【ラブライブ!】花陽「道端のたんぽぽですっ!」
- 2020.04.13
- SS

あ、新しい芽が出てるっ!」
私、小泉花陽は、植物が大好きです。
今日もジョウロで水をあげます。
「んしょ、これでよし。元気に育ってね~」
この子たちは、花陽の心を癒やしてくれるんです。
見てるだけで、不思議とあったかくなれるんだぁ。
♪~。
おっと、もう夕ご飯の時間でした。
ちょっぴり寂しい時間です。
バイバイみんな、そろそろお家に戻るね。
──
…ん?
わわっ、大変です!昨日出たばかりの赤ちゃんの芽が倒れてます!
きっとまだ弱いから、風にやられちゃったんだと思う。
どうしよう…うーん…
そうだ!花陽、ひらめきました!
この子だけお家で育てればいいのです!
風に吹かれる心配も、虫に食べられちゃう心配もありません。
更に、これなら1日中植物を楽しめちゃう。
花陽は天才ですね!えっへん。
よし、上出来!
「花陽ぉー、まだぁー?」
ゆ、夕食でしたっ。
小鉢は花陽ルームにでも持っていきましょう。
みんな、またあしたねー!
──
えー、ソフトにしようよー。
文化部もいいと思うんだけど。
…はぁ。
「小泉さんはどうなの?」
「ぅええっ!わ、わ、わ私は…」
「…あ、部活の話」
「…え、んと…うぅ…」
「…なんか、ごめんね」
「……あぅ…」
「…じゃ」
…はぁぁぁ。
私、口下手なんです、とっても。
もともと友達は少ないんだけど、まだ中学校に入ったばかり。
つまり、ぽつーんです。
…はぁぁぁぁぁ。
溜息吐きすぎて干からびそうです…
でも、いいんです。
なぜなら…
「たっだいまー!みんなー、おまたせー!」
花陽には、みんながいるから!
植物こそが、花陽の、一番のお友達ですっ!
ついたぶんの溜息を、新鮮な空気で、花陽に吸わせてくれるんだぁ。
えへへ♪
──
んー、やっぱり少し細いなあ。
でも、一回り大きくなったのがよく分かりました。
ほっと安心して、水をあげながら、この子とおしゃべり。
「あのね、今日、クラスメイトの女の子に話しかけられたんだよ。でも、緊張しちゃってね…」
それだけで、心のモヤモヤが消えていきます。
聞いえもらえるだけで、それだけで。
植物にとっては、はた迷惑な話かもしれないけどね。
てへっ。
本当ですよ?
だから、花陽は明日も頑張れる。
──
美味しかったんです!!何せ水加減が最高中の最高で…
黙ってよく聞いてくれます。
「そしておかずの一つがなんとふ・り・か・け!」
白米パワーを最大限に引き出すのが塩かふりかけですっ!
はぁ〜、最高でしたぁ〜。
心なし、この子も昨日より楽しそう!
言いながら、盛り上がった土を指で整えます。
そうだ、この子にもご飯をあげましょう。
まだ小さいから、弱めのこれかな。
ぱらぱらぱら、と土にかけてやります。
大きくなあれ、大きくなあれ♪
──
一生懸命頑張ったのに。
窓際の小鉢に見守られながら、頑張ったのに。
どうして、49点なのぉ…
ぐすっ。
お母さんに大声で叱られているんです。
って言ったら、
「この点数で?!全く勉強できてないでしょ!もっとやりなさい!」
だって。
うわーん。
「叱られちゃったよぉ、怖かったよぉ…」
この子に泣きつきました。
「花陽、真面目に宿題だってやったよ?プリントも…」
ひととおり、鬱憤を吐き出します。
いつものように、うんうんと、頷いてくれるきみ。
すると、自然に。
ふわっと、元気が出てくるから、驚きです。
前を向かせてくれるきみが、今では必要な存在です。
もう5,6cmくらいに大きくなりました。
これからも、ずーっと一緒にいようね♪
──
最近雨が多くなってきたけど、ぽかぽかの晴天なんです♪
どこかにお出かけしようかな〜。
るんるん計画をたてながら、小鉢の前に座ります。
「久しぶりにいい天気でよかったね。ぐんぐん大きくなって」
日光は、植物の白米なのです!
