【ラブライブ!】善子「リリー、連休はうちに来ない?」
- 2020.04.14
- SS

学校に残っているのは、バスの時間待ちのよっちゃんと、それにつきあっている私だけ。
善子「練習がなくなると、することがないのよね。リリーはどうなの?」
そうは言うものの、よっちゃんってお休みの日はわりとあちこちで出くわすので、けっこうフリーダムに遊んでいそうです。
梨子「私は、絵を描いたりしていますから、2,3日家からでなくても大丈夫ですよ」
善子「せっかくの連休なのに閉じこもっちゃうの?」
よっちゃんは、少し考えてから、
善子「そ、それなら我がパンデモニウムに一夜の逗留をしにこない?」
パンデモニウムって、多分お家のことですよね。流石に万魔殿ではないと思いたいです。
ぜったいによっちゃん、中途半端に覚えて使っています。
善子「だって、家に閉じこもる予定なんて、休みが明けるまでリリーと会えなくなっちゃう」
たしかに、市街の方に行ったら、よっちゃんとはほぼ毎回出くわして、そして引っ張り回されます。
でも、それを前提にするのってどうなのかなとも思ったり。
善子「よ、ヨハネと一緒に、堕落した休日を過ごしましょう、ね、ね」
文字にするとなんか格好いいことを言っているようですが、よっちゃんは、どう見てもおねだりしてる顔をしていました。
こんな顔されると、胸の奥がうずいてきます。
おねだりに応えてあげたくなって。
梨子「いいですよ。でも急だから、お家の方に確認してくださいね」
善子「べ、別にリリーが暇ならでいいんだけれど……っていいの?」
梨子「はい」
善子「いいわ、ヨハネのパンテオンで淫ら……じゃくって、怠惰な時を過ごしましょう」
よっちゃん、パンデモニウムからパンテオンになっているけれど、これはグレードが上がったんでしょうか下がったんでしょうか。
それに、慌てて何か言い換えたような気もします。
でも、このときは、よっちゃんと一緒に過ごすのもいいかな、って思っていました。
千歌ちゃんと果南さんは、お家が観光関連なので、ご家業のお手伝い、
ダイヤさんとルビィちゃんのお家である黒澤家は、各界の方が訪ねてくるお家なのだそうです。
なんでも政治日程が一段落つく時期、というものらしく、、訪ねて来られたお客様が特に多いそう。
なので、その応対のために連休はほとんど外にも出られないといいます。
鞠莉さんの方はお手伝い……というのはないようですが、やはり休日を利用して内外から訪ねて来られる上客の方を招いてのプライベートなパーティをお家で開く、とのことで。島からは出られない予定のようです。
パーティーのホステスだから形は違うけどやってることは千香ちゃんと一緒、と言っていました。
マルちゃんも、この時期は法事が立て込むので、やはりお家のお手伝い。
親族が集まりやすい時期ということで、前倒しで法事をされるお家が多いのだとか。
そして曜ちゃんは高飛び込みの強化選手なので、そちらの強化合宿で不在。今日はその準備のために早く帰っています。
強化選手を集めた学校に進むよう強く薦められたらしいのですが、県主催の合宿だけは参加する条件で内浦に留まっているそうです。
きっと、千歌ちゃんと離れたくないからでしょう。なぜかそれはよくわかります。
バスのアナウンスが、次が降りる停留所であることを告げます。沼津の駅前で乗り換えて、2本のバスを乗り継いで1時間というところです。
途中で渋滞にあったので、少し遅くなってしまいました。
梨子「よっちゃん、こんな遠いところから通ってたんだ」
千歌ちゃんみたいに、もっと近くにおうちがあったらいいのにな、なんて
私は。……いったい何を考えてるんでしょうか。
車窓から、よっちゃんに教えられていた停留所が見えてきました。
梨子「あ、よっちゃん迎えに来て……くれたんですねぇ」
ちょっとだけ、このまま乗り過ごしちゃおうかな、って思ってしまったわけで。
黒のノースリーブのワンピース、タイトでハイネックのトップにフレアのボトム、黒のニーソックス。
頭のお団子で確認するまでもなく、遠目からでも黒でわかります。
だって、こんな格好で出歩ける強いメンタルを持った知り合いはよっちゃんしかいません。
