【ラブライブ!】真姫「ある夏の日の出来事よ」
- 2020.04.18
- SS

ビジネスビルの5階に構える私塾だったわ
小規模だけど、きめ細かい指導が売りで合格実績も良かったのよ
それで月曜日から金曜日まで、午前中の3時間塾で講義をとったのよ
まあ、初めての場所で緊張したけど講義が始まればすぐに集中したし気にならなくなったわ
講義が始まって30分ぐらい…たったころかしら
先生が黒板を消したる間に、ふとビルの窓から外を眺めたのよ
駅前ということもあって、おおくのビルが乱立しているような場所だったわ
その中の…わたしがいるビルの斜め右向かいのビルの、屋上に立つ人影が目に入ったわ
黒い長髪が風に靡いてるように見えたので、女性だと思ったのよ
着ていた服は… もうあまり覚えてないけど、淡い黄色のロングスカートを履いていたことを覚えているわ
わたしはその女の人が目に映ったときから、なぜだかじっと見て… いや視線を移せずにいたわ
何分くらいだったかしら、たぶん実際は数秒の間ね
いきなりその女の人が、屋上から飛び降りたのよ
急いで視線をビルの下を通る歩道に移したの
けれども、どこにもその女の人の姿を見つけることはできなかった
もともと非現実的なことは信じていたタイプではなかったし、見間違いだろうと思い また黒板に顔を向けたわ
塾が終わって家へ帰ろうと思ったときに、そのことを思い出して
女の人が落ちたビルの下まで行ってみようかなっていう考えが頭をよぎったわ
でも道路をわざわざ横断するのが面倒だったし、なにより当時は見間違いだと完全に思い込んでいたから
そのままビルに背を向けて家路に着いたわ
ここで話は終わり……
ってなればよかったんだけどね
また同じ時間に塾へ出向いて
同じ時間に、同じ教室で講義を受けたわ
これは憶測だけど、あのときも講義開始から30分後くらいね…
また窓の方に、ちらりと目をやったのよ
まあ昨日のことがあったし、少しは気になるものでしょ?
そしたらね、 いるのよ
昨日と同じところに
昨日と同じ服を着た
昨日と同じ女の人が
全身が つま先から髪の毛まで全身よ
硬直したようにね
瞬きもしないくらいの勢いで、全身が固まってね
頭で理解が追いついてないけど、身体は反応するのね
なんで? って あたまの中はそれだらけよ
もう落ち着ける余地はとてもなかったわ
目は一直線にそこへ釘付け
そしたら女の人が動き出してね
その刹那、 あっ くるな
って直感したの
なにがくるのかって?
わかるでしょ
また、落ちたのよ
その時思ったわ
昨日と同じような落ち方よ
屋上から
動いたと思ったら ひゅっ
と下に落ちていくの
落ちた先に目を向けてももちろんそこに彼女はいないわ
何分か固まったのちに、また私は窓から目をはなし、身体を黒板のある方へ向けたわ
心ここに在らずって感じだったけどね
その日は塾が終わった後、なにもせずにすぐに家に帰ったわ
やっぱり気味が悪いもの
家でお風呂に入ってる時に、あれはなんだったのだろうかって思ったけど検討はつかないし
やっぱり見間違いだ、私は疲れているのだ
そう考えて片付けたわ それが楽だったし
その日は早く寝たの
翌朝よ
また同じように塾へ向かうわ
そして昨日と同じ教室でまた講義を受けるの
でもこの日は私は最初からずっと窓の外を眺めていたわ
いや、ビルの屋上を見ていた の方が正しいわね
なぁんだ、やっぱり見間違いだったのね
それか誰かのいたずら?
なんでもよかったわ、得体の知れない気味の悪さが払拭されて ちょっとほっとしたわ
でもその安堵も すぐに消え去ることになるのよ
やはりまた講義が始まって30分後、時計を見てたわけじゃないけどおそらくその頃ね
なぜか私はまた窓の外を向き、 たぶん無意識ね
そこでまた見てしまったのよ
屋上に立つ女の人を
怖かったわ、そりゃ
でも人間って慣れるものなのよ
怖かったけど同時に 冷静でもあったのよ
身体は硬直しているようだったけど、頭の中はいたって冷静よ
「今日も現れたわね」って
そのせいか、前日までよりもよくその女の人を観察できたわ
後ろに手を組んで立っていてね
昨日までは気づかなかったけど、ずっと同じポーズをしていたのね
そんなことを思っていると
突然、女の人に動きが
「あっ、くるぞ」って思ったわ
落ちていく
3度目となれば見慣れちゃうものね、 別に見慣れたくてそうしたわけじゃないけど
でもここで、私はあることに気づいたのよ
なぜいままで気づかなかったのかしら
女の人は 飛び降りたそのビルに
背を向けて落ちていってたのよ
別の言い方をするわね
その女の人は
わ た し の い る 方 を 見 な が ら 落 ち て い っ て た の
女の人に動きがあってから落ちていくまでを、全部目で終えたわ
するとね、落ちていって地面につく瞬間に 消えるのよ
ぱっ とね
下の歩道を歩いている人は多くいたけれど、誰も気づいてないみたいだったわ
私は認識せざるを得なかったわ
あれは人間ではない、 とね
その晩、家のパソコンで少し調べたのよ
不本意だけれど、自分がこの目で見てしまった以上… 三回もよ? …
信じざるを得なかったわ
もう言いたいことはわかるでしょ?
