【ラブライブ!】凛「星を数えて」
- 2020.04.01
- SS

窓についた水滴を指でなぞって、振り落として。
「りんちゃーん、やっぱり今日練習ないってー」
「…あ、ありがとう」
「なんか元気ないわね。どうしたの、凛?」
「……いや、雨って気分暗くなるかなーって」
ぼそぼそと喋る。
雨は、嫌いだ。
髪の毛がぼわぼわなるから、なんて女の子じみたものじゃない。
「……はぁ」
雨、か。
下駄箱で靴を履き替えていると、筆箱を教室に忘れたことに気がつく。
あ、と気付いた時にはもう遅い。
取りに行くのもめんどくさくて、もういいや、と傘を開く。
ばっ、と隣で傘を開いた少女の水滴が飛んで目に入る。
「…いった」
自分でもびっくりするほどの低い声が出て、思わず口を塞ぐ。
「…ごご、ごめんなさい!!!…って凛ちゃん?」
「…あ、ことりちゃん!」
下がっていた気持ちが少しずつ上がっていく。
「ことりちゃんことりちゃん、きょうひまー?」
「ごめんね、今日は布とか買いに行かなくちゃいけないんだ」
「そっかぁ…」
ふっと気分がしぼんでいく。
「…でも」
言葉に反応して顔を上げる。
「一緒に行ったら、もっと衣装がよくなるためのアドバイス、もらえると思う」
そう言って私の顔を見る、ことりちゃん。
「…凛も、一緒に行っていいの?」
今日だけは、好きになってもいいかな。
かっこいいなぁ、何て思って。
「凛ちゃん、そういえば新曲の歌詞、出来た?」
「ううん」
大きくかぶりを振って答えた。
そう、問題はそれなのだ。
真姫ちゃんから「なんかキラキラしてる曲書くからキラキラしてる歌詞、よろしく」と言われてしまった。
「じゃあ晴れの時の空の歌詞を書いてみたら?」とかよちんが教えてくれたので、そうしようと思っていた矢先の雨続き。
朝のニュースでキャスターが1週間は続くって言ってた。
「まだ全然かけてないの」
「そう、なんだ…」
「ことりちゃんは、何か衣装のアイデア決まってるの?」
ぴちょん、と傘が水滴を弾く。
水たまりに広がる波紋。
「ううん、もうすっかりまいっちゃって…」
悲しそうな顔をすることりちゃん。
「でも、すっごく可愛い衣装にするから!絶対!まってて!」
さっきの表情から一転、すごく希望に満ち溢れた笑顔をこぼす彼女。
穂乃果ちゃんはもう、おひさまーって感じが溢れ出てるし、
海未ちゃんは雷様って感じで。
ことりちゃんは、やっぱりお星様みたいなんだ。
いつでもキラキラ輝いてて、一人じゃなくてみんなと繋いだらもっともっと輝きを増す。
「…ちゃん、凛ちゃん!」
「!?なにっ!?」
「いや、凛ちゃんなんだか、心ここに在らずーって感じの目をしてたから…」
「心ココスアラブ?ってなに?」
「……ううん、なんでもないよ」
苦笑いしながら布屋さんに入っていくことりちゃん。
傘をくるくる回してたたんで、傘立てに刺すと少し水滴が靴に飛ぶ。
「…あ、靴下濡れちゃった」
まぁ、さほど酷くはなかったので、そのまま店内へことりちゃんの後に続いた。
美しく気高く。
そして可愛く。
まさに女の子、理想の少女。
そんなことを考えつつ、店内をぐるっと見渡してみると、色とりどりの生地が踊っているみたいで。
まるでカーニバル。
雨の中だけど、ここだけは楽しいカーニバル。
「…あ、今の使えそう」
何て思ったり。
「あっ!」
大事なことを思い出して、ことりちゃんの元に戻る。
「ねえねえことりちゃん、ことりちゃんがwonder zoneの歌詞書いた時って、どうやったの?」
「あー、そろそろ来ると思ってた、その質問」
「んでんで、なに!?」
「穂乃果ちゃんがね、教えてくれたの」
「今の気持ちを、そのまま、歌詞に載せるの」
「……なんて、すっごく分かり辛かったよね!ごめんね」
「……う、ううん!」
今の、気持ちか。
きらきらと輝くそれらの中に、
一つの小さなシルクハットが置いてあるのに気づく。
「わぁ、かわいいね!」
後ろでとろけるような声が聞こえる。
振り返ると、後ろから覗き込むようにしてシルクハットを見ることりちゃんがいた。
「それ、気に入ったの?
「あ…ううん、可愛いなぁって思っただけだよ!」
「じゃあ、それに合うような衣装にしていこうかな!」
「ええええ!?いいのぉ!?」
「だって、凛ちゃんがセンターでしょ?凛ちゃんの好きなもの、いーっぱい入れなきゃ!」
そういって微笑むことりちゃん。
そっか、凛の、センターの曲なんだ。
好きなもの、込めていいんだ。
ことりちゃんに手を振って、雨の中を歩いていく。
雨だというのに人混みは大きくて、傘の大群に追われている気もして。
なんだか飲みこまれそうになる。
「…今日、少し歌詞書いてみようかな」
誰にも聞こえないような声で、ぽつりと呟いてみた。
窓から外の様子を眺めても、雨は強さを増していて何も見ることはできなかった。
そういえば、とぽすんとベッドに座り、今日思い浮かんだことを思い返してみる。
「ことりちゃんは、お星様みたい。」
口から出た言葉に自分でギョッとするも、少し考えてみる。
星か。
海未ちゃんは雷様って思ったけれど、大人しくて綺麗だから土星とか?