天気予報で夏日といっていましたけれど、暑くないのでしょうか。
そんなことを考えていると、窓越しに、必死な様子で手を振るよっちゃんと目が合ってしまいました。
もうここでバスを降りるしかないようです。
お父さんお母さんごめんなさい、
梨子はこれから堕天使に手を引かれてパンデモニウムに行きます。
バスが遅れたせいで、心配をさせてしまったようです。
よっちゃんは半泣きでした。
ええ、このまま終点まで行って折り返しで帰っちゃおうかとひどいことを考えたのは内緒です。
梨子「ごめんなさい、バスが遅れてるって判ってれば連絡したのに気がつかなくって」
こんな顔を見てしまうと、ごめんね、としか言えません。
善子「さ、案内するわ」
よっちゃんが、手を伸ばします。
善子「荷物、持つわね」
着替えの入ったトートをよっちゃんんい預けました。
荷物はもう一つあって、お世話になるお礼にと持たせてもらった、贈答用の焼き菓子の詰め合わせです。
よっちゃんの空いた方の腕が私をしっかりと捕まえています。
梨子「あの、よっちゃん、くっつきすぎじゃないですか?」
善子「も う に が さ な い」
笑顔がかわいいのに、ちょっと怖いです。
このままよっちゃんにとらわれて、お家に帰れなくなるんじゃないかと心配になりました。
助けて千歌ちゃん。
善子「いま他の子のこと考えたでしょ……今はヨハネだけ見てなさい」
よっちゃんは変なところで勘が鋭いです。
そこは、パンデモニウムでもパンテオンでもなく、普通の一軒家でした。
まわりのお家と比べても、特に変わったところというのは見当たりません。
善子「ヨハネのパンデモニウムにようこそ」
結局パンデモニウムで落ち着いたんですね。
よっちゃんが、ごく普通の、引き戸を開きました。万真殿と外界を区切る扉としては、あまりにも普通です。
梨子「おじゃまします」
「いらっしゃい、貴女が梨子ちゃんね」
玄関には、よっちゃんの頭のおお団子がない髪型で、そしてよっちゃんをそのまま大人にしたような、笑顔の女性がいました。
白いワンピースがお似合いです。
これってよっちゃんと逆……でも、まさか。
この人はおそらく、よっちゃんのお姉さんでしょう……あれ、よっちゃんって兄弟いましたっけ。
そしてなぜか、私の腕を取っているよっちゃんの表情が、こわばったような気がします。
梨子「はじめまして、善子さんの友人の桜内梨子です。善子さんのお姉さんですか」
「あらあら、お世辞でも嬉しいわ。善子の母です」
梨子「お母様でしたか、失礼しました」
善子母「すごくかわいいお嬢さんね。少しお話がしたいわ」
なにか舐めるように見られたような気がします。よっちゃんと同じ目線といえばよいのでしょうか。
善子母「お茶を用意してあるから、まず善子の部屋に荷物を置いていらっしゃい」
梨子「ありがとうございます」
促されるままに出していただいたスリッパを使いました。
善子母「あなた、その厨二全開の衣装でお友達を迎えに行ったのね」
あ、あれ?たしかに善子ちゃんのファッションは、まあ、堕天使的なのでしょうが。
それにしては選んだ言葉というのが何かおかしくないでしょうか。
善子「衣装って言わないでよ。堕天使の正装」
よっちゃんのお母様が、こちらに向き直ります。とてもいい笑顔でした。
善子母「梨子ちゃん、堕天使の善子は私が食い止めるから、逃げるなら今のうちよ」
お母様は我が子が堕天使であることをご存じのようでした。
よっちゃんは、私の腕をぎゅっと抱いて、お願い行かないで、という顔をしています。
そういう表情をされると、だめです。
梨子「あ、あの、ご迷惑でなければ」
善子母「そういう意味ではないから安心してね。うちの子と仲良くしてくれるなら歓迎よ」
善子「じゃあ、行きましょう、リリー」
善子母「リリー?」
とがめるような口調でした。
梨子「あの、善子ちゃんにそう呼んでもらうの、嫌じゃなくって」
善子母「あなた、お友達に魂名(ソウルネーム)を付けたのね」
ソウルネームって言いましたよね。せめて、ニックネームかペットネームにしておいて欲しかったです。
ベッドがないので、夜はお布団なのでしょう。
