃った。今回の会場は都区内のちょっとおしゃれな
レストラン。主催者は絵里だった
希「そいで、にこっちとの関係はどうなったん?」
真姫「別に。進展はしてないわよ」
希「ふぅん。もしかして断ったん?」
真姫「違うわよ。ただ、今はその時じゃないって・・・」
希「それを世間様ではプロポーズを断ったって言うんやで」
真姫「希の言ってる世間と、私の思う世間は違うかもしれないじゃない」
希「何年ぶりかなぁ真姫ちゃんのことわしわしするの」
真姫「ちょっと希ィ!何する気!?」
希「何って、真姫ちゃんは忘れたんかな?・・・こういうことや!」
真姫「ゔぇェェェぇえ!?」
その日は希に散々胸を揉みしだかれた。本音を言えばにこちゃんに揉んで欲しかった
にこ「何か用?あるなら早めに済ませて」
真姫「にこちゃんに渡したいものがあるの」
そう言って私は小さな箱をジャケットのポケットから取り出した
真姫「中、開けてみて」
にこ「これって・・・指輪?」
真姫「そうよ」
にこ「いつ指のサイズ教えた?」
真姫「・・・東京の夜空って意外と暗いのね」
(言えない。こころちゃんに封筒が立つくらいの札束渡して買収して指のサイズを
夜中にこっそり測ってもらったなんて・・・)
にこ「話を反らさない!」
真姫「蛇の道は蛇って言うでしょ。そういうことよ、察して。」
にこ「分かるわけ無いでしょ!」
にこ「でも、指輪は受け取るわ。あんたが本気だって事、よーく分かったから」
指輪を渡し終え、少しだけおしゃべりしてまた一人家へと向かった
報告が誰かしらから飛び出すのを楽しみにしていたフシがあった
かもしれない。翌年夏の定期総会で、ことりと穂乃果が結婚すると
いう報告が飛び出した。それを聞いた海未はまるでこの世が終わ
るかのような悲痛な表情を浮かべていた。
秋の定期総会では絵里が大型免許を取得したという報告がされた。
なんでも都営バスの運転手になるために必須らしい。何で都営バス
なのと全員が思っていたけれど、その理由は単純で「公務員で安定
生活を送りたいから」だった。
そして年月が流れ、私は研修医となり、大学病院で日々医者になるべ
く勉学を重ねていた。残暑も厳しい夏のある日のこと。
昼休みが明け、眠気が襲ってくるぐらいの時間帯、突如大勢の急患が搬送されてきた。
先輩医師「西木野ちゃんTwitter見てないん?ついさっきすぐそこの
国電の線路で大規模な事故があったんや」
真姫「国電って・・・もしかしてJRのこと?」
先輩医師「せやせや。ウチの病院が現場から一番近いっつうこ
とでこうして急患が担ぎ込まれてきとる。研修医も総動員や。
西木野ちゃん、手伝って!」
真姫「はい!」
かどんどん急患が担ぎ込まれてくる。そんな最中である。私、西木野真姫は見知った
顔を怪我人の中に見つけてしまった
真姫「・・・に、こ、ちゃ、ん?」
私が見たのは将来の婚約者の変わり果てた姿だった。
顔は血だらけ、細い華奢な腕はあらぬ方向に曲がり、服に大量の血の跡が見られる。
まだ死んではいないようだが、一刻を争う事態であることは予想できた
真姫「この急患は私が担当します。綿引先生、お願いします」
綿引と呼ばれた先輩医師はこの急患が私の婚約者であることを知ってか知らずか、
にこちゃんのオペに私が同行することを許可してくれた。
治療にあたった。綿引先生はこの大学病院でかなりの実績を持つ名医で、次期院
長候補とまで言われていた。
綿引「こいつぁひでぇ・・・」
真姫「助からないのですか!?」
綿引「まだそうだとは言い切れへんが、見た感じ内出血が多く、バイタルも不安定だ。
時間に余裕はない。西木野ちゃん、メス」
真姫「はい!」
綿引「西木野ちゃん、この人を何であんたが対応するって言うたん?」
真姫「・・・実は、この人私の婚約者なんです」
綿引「ほぉぉ、婚約者ねぇ。婚約者がいるってぇのはいいもんだぁ」
綿引「だがな、その婚約者さんだが、ちぃとばかし辛い宣告をせなならん」
真姫「辛い、宣告?」
医学の驚異的進歩がない限り、二度と目覚めることはない」
真姫「え・・・」
綿引「そうだ。列車衝突の衝撃か何かで脳をやられてしまっていてな、植物状態に
なってしもうとるんや」
真姫「治せないんですか!?次期院長候補の綿引先生なら!」
私はいつの間にか泣きながら綿引先生に突っかかっていた