そう、あれはおそらく幽霊の類ね
そう私は目星をつけたの
そして辿りついた結論が
「地縛霊」
自分が死んだことを受け入れるらことができず、死に場所から離れることができない霊のことよ
ほら、最近話題の… そうそれよ あのキャラクターの設定も 地縛霊なのよ
…違うわ、調べてたらでてきたのよ たまたまよ たまたま
でね、まあ地縛霊なんだろうなって思ったわ
ひょっとして、自殺を図ったけどまだこの世に未練があって
成仏しきれない地縛霊なのかもなって
そう思うと、 なんだか少し 悲しい気持ちになったわ
あの女の人は どんな理由があって飛び降り自殺なんてしたのかしら
どんな境遇にいたのかしら
でも、わたしが想像を巡らせたところで、それは永遠にわからないわ
本人に聞かない限りね
私はその日も塾に行ったわ
そしてその日も、その女の人が落ちていくのを見たの
でも不思議と怖くなかったわ
変な話かもしれないけど、幽霊に情がうつったのよ、ふふ
昨日そんなことを考えていたせいか
どうもその女の人の顔は… いや遠くだったからわからないのだけれどね
泣いてるようにも見えたわ
あなたはなぜ泣いているの
あなたはなぜそこから飛び降りたの
何があなたをそうさせたの
…なんだか物悲しいわね
…え? 虚妄って何って?……
まあようするに妄想よ、妄想
その日も落ちていく彼女をみたわ
気持ちが変わると、見え方も全然変わってしまうものよね
彼女がビルから飛び降りる、その姿は、一輪の健気に咲いていた野花が
散ってしまったかのように思えたの
…いいじゃない、本当にそういう風に見えたんだから
でね、翌日よ
その日は最後の塾の講習の日でね
つまり、その女の人を見るのも最後ってことよ
ちょっと寂しくなってね
その日も、しっかり彼女が落ちていくのを見届けよう
そんな風に思ってたわ
あの、いつものビルの屋上から
今日も彼女は落ちていく
私はただじっと それを見ているの
さっきいっように、彼女は私のいる側へ顔を向けてながら落ちていくのよ
私からみて仰向けって感じね
そんなはずはないのだけれど、目があった気がしたのよ
なにかを訴えかけているような、そんな風に感じてならなかったわ
その日は塾に残っていって、夕方まで勉強したのよ
そろそろ帰ろうと思って、塾をでて、ビルからでて
その時、不意に 例のビルが目に入ったの
最初の方の日は怖くて近づこうなどと思わなかったけど、その日はそのビルの下へ足を運んだわ
信号が変わるのを待って、道路を渡り
歩く人の間を縫ってそのビルの下へついたの
もう太陽が地平線に消えかかって、夕焼けと夜の色が混じったような時だったわ
確認するけれど
やっぱりなにもない
何かを期待していたわけじゃないけどね
手を合わせることだけして
軽く息をついて 踵を返して家に帰ろうと思ったの
その時よ
私の背後に なにか 後ろにぴったりとくっついているような気配を感じたの
息遣いが耳にかかるみたいだったわ
そしてそれと同時に
私は恐ろしいことに気づいた
なんの特集かは忘れたけど
人は飛び降り自殺を図るとき、普通は頭から、前のめりに落ちていくらしいのよ
わかる? 頭から前のめり
つまりよ
飛び降り自殺なら 「彼女」は 自分が飛び降りたビルの側へ顔を向けている状態になるわよね?
そしていままでの話で私が言ったこと
よく思い出して
「彼女は私の方を見ながら落ちていっていたのよ」
どう?
何かおかしくない?
彼女が落ちるとき
背中から地面に落ちていく形だったら
どう?
それなら私の方に顔を向けていても、なんらおかしくはないわよね?
でもこの場合、さっきいったことと矛盾するわよね?
この矛盾を解決点…
なぜ私は「彼女が飛び降り自殺をして死んだ」と思い込んでいたのかしら
背中からの飛び降り自殺なんて普通じゃない
合理的に考えるなら…そうね…
誰かに突き落とされた
とか
「 殺 さ れ た 」
このことを、恐ろしい速さでわたしは理解した
ほぼ同時に、体の毛という毛が逆立ったような気がしたわ
そして私の後ろ 後ろ
すぐ後ろから
ぼそり ぼそり と
でもハッキリと 大きな声が聞こえた
私は 弾けたように その場から走り出したわ
家につくまで 猛ダッシュ
汗をかくのも気にせずにね
家についたときは汗が滝のようにでて、もう酷かったわ
その汗が走ってかいた汗なのか、はたまた冷や汗なのか…
たぶん両方ね
もちろんそこの塾にも行ってない
あのとき感じた気配と、妙に湿った声の主を
私は目視しなかった できなかった
けれど、 あれは私だからわかる
私の後ろにいたのは間違いなく…
さ、この話はここで終わりよ
…え? 耳元で言われた言葉は何かって?
…そんなこと、知らなくてもいいでしょ
私から一つ言えることは、
怪しいものにはかかわるな
これに尽きるわ
おわり
まあ怪談なんて似たような話はごろごろあると思うけど
凛「雨がよくないものをつれてきたらしい」
過去のホラー、よければ
おつ
前の話も楽しんで読んだのだった
真姫ちゃんの語り口が頭良さそうで好きだった
ありがとう
乙
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