ただ、やたら立派なPCと、本がぎっしり詰まった本棚が目立っていました。そして、ポスターが1枚だけ。
善子「これは正装だから、ちょっと着替えるわ」
よっちゃんは、今着ている「正装」のコンシールファスナーやホックを緩めると、それを脱ぎました。
脱いだ黒のワンピースをハンガーに掛けて、ファスナーやホックを締め直します。
下着は、ピンクでフリルが使ってあります。黒のちょっとえっちなのでなくて、一安心です。
そして、まだ黒のニーソックスをはいたままなので、それがアクセントになっていました。
善子「え、えっとリリー、そんなに見られちゃうと」
よっちゃんは、線が細くて、それでも曜ちゃんのように研いであるような鋭さはない感じです。
千歌ちゃんのふにっと柔らかそうな感じとも、また違います。
善子「リリーでもちょっと恥ずかしいというか……ところで、誰かと比べてないわよね」
やはりよっちゃんは勘が鋭いです。
梨子「ごめんなさい」
よっちゃんを見つめていたことと、よっちゃんの身体を千歌ちゃんと比べたことのどっちにあやまったのか判らないまま、私はごめんなさいと言っていました。
よっちゃんから目をそらします。本棚の本の背表紙を読んで待ちました。
密教の本、陰陽道の本、カバラの本、キリスト教外典の本、ネクロノミコン秘呪法etc.
出版社は、私も持っている参考書を出版している会社でした。
雰囲気的には教養書に見えるが、まだ救いです。
善子「それ、元々はお母さんの持っていた本よ。押し入れの奥に厳重に封印してあったけれど、私がその封を解き放ったの」
梨子「お母様、読書家なんですね」
ごめんなさい、これが元々よっちゃんのお母様の蔵書だとしたら、これ以上のフォローは無理です。
よっちゃんが今のよっちゃんなのって、この蔵書とか、色々影響していそう。
もう少し目線をずらすと、壁に貼ってあるポスター。
金髪で白い鎧に、ジーンズっぽいパンツをはいた男性と、黒髪に黒のシャツ、黒のパンツの男性とが描かれたポスター
ゲームか何かの宣伝ポスターでしょうか?
善子「……じゃあ、下に行きましょうか」
梨子「そうですね、お母様にもまだきちんとご挨拶できていないですし」
よっちゃんは、さっきと違って、淡い色のふんわりしたミニのワンピースです。
生足だけれどニーソックスの跡が残っていないのは、脚が引き締まっている証拠でしょう。
善子「さっきよりも見られてるみたい。やっぱりコスプレみたいで変よね」
梨子「そんなことないですよ。かわいいです」
食べちゃったら甘くておいしそうとか思ったのは内緒です。
よっちゃんの顔が、赤くなりました。
善子「お、お母さんってこんな服ばっかり買ってくるのよ。堕天使じゃなくて天使みたいなのだけど、でも家ではこっちを着ないと色々言われちゃうから」
言い訳するところが違うような気がします。
最後まで書いていますので、落ちない限り完結します。
そのリビングには、テーブルを挟んでソファセットがありました。
その向こうに、よっちゃんのお母様が座っています。
梨子「よっちゃん、やっぱり私、帰っちゃっていいですか」
善子「お願い置いていかないで」
向かいには、よっちゃんおお母様がいました。
先程の白のワンピースの上に、白銀の鎧を纏っていました。
何を言っているか判らないと思いますが、そうとしか言えません。
善子母「善子……いえ、今はあえて、堕天使ヨハネと呼びましょう」
その言葉で、リビングの空気が変わりました。
これから世界で一番見てはならないものを見てしまう予感がします。
善子「ヨハネと呼んでくれたのは初めてね。それで、何のつもりなの?」
善子母「ヨハネ、あなた、お友達に魂名(ソウルネーム)を付けたわね」
やっぱりお母様はソウルネームと言いました。
善子「それがなんなの?リリーはリリーよ」
最初はけっこう恥ずかしかったです。
でも、リリーリリー言われつづけたもので、すっかり慣れました。
今では、よっちゃんにリリーと呼んでもらうのが好きになっています。
リリーという名前にそんな大層な力が合ったのでしょうか。
初回は恥ずかしくて破壊力がありましたが、すっかり慣れました。
善子母「ヨハネ、あなたにはずっと秘密にしてきたけれど、私の前世はアトランティスの大地を守護した戦士」
