【ラブライブ!】穂乃果「饅頭物の怪」
- 2020.03.27
- SS

いえ、ただ饅頭を買いに来るだけ。二、三度言葉を交わして帰っていく。
他の客と変わりませんよ。雑談をしないだけ他の客より上等かもしれません。
何で物の怪だと思ったのかって、姿が変わるんですよ。
ころころころころ、人の形を真似てるんですかね。ひょいと目を離せば変わってる。
「饅頭をください」
いつから居たのかは知りません。気付いたら店の中に居たんです。
「あれ、海未ちゃん? 全然気づかなかったよ」
「海未ではありません。饅頭をください」
淡々と言うので、担いでいるのかと思いながら饅頭を袋に詰めました。
詰め終え、ひょいと彼女に目をやると海未ちゃんは消え失せて絵里ちゃんがいたんです。
中々奇妙な光景でしたよ。何せ目を離したのは三秒ほど、入れ替わる時間もありません。
「これ、お代です」
妙に綺麗な百円玉を掌に置き、何事も無かったように店を出ていくのです。
見間違い、夜の眠気が勘違いをさせたのでしょうね。最初はそう思いました。
何せ物の怪だなんて思いません。人外の存在など、思い至るわけもありませんもの。
「饅頭をください」
やはり淡々と言うので、饅頭を詰め顔をあげるとことりちゃんへと変わっていました。
「ねえ、担いでるの? 何かトリックでもあるの?」
「これ、お代です」
やはり綺麗な百円玉。それだけを私の掌に置き、店を出ていきました。
「饅頭をください」
三度目となれば私も理解はします。目を離さないように饅頭を詰めました。
希ちゃんは誰の姿にも変わりませんでした。
「はい、お饅頭」
「これ、お代です」
やはり勘違いだったのでしょう。そう思いながら、綺麗な百円玉にほんの一瞬目をやり、視線を戻すとにこちゃんが此方をじっと見ています。
そこまで来て、ようやく私は目の前の物が人外だということに気付いたのです。
塩でも盛れば入ってこられなくなるのでしょうが、物の怪とはいえ、金を払って商品を持っていくからには客ですから。
母親に相談してみると、そういうことは前からあると碌にとりあってくれません。
物の怪にも好評なのだから誇るべきだと笑い飛ばされるほどです。
「饅頭をください」
その晩は真姫ちゃんでした。じっと此方を見ているので、私も動かずにじっと見ていると、
「饅頭をください」
と繰り返します。仕方なしに饅頭を詰め、目の前の凛ちゃんに渡しました。
その日の百円玉も妙に綺麗でした。
四日目に仲間八人の姿は使われ切っています。
はて、では物の怪は誰を真似るのか。妹達やヒデコちゃん達を真似るのでしょうか。
どう来るかと楽しみにしていると、
「饅頭をください」
目の前に、私がいました。
何の気なしに言ってみると、物の怪は笑いました。
「ええ、他に無かったもので」
初めて見る、見慣れた笑顔に私も笑いました。おかしくもないのに、ただただ笑いました。
饅頭を渡すと、綺麗な百円玉を掌に置いて物の怪はそのまま店を出ていきました。
最近、街でもよく見ます。姿が変わっても何となく分かるのです。
学校に来たこともありました、一緒にライブをしたこともありました。
今では私以外皆物の怪で、きっと私も近いうちに物の怪になるのでしょうね。
完
穂乃果「ふふーん、ふふー……あれ?」
穂乃果「あそこの壁、穴なんて開いてたっけ? 何かあったのかな」
穂乃果「……ちょうど潜り抜けられそうな」
穂乃果「……」ウズウズ
穂乃果「ち、近道になるしちょっとくらいいいよね?」
穂乃果「よいしょ……あ、やっぱり通り抜けられそ」
ミチッ
穂乃果「あれ? え、あれ? ちょ……お腹詰まった!?」
ミチッ
穂乃果「ま、前にも後ろにも進めない……!」
穂乃果「このままじゃご飯食べられないよー!」
穂乃果「何とか抜かなきゃ、うう……!」
穂乃果「ぜえっ……ぜえっ……全然動かない」
穂乃果「どうしよう……」
海未「……」
海未(壁から穂乃果の下半身が生えてる……?)
海未(成程、壁に穴があったのを見かけて)
海未(うずうずして潜り抜け得ようとしてみたら)
海未(失敗して引っかかった……そんなところでしょうか)
穂乃果「誰か助けてー!」ジタジタ
海未(ふむ、どうしましょう)
海未(引っ張ってみますか)
穂乃果「きゃっ!?」
穂乃果「え、誰!? た、助けてくれるの!?」
海未(うーん、結構ぎっちり詰まってますね)
穂乃果「いたっ……痛いっ! も、もうちょっと優しく引っ張って!」
海未(私一人ではどうにも……ことりを呼びますか)
海未(もしもし)
ことり(何、海未ちゃん?)
海未(穂乃果が壁尻状態で、私一人では助け出せられません。力を貸してください)
海未(早いですね)
ことり(近くに居たからね。で、これ?)
海未(これです。丁度詰まっているでしょう?)
穂乃果「あ、あれ……さっきの人いない……?」
穂乃果「ご、ごめんなさい! 優しくなんて言わないから助けてよー!」
海未(早く助けてあげましょう)
ことり(けど、二人で引っ張っても助けられるかどうか)
ことり(洗剤使う?)
海未(あるんですか?)
ことり(ないよ)
海未(仕方ないですね、普通に引っ張りましょう)
グイッ
穂乃果「ひぎぃっ!?」
穂乃果「そんな無理やり……痛いっ! や……んうっ!?」
グイグイ
海未(全く動きませんね)
ことり(穂乃果ちゃんちょっと太ったのかな? お腹のとこぎゅうぎゅうだよ)
海未(一旦離しましょうか)
ことり(辛そうだしね)
海未(どうします?)
ことり(やっぱり洗剤……かな? 買ってくるよ)
海未(ではここで見張っていますね)
穂乃果「うっ……ひぐっ……」
海未(泣かないでください、必要なことなんですよ)
海未(!?)
穂乃果「引っかかっちゃってね……引っ張ってくれるの? うん、ごめんね」
穂乃果「あ、抜けそう! うん、じわじわ動いていってる!」
海未(あ、抜けそうなんですね。前からなら余裕があったのかもしれません)
穂乃果「いけるいける! うん、ありがとう!」
海未(穴に穂乃果が飲み込まれていきますね、ふむ、助かってよかったです)
海未「向こうから絵里と希に引っ張ってもらって助かったようですよ」
ことり「ふうん、洗剤無駄になっちゃったかな」
海未「まあ、制服を洗剤塗れにしないで済んだと思えばまだマシですよ」
海未「ところでこの穴ってどこに繋がってるんですかね?」
ことり「さあ? この向こう、道なんてあったかな」
海未「穂乃果? そっちにいるんです……か……?」
ことり「海未ちゃん? どうしたの?」
海未「これ、穴ではありませんよ。ただの、黒丸の落書きです」
ことり「え……?」
完
もうひとつオマケお願いします
続きありげな終わりかたがイイね
おつです
怖い系やったか
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