綿引「西木野ちゃん、落着いて。あんたも研修医生活が終われば一人前の医者だ。
今から婚約者さんを救うために、勉学に一層力を入れてほしい。実は同じように植物
状態で何年も眠り続けている患者は大勢いる。それをあんたが救えるようになるんや」
真姫「・・・綿引先生、分かりました。私、やります!」
回復の可能性を探ることになった。
それから毎日研修医としての業務が終わると家に帰る前ににこちゃんの様子を見
るのが日課になり、毎日声掛けをする。にこちゃん、聞こえてる?今日は患者が少
なくて助かったわ。皆が健康でいられるのが幸せなのよ。にこちゃん、お願いだか
ら早く目を覚まして。
にこちゃんが列車事故で植物状態になってからμ’s定期総会は行わなくなった。
それは穂乃果の決めたことだった。
出くわした。お腹がすいたから何かおごって!と言われたので仕方なく近くのチェー
ン展開している蕎麦屋に入った。
穂乃果「にこちゃん、最近見ないね。真姫ちゃん何か知らない?」
そう言いながら穂乃果はその店の名物メニューだというポテトうどんを啜る
真姫「実は・・・」
言おうか、言わまいか迷った。研修医とはいえ患者の情報に関する守秘義務は
適用される。相手が穂乃果とはいえ話すのはまずいのではなかろうか。穂乃果
は案外口軽いし
真姫「なんで分かるのよ」
穂乃果「あの時とおんなじ顔してる。真姫ちゃんが高校2年の時、穂乃果のことを・・・」
そう穂乃果が言いかけた時、あの出来事を思い出して顔が熱くなる
真姫「分かったわよ。言うわよ。その代わり・・・ここじゃダメね。私のマンションに来て」
穂乃果が食べ終えるのを待って会計を済ませ、近くを通りがかったタクシーに穂乃果
と一緒に乗った。
穂乃果「何であの場所じゃダメなの?」
真姫「とても大事なことだからよ。あと可能な限り呼べるμ’sメンバーは全員私のマン
ションに呼んで。緊急呼集よ」
穂乃果「わかった!」
全員来れるようだ
自宅マンションに着くと玄関前にはことり、海未、凛、花陽、希、絵里の姿があった。
急に呼んだから格好もバラバラだ
ことり「緊急集合だって聞いて伊豆大島から急いで飛んできたよ」
海未「有給休暇あと3日しか残っていません・・・」
真姫「全員いるみたいね。私の部屋に来て」
そしてメンバー全員を引き連れて部屋へと案内した。いつ、何があっても良いように
部屋を片付けておいて正解だった
絵里「珍しいわね。真姫の家に全員集合なんて」
希「しかも緊急、やて」
真姫「今から言うことは曲げようのない事実、そして誰にも言わないことを約束して」
海未「一体何なのですか?」
凛「それだけ?」
真姫「まだ続きがあるの。その事故で、にこちゃんは・・・」
そう言うと私の眼から涙がこぼれた。でもこらえた
真姫「手術してくれた先生曰く、にこちゃんが目覚めることは、奇跡が起きるか、
医学が大きく進歩しない限り、ないって」
花陽「そんな・・・」
絵里「それで、にこは今どこに?」
真姫「私の実家の病院にいるわ。ただし、医療関係者以外の面会は許可していない」
そこまで何とか言い終えると私は崩れ落ちた。現実を受け入れたはずなのにどうして
こんなに涙が溢れるんだろう
希「真姫ちゃん、大丈夫?」
真姫「ありがとう、希。大丈夫よ」
絵里「私も穂乃果に賛成ね。にこがいないμ’s食事会は画竜点睛を欠くわ」
希「ウチ、毎日明神様にお参りしとるんやけどこれからお祈りすることが増えたなぁ」
全会一致だった。こういうとこでまとまりが良いのが私たちの長所である
そんな訳でμ’s定期総会はにこちゃんが戻ってくるまで行わないことになった。
私はにこちゃんを治すため、一人前の医者になるため、日々勉学に励む。そして私は、
晴れて実家の病院で医師になった。
研究を続けた。もちろん毎日の面会も欠かさない。
そんな日が何百日と続いたのだろうか。桜吹雪の舞うある春の日、夜中に病院から電話
がかかってきた。ディスプレイに表示された番号を見た時、最悪のケースが脳をよぎって
しまった。でも電話口から聞こえてきたのは観察を行っていた看護師の明るい声だった。
真姫「何があったの!?」
看護師「西木野先生、いい知らせです!今すぐ病院に来てください!」
私は急いで病院へと向かった。病院までは大学時代から暮らしている