梨子知ってるよ。これ前世少女っていうんだよ。
あまりの衝撃に、一行とはいえ、自分のアイデンティティを見失いました。
善子母「それなのに、我が子が堕天使となることを防げなかった、ならば目の前にいる梨子ちゃんだけでも救うのが、あなたの母であり」
善子母「アトランティスの戦士である、このセリヌンティウスの役目」
梨子「あの、セリヌンティウスって走れメロスで人質になったメロスの友人の名前ですよね……」
善子「アトランティスの戦士なら所詮は人の子。たかが人の力でかつては神の眷属であったこの堕天使ヨハネを止められるのかしら」
よっちゃん、できれば私のツッコミに気がついて欲しかったです。
セリヌンティウスのモデルになった檀一雄がきっと化けて出てきます。
親子でノリノリなので、私は置いてけぼりです。待たされる身は辛いんですよ。
善子母「止めるわ。梨子ちゃんの魂を縛らせたりはしない」
善子「ならばお母さんを倒して、リリーをヨハネのものにするだけよ」
言われてみて気づきました。よっちゃんが私をほしがってくれる。胸がうずきます。
私も、よっちゃんに対して、そういう気持ちがあるのでしょうか。
でもね。
梨子「こんな状況では聞きたくなかった!」
もちろんただの心象風景です。
風が吹きます。
善子母「この風はアトランティスの大地を吹いた風。邪悪なものを吹き飛ばす颶風」
善子「でも、この堕天使ヨハネを吹き散らすほどの力はないみたいね」
それはそうでしょう。だって、陽気がいいから入れてあるらしい、エアコンから吹いてくる風ですから。
善子母「なぜあなたに善なる子と書いて善子という名を与えたか、わかるかしら」
善子母「それは、あなたの中に眠る堕天使を封じるための、言霊の力を借りるためよ」
善子「でもヨハネは堕天使よ。つまり人の使える言霊ではヨハネを抑えられはしない」
まあ、名前のことでは誰の言うことも聞かずにヨハネで通してますものね。
私は、よっちゃん本人の意志と本名の間を取ってよっちゃん、って呼んでます。
善子母「あなたがいま纏っている衣もそう。色と形の力で、堕天使を押さえ込むもの」
つまりは、いまよっちゃんが着ている、ピンクのワンピースのことです。
堕天使の力を封じるという意味があったんですねぇ……。
善子「堕天使の正装を纏わずとも、私には十二分な力がある。衣の分、お母さんにハンデをあげているだけよ」
善子母「全く、ああ言えばこう言う」
善子母「それならば、堕天使を斬り、あなたを普通の人の子にする」
善子母「そして、梨子ちゃんをソウルネームから解放するわ」
善子「たとえお母さんが相手でも、リリーは渡さない」
いつの間にか私の争奪戦になっていました。これ、どうすればいいんでしょうか。
善子母「ヨハネ、あなたにだけはこの剣が見えているでしょうね」
私には見えません。お母様は、何も持たない手に何か剣のようなものを持っているような仕草をしています。
善子母「この剣は、邪悪なるもののみを裁つ剣。そして、この剣にかかる邪悪にのみその威容を見せる剣」
あ、そういう設定なのですね。ということは、よっちゃんはきっと。
ということは、お母様ご本人には見えているのかいないのか、どっちなのでしょう。
善子「無駄にぎらぎらと輝くだけの剣ね。そんなものでこのヨハネが斬れるのかしら」
私はあいかわらずおいてけぼりです。
よっちゃんと同じものが見えていれば、寂しくないのでしょうか。
善子母「このホーリーアンドブライトの放つ衝撃波、堪えられるかしら」
なぜアトランティスの剣の名前が英語なのでしょうか。
それに、ホーリーアンドブライトはゴダイゴの曲の名前です。
それを、前にまっすぐ伸ばした手のひらだけで止めました。という設定です。
善子「衝撃波?そよ風じゃない。お母さんも老いるには早いんじゃないの?」
善子母「まだ三十代よ。そんな口をきく子は、我が最大奥義で封印する!」
よっちゃん、地雷を踏んでしまったようです。ひょっとしてこれが津島家の日常なのでしょうか。
お母様、お若いと思ったけれど、実際そうだったのですね。
善子母「ポーラスターワンソードプレイ奥義、押して参る」