穂乃果ちゃんはおひさまー太陽、だよね!
真姫ちゃんはアンタレスってやつだと思う!赤いんだよね!
かよちんはラブジョイかな!確かかよちんのお誕生日の近くに接近してたきがする!
希ちゃんは星の集合体って感じ。すぴりちゅあるにゃ!
絵里ちゃんは天王星。穂乃果ちゃんの近くにいて、水色で神秘的!
にこちゃんはやっぱり火星かな。ピンク色に見える、星。
前、かよちんに星座にまつわる神話を話してたらドン引きされていた。
星空、なんて苗字なんだから星のこと勉強なさいってママによく言われてた。そう話したら納得してくれたんだっけ。
ごめんね、ことりちゃん!なんて思いつつ、ベットにそのまま倒れる。
あれ、よく考えたら、μ’sって星の集まり、なのかな?
星を、数えて。
星に囲まれて、なんでも自由に羽ばたける。
一緒なら、全部楽しめる。
「……そっか」
こういう事なんだね。
「星を数えて」
「流れる人の波に、飲み込まれそうになる」
「一緒なら、全部楽しめる」
一語一句、間違えないように言葉に出して。
「星が、星が」
「綺麗だよ」
彼女のことを、思い浮かべて。
窓の外は、もうすっかり晴れていて。
満天の星空が広がって。
1つ、星が流れた。
「きっと一緒なら、楽しくなっちゃうね」
今日を、思い出して。
少しずつ、眠りに落ちていった。
そっか、昨日は寝ちゃったんだ。
「シャワー、浴びよ…」
寝ぼけ眼でもぞもぞベッドから起き上がる。
今、何時なんだろう。
手元にあった携帯で確認すると4時23分。早朝だった。
ーーーーーー
風呂場でシャワーを浴びていると、だんだんと眠気はなくなり意識が覚醒してくる。
今日は学校だし、朝練も雨だからやらなそうだし。
なんて独り言を言って、頭を拭きながら部屋へ戻ると、真姫ちゃんからメッセージが来ていた。
「…なんだろ」
タップして開いてみると、新曲の歌詞が入っていないもののmp3データだった。
「すごい…!!」
真姫ちゃんの予告通り、キラキラした曲。
思ったことは1つだけだった。
なんて、夜空みたいな曲。
今までにない感覚。
頭の中で、何かが繋がった音。
「……!!」
サビに入ると盛り上がりが増す。
何か、何か書くもの。ああそうだ、筆箱は昨日学校に!
仕方がないので全部携帯のメモへ書き連ねていく。
……30分ほど経って、完成した。
「……できた…!!」
生まれて初めての作詞だった。
気持ちをそのまま言葉にするのは難しくて、こそばゆかった。
真姫ちゃんに歌詞を書いたものをコピーペーストして送ると、「OK」との返事。
ふふっ、なんて自然に笑みがこぼれたりして。
タイトルを言い忘れていた。
考えていないわけがない。もうとうに決まっている。
μ’sと言う名の、星たちが集まって輝く。
歌に呼ばれて、星は導かれる。
これからの事を占って、星は一層輝くために努力をする。
一緒なら、全部、何もかも、楽しめる。
絶対に!
確かな指で、言葉を紡ぐ。
「hello,星を数えて」
おわり
ご要望とあらばことりんを少しだけ書き溜めてるのでよろしくお願い致します。
読んでくださりありがとうございました。
ことりんは流行ってもいいね
続けてもよろしくてよ?
続き書いてくれてもいいのよお願いします
「これ、ことりちゃんのこと考えながら作ったんだぁ」
恥ずかしいからそんなことは言えないけれど、一人で呟いてみる。
ことりちゃんからは18行にわたる大絶賛をもらった。
要約すると「すごい可愛い綺麗わたしこの曲に釣り合うような衣装作ってくる探さないでください」
…ことりちゃん、どこ行くつもりなんだろう。
何て思っていると、あっという間に時間は過ぎていた。
「いっけない!!あとちょっとで7時半だ!」
ばたばたと制服に着替えて、身だしなみを整えて。
「……あ、ちょっと前髪伸びてきちゃってる…」
じゃあ、ちょっとだけ。
「…りりり、凛ちゃん!?どうしたの!?すっごく可愛いんだけどそれ何!?」
かよちんにあったら発狂されてしまいました。えへへ、なんだか照れちゃうなぁ。
学校の廊下を歩いていると、みんなが声をかけてくれる。
「あれっ、イメチェン?かわいいー!」
「凛ちゃんなんでも似合うね!!」
「今までは元気~って感じだったけど、いますっごく女の子っぽい感じ!!かわいい!!」
みたいなコメントをいただきました。こういう時なんていうんだっけ。感無量だっけ。
授業を過ごして、部室に向かうとみんなが驚きます。
「「「「「「わぁ!!!かわいい!!」」」」」」
前髪をあげた、私を見て。
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