まだ湿ってるね。チェック完了!
茎を観察します。
うん、異常な…
あーっ!あぶらむしがついてる!
まだ2匹しかついてないけど、どこから入ったんでしょう。
くじょくじょ。
ピンセットで、茎を傷つけないよう慎重に…
ぽーい。
あぶらむし、撃退完了です!
ほっと一息。
安心するとつい、おしゃべりをはじめてしまいます。
「最近は雨が多いせいで、室内活動が増えたよ。それから…」
日光に照らされ、うっとり、眺めて。
「……だからね、話せる人も、少し…ずつ…ふ、え…」
うっとり…うっ、とり…うと、り…うとり……
体をはね起こしたら、オレンジの空が。
ふぇぇ…お昼寝しちゃったよぉ…しょぼん…
でも、空から視線を落とすと、小鉢の中のきみが目に入りました。
あれ?ちょっと楽しそう?
何だか笑われている気分です。ぶー!
こういう休日の過ごし方も、ありなのかなー、なんて。
…では、あれから何時間か経っちゃいましたし、もう一度!
土、まだ湿ってるね、チェック完了!
茎、観察します、異常なしっと!
──
てらてら照りつける太陽で、土はカラカラ。
たーっぷりと水をあげます。
「この時期はすくすく育つねえ」
伊達に育てていません!
お部屋の子ばかり見てるわけじゃないんですよ?
だって、愛情を注がないと、葉っぱの先が茶色になってしおれちゃうから。
元気は愛情の証拠!
♪〜。
む?
むむ?
むむむ!やったー!つぼみができましたー!
愛情の最・終・形・態ですっ!
うっれしっいな〜♪
…そうだった、あの子も、もう少し大きくなったら、ここへ戻してあげなくっちゃ。
部屋からいなくなっちゃうのは少し寂しいけど、植物は広い土地の方がいいにきまってるもんね。
植物が望むなら、花陽はそれを厭いません!
花陽は植物のスペシャリストです!えへへ…
「花陽ぉー、ちょっと遅いんだけどー?」
ま、また忘れてましたぁ!
誰か助けてー!
──
なんと、部屋の子にも、つぼみができています!
上気した顔で眺めていると、きみは恥ずかしそう。
どちらかというと、体の弱い子だったから、つぼみができるか心配だったんだ。
この様子なら、お日様と風の下に出られる日も遠くありません。
もちろん花陽もいて、新しい仲間がたくさんいる場所。
とっても楽しい場所なんだ!約束だよ?」
ふふ、この子も嬉しがって…
(楽しみだなあ)
…うえ?
「うえええ!?!?」
どどこからともなく、しいて言うならこの子から、「声」が聞こえてるぅぅ?!
誰か助けてー!
──
花の精とか、そういったものでしょうか、やっぱり。
いや、そもそも幻聴、だったり…?
むむぅ。
難しいことはどーでもいいんです。とにかく帰るのみ!
「たっだいまー!」
お庭のみんなの世話も忘れずに、すたこら花陽ルームへ向かいます。
(おかえりー)
わー!
夢でも幻聴でもありません!
昨晩も今朝も確認したけど、疑いは晴れず、ずっとうずうずしてました。
不思議ですね、だけど、花陽はそれ以上に嬉しいんだ♪
もっとおしゃべりして、もっと仲良くなっちゃいますっ!
あ、鈴ちゃんって、昨日名付けました。つぼみが鈴みたいだから鈴ちゃんです。
え?ださい?ぶぅ、ひどいです。
本人も気に入ってくれた様子だし、いいんだもん!
ちなみにイントネーションは、す↓ずちゃんではなく、す↑ずちゃん、です。
これ重要です!
なんてね。
水をあげると喜ぶ鈴ちゃんはすっごく可愛くて。
眠るまで、ずっとおしゃべりをしてました。
──
鈴ちゃんといるのが楽しくて楽しくて。
それに、真夏に何時間も放置されるのって、辛いと思うんです。
花陽は、学校や家での出来事を鈴ちゃんに話します。
給食のこと、お母さんのこと、お庭のみんなのこと、クラスメイトのこと…
鈴ちゃんに質問されました。
「遊ばないよ。でもいいんだ、鈴ちゃんといるのが一番楽しいから♪」
(…でも、学校にいるときは?)