ポーラスターワンソードプレイ、どうしてアトランティスの剣術が英語なのかと思いましたが。
気がつきました。
北辰一刀流を強引に英訳したのですね。でもお母様、北辰一刀流で八相の構えってありなのですか。
善子「くっ、なに、この圧力、この輝き、さっきと全く違う」
よっちゃんは手で顔をかばいながら、まぶしさから目をそらすような仕草をしていました。
やっぱりよっちゃんと同じものが見えないのは寂しいです。
善子母「受けよ、我が奥義」
発想の構えから大地、いえ、床にたたきつけるような一撃。見事なエア剣術でした。
善子母「しまった、力が制御しきれてない?」
何か複雑な設定が始まったようです。
善子母「このままでは梨子ちゃんを巻き込んでしまう!」
え?なんかとばっちりがこっちに来ました。
いったいどんなリアクションを取ればいいのでしょうか。
善子「リリー!」
よっちゃんが、私を、荒涼たる大地、もとい、ソファに押し倒します。
いえ、これは、お母様の奥義の余波から私を庇って。
善子「ぁぁぁあああああああああっ!」
よっちゃんは、背中でその力の全てを受け止めていました。
そして、全ての力を失って、私の上に倒れ込みます。
よっちゃんの髪が、私にかかりました。
お団子が、ほどけていました。
私の上でぐったりしたまま、よっちゃんが言います。
梨子「どうしてなんですか……どうして、私をかばって」
善子「リリーは、ヨハネのもの。愛した人を守れなくて、何が堕天使だというの?」
善子「多分、このままではヨハネは消えるわ。今の一撃を止めるために、力のほとんどを使ってしまった」
善子「ヨハネが消えて、人の子のよよよよよよよよ、よ、よし、よしこになっても」
善子「そ、その、よ、よ、よしこのこと、好きでいてあげて」
シリアスなシーンのはずですが、やはり本名を口にするのは抵抗があるようです。
そんなところもよっちゃんらしくてかわいいですよね。
でも、こんなよっちゃんを見ていると。
梨子「だめです。私は、ヨハネのよっちゃんが好き、善子の」
善子「ヨハネよ」
こんなところでも訂正を忘れないのですね。でもとりあえず話を進めます。
梨子「よっちゃんが好き。どっちも好き。だから」
私の髪を纏めているヘアピンを外しました。そして、それを使って、よっちゃんの髪をまとめて。
梨子「堕天使ヨハネ、よみがえって!」
お団子をつくって、私のヘアピンで留めます。
よっちゃんが、身体を起こしました。
唇に何か触れた感触。あ、なんか雰囲気のどさくさに紛れてキスされちゃったようです。
今の、初めてだけどよっちゃんならいいのかなっていう気がします。
ところで、お母様見てる前だけれどいいのでしょうか。
善子「ならば、ヨハネも、リリーからもらった力全てをもって、お母さんを倒す」
よっちゃん、格好いいです。
善子「そして、リリーと二人、淫らでただれた時間を過ごすわ」
よっちゃん、それで全部台無しです。
善子母「な、何?さっきとオーラが違うっ」
お母様は、手の中が何もなくなったようなそぶりを見せました。
善子母「そんな、ホーリーアンドブライトが消えた」
よっちゃんの力で、剣が消えてしまった設定のようです。お母様もノリノリでした。
よっちゃんが、両手を前に突き出しました。
善子「ヨハネは、人の子を愛したが故に段天した。だから今は、その愛にこの一撃を捧げる」
……よっちゃん、多分ノリと勢いで、自分のプロフィールが変わってますよ。
普段から不幸だから、自分は天から落とされた堕天使って言ってませんでしたっけ。
善子「受けよ、堕天使の激怒(ヒューリーオブグリゴリ)ッッッ!」
よっちゃんから、黒いオーラが噴火するように吹き出します。
あ、何故かわたしにも見えるようになってきました。
ところで、よっちゃん的に堕天使をカタカナで言うときはグリゴリとなるのでしょうか。
お母様を、触手のような闇が幾重にも取り囲みます。
善子「そう、これが堕天使の力、堕天使の感情、その全てを見に受け、散りなさい」
そして、握り込むように包み込んで。
善子「ぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉおおおおおお」
押しつぶします。
