【ラブライブ!】梨子「ヨハネSOS」
- 2020.04.23
- SS

梨子「ん? どうしたのよっちゃん」
善子「昨日、街中で変なおばさんに声かけられてたけど」
梨子「あ……あれね。なんか、キャッチセールスにひっかかっちゃって……」
善子「リリーは人がいいから、そういうの断れないでしょ」
梨子「うう……」
善子「全く……そんなんでよく東京で生きていけたわね」
梨子「東京のほうが、人が多くて逆に紛れられてたのかな……私って、地味だから」
善子「そう? まあ、都会のほうが変な格好の人は多いわよね」
善子「……そうだわ」ゴソゴソ
梨子「?」
善子「はい、これ」
梨子「……えっと、なに?」
善子「私特注のお守りよ。それに魔力を込めながら「ヨハネ、召喚」って唱えてみなさい」
梨子「……カラスの、羽根?」
梨子「えっと……よ、ヨハネ、召喚……///」
善子「ダメよ。魔力が篭ってないし、ポーズも決まってないし、そもそも恥じらいを捨てなさい!!」
梨子「あはははは……でも、ありがとう。よっちゃん。嬉しい」
善子「ヨハネよ。礼には及ばないわ」
善子「眷属を管理するのも、堕天使の仕事ですもの」
梨子「……」クルクル
梨子「魔力って……どう、込めればいいんだろ」
梨子「……」クルクル
梨子「ま、いっか」
梨子「………」クルクル
千歌「どうしたの? 梨子ちゃん。その羽根」
曜「もしかして……善子ちゃんの真似?」
梨子「マネっていうか……よっちゃんからもらったお守り、かな」
千歌「ほぇ~」
曜「でも、善子ちゃんらしいよね」
梨子「あはは……」
曜「でも、お守りってことは、何か御利益があるの?」
梨子「うーん……厄除け、になるのかなぁ」
千歌「厄除け……?」
曜「善子ちゃんの場合、厄を引き込んじゃうんじゃ……」
梨子「えっ」
千歌「ま、まあ! 信じる者は救われるっていうしね!」
曜「そうそう! 鰯の頭も信心から、だよ!!」
千歌「しょくばい?」
曜「どういうこと?」
梨子「えっと、これを持った状態で、召喚って言えばいいらしいんだけど」
千歌「面白そう! 試しにやってみてよ!」
曜「えぇ~……」
千歌「えーっ? 一度でいいから、やってみてよ!」
梨子「うう……///」
梨子「えっと……よ、よ……」
梨子「善子、召喚!」
曜「………」
梨子「や、やっぱり学校じゃ恥ずかしいわよ///」
ドタドタドタドタ
善子「ヨハネよっ!!」ガラガラガラッ
ようちか「「わわっ!!」」
梨子「え!?」
曜「いや、出てきたっていうか単純に声が聞こえてやってきただけじゃ……」
善子「ちょっとリリー! 召喚は貴方が窮地に陥ったときに「ヨハネ、召喚!」って唱えるんだって言ったでしょ!!」
梨子「ご、ごめんねよっちゃん!」
千歌「善子、召喚っ!!」
善子「違うわよっ!」
曜「……こっちのほうが召喚成功確率高いんじゃないかな」
善子「聞こえてるわよ、そこ!」
善子「リリーも笑ってないで! このっ! このっ!」ムニ~
梨子「ふぉふぇんふぁふぁい、よっふぁん!!」
善子「リトルデーモンの身でありながら主をからかうだなんて、いい度胸ね!!」
梨子「ひゃっへぇ~」
善子「だって、じゃないわよ! ほらほら!」
花丸「やめるずら?」スコッ
善子「痛っ!」
千歌「あ、花丸ちゃん!」
ルビィ「そしたら、多分梨子さんのいる教室だって……」
花丸「予想通りずら」
曜「え? ってことは二人には聞こえてなかったってこと?」
善子「ふふっ……我が眷属の発する呪言の言霊を感じ取れるのは、元々魔に近い魂を有するもののみ……」
千歌「よーするに、梨子ちゃんの声ならどこでも届くってこと―?」
曜「ああっ、千歌ちゃんが悪い顔してるっ♪」
千歌「ふっふっふっ……ちょーっと、ギルキスの歌詞、いろいろ思いついちゃったかもー!」
梨子「あんまり恥ずかしい歌詞は入れないでね!?」
善子「恥ずかしいとは何よ!!!」
ルビィ「うん、それじゃ、失礼します」
善子「悪用するんじゃないわよー」
梨子「あはは……悪用って……」
千歌「またねー!」
曜「ヨーソロー♪」
梨子「………あ、もうこんな時間」
梨子「さて……そろそろ帰ろうかな」
梨子(たまには学校の音楽室で作曲するのもあり、かな……)
梨子(まったく千歌ちゃんったら……こういうときだけは作詞が早いんだから)