「大丈夫だよ。最近だと大分なれて、浮いて目立つこともなくなったから。
…友達って呼べるほどの子はあまりいないけとね。えへへ」
「うん!」
(…そっか)
花陽は、鈴ちゃんさえいれば、大満足なんです♪
──
開花目の前のぷっくり鈴をつけた鈴ちゃん。
いってきますと告げ、登校です。
ふふ、明日からは、待ちに待った夏休み!
えっへへー、楽しみだなあ。
だって、鈴ちゃんたちとずっと一緒にいられるんだもんね。
あーしよう、こーしよう。
また日なたぼっこもいいかな。
お家まで花陽ダッシュですっ!
レディーー…
「花陽ちゃん、ちょっと」
「ひゃあ!」
び、びっくりしましたぁ…
えっと、以前どの部活に入るか聞いてきてくれた女の子ですね。
後ろには更に2人の子。
一人がちな花陽を気遣って、よくこうして話しかけてくれるのです。
あ、遊びに誘われちゃったのぉ!?
多分、このごろ特に帰るのが早かったから、それを気にかけてくれたのかなぁ。
学校が嫌とかじゃ、ないんだよ?
でも、花陽予定はないし、いいチャンスです!
──
少し緊張したけど、とっても楽しかったです!
だんだんと固かった顔は柔らかくなって、思い切り笑えて。
こうしてクラスメイトと遊ぶのも、いいかな〜♪
ふと時計を見上げると、既に5時近くです。
夕ご飯があるし、植物のみんなも待ってるから、そろそろ帰らないと。
そう思っていると、
サプライズ?何だろう?
「花陽ちゃんには、私のお母さんと私たち4人で、3日間の旅行に行ってもらいまーす!」
えええ!!本気なの!?
どうしよう、どうしよう、まずいよ!
みんなは、鈴ちゃんは?せめて、お母さんに電話しないと!
「前々計画してたから準備万端だよ〜。服その他は貸すから。
花陽ちゃんのお母さんの許可もバッチシ。ほら」
いきなり受話器をを渡されます。
お母さん大歓迎よ、安心して。楽しみなさい。家の人にはせめて迷惑をかけないようにね。
じゃあお邪魔虫の私はさっさと消えるわ、じゃあね、また3日後。」
…息をする間もなく一方的に切られてしまいました。
お母さん、色々と適当すぎるよ!
ふぇぇ…
携帯電話だってまだ持っていません…
どうしよう、どうしよう…
「…花陽ちゃん、もしかして嬉しくなかった?」
「う、ううん、全然そんな事ないよ。わっくわくだよ!」
「なら、良かった♪目一杯遊ぼうね」
…。
やるやる!
…花陽は、どうすればいいんでしょう。
花陽ちゃ…花陽も、はやくー!
…。
…。
大きくなったから、きっと、大丈夫。
「みんな、待ってー!」
──
遊園地に行きました。
動物園にも。温泉にも。
バーベキューだってしたし、白米だって食べました。
思い切り楽しみました。
思い切り。
花陽の中の、真っ黒なものから目を逸らして。
見て見ぬふりをして。
「またみんなで旅行しようね。では夏休み明けに学校で!」
「ばいばい、おやすみなさい」
「おやすみ、花陽」
別れを告げるのと同時に、押しやっていたおぞましいそれは、花陽の体を埋め尽くします。
たちまち、夜道を、無我夢中で走りました。
花陽ダッシュなんて、比べものになりません。
一秒でもはやく。一秒でもはやく。
ただ、ただ怖くて、怖さに任せて、足を動かしました。
──
お母さんが水をあげていてくれたみたいで、土は湿り、葉はぴんと張っていました。
それだけ確認すると、安堵の暇もなく、大急ぎで部屋の前へ。
そして、ドアを、開きました。
………
……ぁ…
目に映ったのは、先が茶色くなり、しおれてしまった葉っぱ。
視点すら定まらない中、フラフラと、近づきます。
震える両手で、小鉢をとりました。
土は、乾燥しきっています。
茎は横たわり、愛の最終形態と謳った大きなつぼみは、咲くことなく、千切れて土に落ちてしまっていました。
鈴のようなつぼみ。
次第に現実が襲ってきて。
鈴ちゃんは…
花陽は……花陽はっ……
一番の親友を、花陽は殺したんです。