善子母「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
爆発するのでなく、収縮するように闇が晴れました。
お母様が、ぐったりと倒れ伏していました。
纏っていた鎧が、外れていました。
善子母「見事母を討ち取りましたね。もうあなたを力で止められるものはいないのでしょう」
善子「お母さん……」
善子母「だから、梨子さん」
お母様が私に手を伸ばしました。そして、手をとると。
善子母「こんな子だけれど、善子のこと、頼んだわよ……万が一の時は、あなたが力でなく、愛で止めてあげてね」
梨子「よっちゃんのこと、私が、私がそばで支えますから」
善子母「ありがとう」
お母様の手から力が抜け、私の手から滑り落ちました。
梨子「どうして、こんな悲しい戦いを見なければならなかったの?ねえ、よっちゃん、教えてよ」
よっちゃんが、後ろから私を抱きしめます。
善子「何も、言わないで。今はこうさせて」
そう、戦いに勝ったよっちゃんの方が、悲しいのでしょう。
自分のお母様を倒したのですから。
だから、私は廻された手に自分の手を置いて。
向き直ると、沈んだ表情の堕天使ヨハネの唇に、自分を捧げようと。
お母様が、むくっと起き上がっていました。
それはそうですよね。
だって、さっきのって冷静に考えるまでもなく能力バトルごっこだったわけですから。
善子「お母さんも、もう少し死んだふりしてくれてもよかったのに」
善子母「親の立場ではそういうわけにはいかないのよ」
うわぁ。よっちゃんとお母様の能力バトル空間に取り込まれていた状態から、我に返ってみると。
その。
顔が、ものすごく熱くなります。だって、よっちゃんに自分からキスしようとしていたところ、見られていたわけですから。
梨子「あ、あの、これ、簡単なものですが、お世話になるお礼と言うことで」
ごまかすように、持ってきていた贈答用の焼き菓子セットをお母様に差し出しました。
善子母「あらあら、気を遣わせてしまってごめんなさい。あとでお家の方にお礼のお電話差し上げたいから、番号を教えてね」
梨子「あ、はい、母の番号がこれで」
なんといいますか、取り繕うように普通の会話をします。
善子母「ところで梨子ちゃん」
梨子「な、なんでしょうか」
善子母「リリーってかわいい名前ね。私も梨子ちゃんのこと、リリーって呼んでいいかしら」
善子「だめよ。リリーって呼んでいいのはヨハネだけなの」
善子母「じゃあ、善子のこともヨハネって呼んであげるからそれで手を打たない?」
善子「ぐぬぬ」
よっちゃん、ものすごく葛藤しています。しばらくそうやって考えてから、
善子「そ、その、うちでは、よ、よしこでいいから、リリーはヨハネだけのものなの」
善子母「はいはいわかりました。梨子ちゃん、こんな子とこんな親だけど、仲良くしてもらえるかしら」
梨子「はい、それはもちろんです」
ちょっとエキセントリックなところのあるお母様だけど、それ以外は割と普通の方のようですね。
あれ?ごく普通に、お母様は自分を数に入れてますよね。
善子母「ちなみに夫の前世はアトランティスの吟遊詩人メロスで、私達はオカルト雑誌の文通コーナーで知り合ったの」
流石に、ここまでのいきさつを見聞きしてしまえば、あり得る話だとしか思えませんでした。
前世名がメロスであることすら、いまさら感があります。
でも、私の横で、よっちゃんが固まっていました。
善子「お母さん、それ初めて聞いた……よしこおうちかえるー」
(おわり)
梨子ちゃんから三年生への呼称は、CYaRonのドラマCDを参考にさせていただきました。
また、津島家の家庭環境は本作オリジナルです。
善子ちゃんの両親がムー民だったなんて設定は、多分きっとないはず、です。
よはりこ三津シーデートも構想中というか、三津シー巡礼中に
脳内でヨハりこが俺の横でキャッキャウフフしていたんだ。
ヨハりこの共通点は、他所から内浦に来ている「余所者」同士という面も
あると思うんだ。
次回はもっといちゃいちゃを期待したい。
次作にも期待
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