マンションから徒歩5分もかからない。
そこで目にしたのはベッドから起き上がったにこちゃんの姿だった。
真姫「にこちゃん!」
にこ「ここは・・・どこ?」
真姫「私の実家の病院よ。あなた、3年以上も・・・眠ってたのよ」
にこ「3年、以上も?」
真姫「そうよ。私のことが分かる?真姫よ西木野真姫。あなたの、大切な婚約者よ」
一瞬の沈黙
にこ「覚えてるよ、真姫。待っててくれたのね」
こうして目覚めたことが奇跡なんだって」
にこ「ありがとう、真姫」
そして私とにこちゃんは抱き合って思いっきり泣いた。何で泣いているんだろうと
思ったけど、にこちゃんが帰ってきてくれた、その喜びが全てだったかもしれない。
次の日、にこちゃんは精密検査を受けてもらった。結果、特に異常は認められなか
ったので一般病棟に移った。一般病棟に移って数日後、回診でにこちゃんのベッド
に行った時のこと
真姫「そうよ。にこちゃんが眠っている間、色んな事があったわ。ことりと穂乃果は
結婚し、絵里は都バスの運転手になり、希は書籍取次会社の営業になり、花陽
は小金井で米農家になり、凛は大学絶賛留年中よ」
にこ「色々突っ込みたい部分もあるけど、にこだけ時が3年前のまま止まってるの・・・」
真姫「止まってるわけないじゃない。時は休むこと無く永遠に動き続けてる。今からでも
遅くない。過ぎゆく時間の中で、精一杯、悔いのないように生きよう?にこちゃん」
にこ「真姫・・・」
そしてあの日の代々木公園と同じように、熱く抱きしめ、キスを交わした。3年も眠って
いたにこちゃんの体は細く、強く抱きしめたら壊れてしまいそうだった。起きるはずが
ないのに起きた奇跡、そのありがたさを受け止め優しく抱きしめる。
にこ「招待状はどうするの?」
真姫「文面はちゃんと考えてあるわよ」
そう言って私は今ではすっかり旧式になってしまったノートパソコンの画面を
にこちゃんに向ける
前略
この度、私西木野真姫の結婚記念パーティーを下記の日程で行います。つ
きましては各自都合を調整の上出席くださいますようお願い致します。
草々
記
日時:20XX年Y月Z日 10時から
場所:東京都千代田区・・・
にこ「随分と質素ね」
真姫「これぐらいで十分よ」
着た。私も同じようなウエディングドレスを着た。違う点があるとすればにこちゃんのドレ
スには桜の花があしらわれ、私のドレスにはガーベラの花があしらわれている
真姫「打ち合わせ通り、私が合図したら出てきてね」
にこ「OKよ」
穂乃果「真姫ちゃん、遅いねぇ。何してるんだろぉ。まさか寝坊とか?」
海未「あなたと真姫を一緒にしないでください。乗った電車が並走路線の
異音確認のための緊急停車、会場到着が開始時間ギリギリ3分前になっ
たのはあなたが寝坊したせいですよ」
穂乃果「こんなおめでたい(?)場所まで来てお説教はやめてよ海未ちゃぁん」
ことり「ねぇ、真姫ちゃんが出てきたよ」
絵里「ウェディングドレス姿・・・そうね、真姫も結婚するのね・・・」
希「エリチ泣いとるん?まぁ~ウチとエリチの結婚式の時もエリチ泣いとったし、
よほどか涙もろいんやなぁ。エリチは」
凛「真姫ちゃんかわいいにゃぁ」
真姫「えぇ~、今日みんなに集まってもらったのは他でもありません。」
真姫「にこちゃん」
名前を呼ばれたにこちゃんは扉を開け、自分の足で皆の前に姿を見せた。
その様子を見たみんなは目を丸くしていた。
絵里「ハルルルァショォォォォォ・・・」
希「奇跡って起きるもんやなぁ」
ことり「にこちゃん、戻ってきたんだね・・・」
花陽「これはお赤飯を炊かないといけないレベルです!
餅米を新潟から送ってもらいます!!」
にこ「今まで黙っててごめん。私、矢澤にこは半年前に3年以上の
眠りから目覚め、長いリハビリ生活の末、先月退院。そして本日、西
木野真姫との結婚式を挙げるに至りました」
美味しいもの食べるってだけなんだけどね」
そしてこの日は久々にμ’s全員が揃った賑やかな食事会になった。
指輪交換、誓いのキスもしたし、皆にとって一生忘れられない日になった。
当たり前だった幸せはある日突然音もなく崩れた。でもその幸せを再び組み
上げることを私は実現させた
完結
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