いや、親友なんて、到底失格だったんだ。
きみとの出会い。
自慢話や愚痴を聞いてくれたきみの様子。
一緒にお昼寝したこと。
あぶらむしを大慌てで駆除したこと。
きみがしゃべるようになったこと。
…外に出してあげる、きみとの約束。
楽しいときも辛いときも、いつも隣にいてくれたきみ。
大好きだった、鈴ちゃん。
ひとつ、勇気を出して、お母さんに連絡するだけだったのに。
この、内気で恥ずかしがり屋で臆病で人見知りな性格で。
逃げて、隠して、投げ出して、背中を向けて遊び呆けて、殺した。
鈴ちゃんは、外を心待ちにしていたのに。
開花だって、一生に一度きりと、嬉しそうに話してくれたのに。
最低、だよ。
私って、最低、だよ…
悔やんでも悔やんでも、悔やみきれません。
鈴ちゃんがこうなることは、分かっていました。
ただでさえ弱い鈴ちゃんを、3日間真夏に、締め切りの部屋で、水すらあげずにほうったら、こうなるって、分かっていました。
分かって、いたのです。
とことん最低な、私。
ただどうすることもできず。
ごめんなさい、ごめんなさいと、声にならない声を繰り返し、涙を流しました。
──キラキラキラ。
まぶたの先が、明るくなった気がして、ゆっくり目を開けます。
…鈴ちゃんが、輝いています。
茎は横たわっていません。
3日間以上に瑞々しい葉っぱ。
てっぺんに、黄色の、大きく美しい花が咲いていました。
(えへへ、久し振りだね)
「…わ、ええと…」
(落ち着いて。時間はあまりなさそう)
「…その、ごめんなさい!友達に誘われて、断れなくて、それで、電話も恥ずかしくて…
つまり、鈴ちゃんをほったらかしにしちゃって…」
(…なあんだ、安心した)
「…ふぇ?」
それに、友達って聞けて、なお嬉しい)
「で、でも、花陽は鈴ちゃんを」
(いいんだ、鈴は、花陽ちゃんに鈴以外の友達ができること、学校の友達と楽しめることを、ずっと待っていたの)
「花陽には…きみが、鈴ちゃんが」
(それではいけないんだよ。例え会話ができたとしても、鈴は植物。人間とは全く別のものだから)
「…ぅぅ」
本当の友達をつくるために)
「…でも、鈴ちゃんと、離れたくない」
(大丈夫。鈴はね、花陽ちゃんの目に見えなくとも、意識しなくとも、ずっのそばにいるから。
それはまるで、どこにでも目にする、道端に咲く蒲公英のように)
(本当だよ。だから泣かないで。だから悲しまないで)
「…ありがとう。鈴ちゃん」
(ありがとう。花陽ちゃん。
鈴が、永久に輝きの下で咲いていられますように。
あなたが、花の空に咲く、まぶしい太陽でありますように。)
──キラキラキラ。
輝きは一層増します。
鈴ちゃんは、ひかりとなって、晴れ渡る夜空へと散っていきます。
きっと、あの広大な星空が、私達を照らすのでしょう。
永遠の花と太陽は、枯れることはありません。
──
あ、新しい芽が出てるっ!」
私、小泉花陽は、植物が大好きです。
「ほんと、好きだよね」
いえいえ、友達だってたくさんいるよ?
人間の友達ですうっ!
そうしたら、びっくりするくらいたくさん!
えっへん。
そして、中学2年生になってから、とってもとっても仲良しの「大親友」ができましたー!いえーい!
「ええ!それ、雑草だよ?」
大親友。
鈴ちゃん、見てくれてるかな。
「でも奇遇だね。花陽も実は、この子、好きなんだ」
目にも付かない場所で。
意識もしないところから。
それはまるで、道端に咲く蒲公英のように。
花陽の中の花は、いつだって満開です。
「ねぇかよちん、この子、倒れちゃってるにゃ」
あ、たんぽぽみっけ♪
─おしまい─
乙
たんぽぽが好きになった乙乙
お疲れさん
なんか俺も育てようかな
SIDの話を思い出した
かよちんこういうの良く似合うな
かよちんはこう言う話し合いますね
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