梨子「こっちにも随分慣れてきたな……ちょっと前まで、バスが全然ないって言ってたのに」
ガヤガヤ
梨子「ちょっと、画材道具とか買って帰ろうかな」
梨子「あっ」ドンッ
通行人「きゃっ!」
梨子「ああっ、ごめんなさいっ!」
通行人「イタタタ……」
梨子「だ、大丈夫ですか?」
通行人「大丈夫じゃないわよぉ……」
通行人2「そうよ。これは賠償金ものかもしれないわ」
梨子「えっ」
梨子「そ、そんな……た、確かにぶつかってしまったのは悪いですけど……」
通行人「あいたた……これは骨が折れちゃったかもしれないわ。骨折よ骨折」
通行人2「そうよ。これは重大な事故よ」
梨子「そ、そんなはずないです!!」
通行人「私、カルシウム足りてないから骨が脆いのよ。痛いわぁ、痛いわぁ」
梨子「あ……あ……」
善子「ちょっとー! リリー!! なにやってんのよ!!」
通行人「くっ! バレた!!」
通行人2「ずらかるわよ!!」
タッタッタッ
善子「リリー!」
善子「大丈夫? リリー。なんか変なのに絡まれてたみたいだけど」
梨子「よ、よっちゃぁん……!」
善子「全く……都会からやってきたってだけで色々注目されてるんだから、気をつけなさいよね」
梨子「うう……」
善子「あんな輩に絡まれたら、一目散に逃げればいいのよ。全く、田舎も都会も、チンピラの品質は変わらないわね」
善子「ま! 私は元々都会派だし? むしろリリーに近いというか」
梨子「よっちゃぁん……!」
善子「こら! 泣かないでよ!! ちょっとぉ!!」
梨子「う、うん。ごめんね」
善子「……ほら、ハンカチ貸してあげるから」
梨子「……ありがとう」
善子「それはもういいってば。偶然通りかかっただけなんだし」
梨子「……お守りのちから、なのかな」
善子「――そう、かもしれないわね」
梨子「うん。ばいばい、よっちゃん」
善子「ヨーハーネーッ!!」
梨子「ふふっ」
梨子「……無意識の内に、召喚しようとしてたのかな」
梨子「……」クルクル
梨子「……リトルデーモン、か」
ブワッ
梨子「きゃっ!」
梨子「あっ、羽根が……!」
梨子「う、裏路地に飛んでっちゃった……!」
梨子「ま、待ってー!」
???「………」
梨子「ふぅ……なんとか見つかったわ」
???「」 ザッ
梨子「?」
梨子「………」
梨子(誰かしら)
梨子(真っ黒なローブで……逆光だから、顔が見えない)
梨子(……怪しい人だなぁ)
梨子(目を合わせないように……通り過ぎて……)
???「お前は……桜内梨子ちゃんちゅん?」
梨子「……は、はい」
梨子(! う、うっかり答えちゃった!)
???「我が名はトッ……コトホノスキー。この世に真の愛を知らしめる伝道師ちゅん」
梨子「コト、ホノ、スキー?」
コトホノスキー「お前は、この世の真の愛の理を破った大罪人ちゅん」
梨子「へ?」
梨子「え? え? いきなりな、なんですか?」
梨子(どーしよー!! 見た目だけじゃなくて中身も危ない人だよこれー!!)
梨子(っていうか、衣装担当の幼馴染と太陽のような子って)
梨子「千歌ちゃんと、曜ちゃんのこと……?」
コトホノスキー「やっぱり”ことほの”なんだよちゅんなぁ(^8^)」
梨子(い、言ってる意味がわからない……)
コトホノスキー「そして、リーダーに迫り寄る長髪クール属性は信用ならないちゅんなぁ……」
梨子(わ、わけわかんないけど……と、とりあえず、逃げなきゃ……!)
梨子「きゃあっ!!」
コトホノスキー「大罪人は許しておけないちゅん! 今ここで、罰を下してやるちゅん!!」
梨子「あ……あ……」
コトホノスキー「お前も、おやつにしてやろうか!!」<●>8<●>
梨子「っっ!」ダッ
コトホノスキー「あっ!! 待つちゅん!!」
梨子(だめ……土地勘がないから、走れば走るほど、迷っちゃう!)
梨子(でも……止まったら、追いつかれる!!)
梨子(今は全力で走るんだ!!)
コトホノスキー「行き止まりみたいだちゅんなぁ……」
梨子「ひっ……!」
コトホノスキー「お花は摘んできたちゅんか? GODにお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えながら壁クイされる心の準備はOK?」
梨子「あ……あ……」
梨子(声が……出ない……!)
