【ラブライブ!】善子 「恋をした。あなたのすべてに」
- 2020.04.27
- SS

まるで今にも目を覚まして、いつもの訛り癖のある喋り方で、おはようの挨拶をしてきそうな、そんな顔。
だが、彼女が目覚めることは、もう無い。
咽び泣く両親の嗚咽が、頭の中を掻き乱す。
後ろからは、友達の泣き叫ぶ声。
みんなが涙を流す中私は--
あなたの死に顔に、みとれていた。

それでも私は、胸の高鳴りを抑えることが出来なかった。
あなたの顔が、あまりにも綺麗すぎたから
だがこの気持ちを、もうあなたに伝えることは出来ない。
今この場で、彼女の亡骸に向かって言っても、“本当のあなた” に伝えたことにはならないから。
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列を作り、皆、彼女の遺影の前で焼香を行う。
その煙の匂いに紛れて、棺桶の檜の匂いが、時折鼻をくすぐる。
焼香を済ませると、私の足は自然と棺桶の元へと向かった。
ガラス部分から、彼女の顔がちらりと覗く
相変わらずの、綺麗な顔。
ヒソヒソと、親戚の人達であろう声が聞こえてくる。私の行動を不審がり、嘲笑うかのような声
--構わない。
あなたに近づくには、こうするしかないから。
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皆、彼女の死を乗り越え、新たな道へと進み出した。
私はただ立ち止まって、足踏みをするだけ
時々、あなたの夢を見る
目をつぶっているのに、見たくないのに、あなたの笑顔が、眩しく私の視界を支配する
昨日、ついあなたを叩いてしまった
あなたは何も悪くないのに。悪いのはあなたのことを忘れられない私なのに。
それでもあなたは、次の日になると、変わらない笑顔で私の夢に現れる。
そんなあなたに、私はまた恋をする
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喫茶店で本を読んでいる人を見かけた時
なんとなく、図書館に立ち寄った時
本から、栞を取り外す時
ふと、あなたのことを思い出す
決して、いつもは忘れている訳では無い
その瞬間に、強くあなたのことを思い出す、それだけのこと。
引き出しの奥から、昔無くしたおもちゃが出てきたりすると、つい歳も忘れて熱中して遊んでしまうことがある。
今、まさにそんな気分だ。
…少し、訛りが強すぎるだろうか。
いや、確かこのくらいだった。
あなたの笑顔は、どんな感じだったかな
…眩しすぎて、よく覚えていないや
あなたの手は、暖かかったっけ
それとも、冷たかった…?
記憶の片隅に追いやられたあなたは、いつも寂しそうな顔をする。
眩しかったあの笑顔を、もう見せてくれない
…私はいつ、“本当のあなた” に、好きと伝えられるのだろう
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薄れゆく意識の中、あなたの姿が鮮明に思い浮かぶ。
思い出せなくなっていたあなたの笑顔、手の暖かさ、声、香り…
今、やっと思い出せた
あなたはいつも笑顔だった。
私が落ち込んだ時、あなたはその暖かい手で、私の手を包み込んでくれた。
優しい声で、私を幸せにしてくれた。
その香りで、私を安心させてくれていた。
…声が、聞こえる。
私が今まで頭の中で一緒に過ごした、“偽物のあなた” の声。
私は無言で頷く。
「もう、偽物とはお別れ。今度こそ本当に…」
言い終わる前に、私は彼女を抱きしめた。
偽物なんかじゃない。あなたは立派な、もうひとりのあなた。
…優しくキスをした。
嬉しそうに微笑み、あなたは次第に消えていった。
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“本当のあなた” に、恋をした。
あなたは私を、そっと抱きしめる。
長い旅路で疲れ果てた私の体を、あなたはその柔らかい体で包み込む。
「お疲れさま」 と、声をかけてくれた。
優しい声、香り。
自然と涙がこぼれた。
あなたの背中に手を回し、ぎゅっと抱きしめる。
……今度こそ私は、本当の恋ができる。
「久しぶりずら、善子ちゃん。」
終
最後まで読んでいただきありがとうございました
過去作も是非お願いします
ことり 「私の来世!?」
穂乃果 「もし世界から、ラブライブ!が消えたら」
千歌 「私目覚めたんだ…超能力に!」
曜 「幽霊は、輝けないですか?」
アホだからわからん
長い旅路ってことは寿命が来るまでずっと生きてたんだと思うよ。
結構長い間あってなさそうだし
いい雰囲気
お疲れ
長い旅路もそうだし記憶が薄れる描写もあったしな
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