梨子(助けて……!)
コトホノスキー「気を楽にするちゅん。なぁに、床の染みを数えてる間に事は終わるちゅん」
梨子「………!」
梨子(……お守りの、羽根……!)
梨子(落ち着くんだ……落ち着いて、呼吸を整えて)
梨子(額に添える……)
梨子(魔力を……羽根に、込めて……!)
梨子(助けて―――よっちゃん!!)
梨子「ううん……」
梨子「ヨハネ!! 召喚っっ!!!!」
コトホノスキー「ちゅんっ?」
コトホノスキー「………」
梨子「………」
コトホノスキー「……ちゅちゅっ」
コトホノスキー「ちゅーんちゅんちゅんちゅんちゅんっっ!!」
コトホノスキー「ついにおかしくなったちゅん!」
コトホノスキー「そんなへんてこりんな黒い羽根におまじないしたところで」
コトホノスキー「だーれも、助けになんか来やしないちゅーん!!!」
梨子「よっちゃんは……ヨハネは!! 約束を!!」
梨子「契約を、違えたりは、しないっっ!!!」
コトホノスキー「おめでたいやつちゅん」
コトホノスキー「信じるのは勝手ちゅんが、そのお祈りは神様に届いたちゅんか?」
コトホノスキー「神様は、誰か遣いを寄越してくれたちゅん?」
コトホノスキー「悲しいちゅんなぁ……お前の願いは、闇に吸い込まれていっただけちゅーん!!」
梨子「闇に……」
コトホノスキー「さあ。お前の命運はここで尽きるちゅんっっ!!」
カーカー
梨子「……カラスの、鳴き声?」
カーカー
カァーカァー
梨子「……こっちに、来てる?」
コトホノスキー「何ちゅん? うるさい鳥ちゅんねぇ……」
カーカーカーカーカーカー
梨子「えっ、なになになにっ!?」
コトホノスキー「ちゅんっ! ちょっ!! このカラスどもっ!!」
コトホノスキー「鳥類を束ねるこの私にっっ!! 歯向かうちゅんかっっ!!!」
コトホノスキー「くっ!!! は、離れろちゅんっっ!! 離れろぉおおお!!!!」
梨子(無数のカラスが集まって、目の前の人に群がっている……!)
梨子(……カラスの、羽根)
バサバサバサバサッ
梨子(で、でっかいカラス!?)
梨子(……ちがう。カラス……じゃ、ないっ!)
梨子(外套……黒い羽根で編み込まれたマントだ……!)
梨子「よっちゃん……!?」
善子「ヨハネよ。それにしてもリリー。私を召喚したということは、助けが必要なのね?」
梨子「えっ、あっ、うん?」
善子「……そう。ならばこの指に契約のくちづけを」
梨子「契約の……く、くちづけっ!?」
梨子「え? え? ええっ!?」
善子「助けてほしいんでしょ?」
梨子(な、なに!? 展開が急すぎてついていけないんだけど……)
梨子「……よっちゃん、だよね?」
善子「ヨハネよ。自分で召喚したんでしょ?」
梨子(本当に、よっちゃんなのかなぁ……)
チュッ
善子「ふふっ……指に口づけするだけで真っ赤になっちゃって……」
梨子「し、芝居がかかりすぎだよ……///」
善子「……でも、貴方の魔力。しかと受け取ったわ」
善子「――契約は、ここに果たされた」
コトホノスキー「お、お前っ! な、なにものちゅんかっ!!」
善子「我が名はヨハネ。人を堕落させた罪で、天界を追われた堕天使……」
善子「もっとも今は、リリーを守る守護天使といったところかしら?」
コトホノスキー「何をわけのわからないことを……!!」
善子「リリー。少し、燃えるわよ」
梨子「へっ?」
梨子(よっちゃんの手から、黒い炎がっ!?)
善子「さぁて……闇の炎に抱かれて、永久の眠りに就きなさい!!」
コトホノスキー「ちゅん?」
善子「”黙示録の黒炎奔流(アポカリプス・ブラックフレア)”!!!!」ボォッ
コトホノスキー「ぢゅ゛ん゛っ!?!?!?」ゴォッ
梨子(よ、よっちゃんが!! ま、まほーつかいになっちゃった!?)
善子「やれやれ。焼き鳥にしては、食いでがなさそうね」
コトホノスキー「ぢゅぅううううううううううううううんっっっ!!!!!!!」
コトホノスキー「ちゅんなっ!! こんなバカなことがっっ!!!」
コトホノスキー「お前は……一体、何者ちゅんかっっ!!!」
善子「だから、言ったじゃない」
善子「我が名は、ヨハネ。リリーの、守護天使……いいえ」
善子「守護堕天使よ」
コトホノスキー「お、おぉおおおおのぉおおれええ!!!!! 覚えておくちゅううううんんんんん!!!!!!!」
善子「ふぅ……大丈夫? リリー?」
梨子「………」
善子「立てる?」
梨子「……あ、うん」
善子「とりあえず、表まで付いてってあげるわ」
梨子「あ……うん」
善子「……リリー?」
梨子「えっと……その……」
善子「……私達の契約は、誰にも内緒よ?」
梨子「!」
善子「ふふっ……もし、口が滑っちゃったら……リリーも、燃えちゃうかもよ?」
梨子「い、言わないっ!! 絶対言わないからっっ!!!」
善子「冗談よ、冗談」
梨子「うん……え、っと……」
梨子「よ、ヨハネちゃん!!」
善子「?」
梨子「きょ、今日はありがとう!!!」
善子「……ふふっ。礼には及ばないわ」
善子「これも、主の努めですもの」
梨子(結局、今日の出来事は一体なんだったのだろう)
梨子(あの怪しい人は、まあ置いといて)
梨子(善子ちゃん……いや、あれは本当に……)
梨子「……どうしよう。とんでもないものと契約しちゃったかも……!」
梨子「あわわわ……もしかして、本当にリトルデーモンになっちゃった……!?」
梨子(……でも)
梨子「……よっちゃんなら、別にいいかな」クルクル
梨子「あ、おはよう」
花丸「おはよー」
ルビィ「おはようございます」
梨子「……あれ? よっちゃんは一緒じゃないの?」
花丸「あ、善子ちゃんなら、あっちでいつもの日課してるずら」
梨子「……日課?」
ルビィ「脳内の天使さんと喋ってるんですって」
花丸「いまじなりーふれんど? みたいなものかな」
梨子(……まさかね)
梨子「……」
花丸「盗み聞きしても、面白いことしかいってないよ?」
ルビィ「マルちゃん……」
梨子「え、えっと……な、なんか、ユニークなこと喋ってるみたいだし、作曲のネタにならないかなーってね!」
花丸「まあ、マル達は先に行ってるねー」
……あら
善子「……随分と気前がいいのね、ヨハネ」
――そうかしら?
善子「天界に戻るためにも魔力は節約しておきたいんじゃなかったの?」
――そうね。
善子「その割には、大盤振る舞いだったみたいじゃない」
――ふふっ。だって、必死な魔力を感じちゃったんですもの。サービスだってしたくなるわ。
――それにしても、リリーちゃん? 可愛い子よね。
善子「まあ、私の愛しいリトルデーモンだもの」
――本格的に私の眷属にしちゃいたいなあ……ふふっ。
善子「ヨハネ!? だ、だめよ!! リリーは私のなんだからね!!」
――私の? 私の何だって?
善子「~~~~っ!! べ、別になんだっていいでしょ!!」
――ねえねえ? 私の何? 善子ちゃんの何? あの子は何何なんなのー?
善子「うっさい!! いちいち脳内で煽ってこないでよ!!!」
――でもな~。また助けを呼ばれちゃうかもしれないからな~
善子「呼ばない!! リリーには私が付いてるんだから!!」
善子「あんたなんて、早いとこ自分の巣に帰っちゃえばいいんだからー!!」
梨子「………」
善子「あ………」
善子「……聞いてた?」
梨子「………独り言なんだよね?」
善子「………ひ、独り言よ」
梨子「………」
善子「な、なんか言いなさいよ……!」
梨子(私は、やっぱり)
善子「何よ……その、なんていうか……形容しにくい視線は」
梨子(色々と、とんでもないものと契約しちゃったみたいです……)
梨子「ううん。なんでもないよ」
善子「目を見て話しなさいよ!!」
梨子「……これからもよろしくおねがいしますね。ヨハネ……さん?」
善子「!」
――ふふっ♪
梨子「だって……何も見えないし、聞こえないし……」
善子「さっきのは私の独り言なんだから!! 誰もいないし、喋ってないの!!」ガシッ
梨子「わ、わかった!! わかったわよっちゃん!! だ、だから離してー!」ガクンガクン
善子「いいえ! 誤解を解くか、記憶が消えるまでは離さないわ!!」
梨子「うわわっ!! た、助けてヨハネ―!!」
善子「こんなところで召喚するなーーーっ!!!」
ヨハネSOS おしまい
ヨハネと呼べばヨハネ、善子と呼べばよっちゃんが来る羽根は便利ね
ホンモノが憑いてる系の善子SSって意外とないよね
乙乙
新鮮だった
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