【ラブライブ!】「花夜食堂」
- 2020.04.14
- SS

東京、神保町。
都心に位置しながら閑静なこの土地に、私のお店はあります。
先代から受け継いだ、小さな食堂。
『花夜食堂 営業中
アイドル大歓迎!』
今日もホワイトボードにこう書いて、お店の戸にかけます。
高校を卒業して5年。
ここでスクールアイドルを応援し始めて、1年。
私の青春、スクールアイドルの熱は冷めることなく――
いえ、冷めるどころか、その熱さは更に増しています。
ラブライブ!ドーム大会も今年でなんと7回目。
参加者、注目度は私の頃の比ではありません!
今やラブライブ!は女の子の甲子園。夏の風物詩と言っても過言じゃないです。
そしてここ、神田、神保町、秋葉原……
この地域は、ブームの火付け役であるμ’sとA-RISEを産んだ土地として。
また、今も全国のトップクラスでしのぎを削る音乃木坂学院とUTX学院がある町として。
アイドルに憧れる少女達の聖地であり、全国屈指の激戦区でもある地域となっています。
特に、今は静岡のスクールアイドルが――
って、つい熱が入っちゃいました。ごめんなさい!
あ!そうそう、私のお店です。
そんな地域の端っこ。神保町の古書店に紛れてこっそり居を構えているのがこのお店です。
大学時代からここでアルバイトしていた私は、卒業と前の店主さんの引退を機にこの店を任されることになったんです。
店主さんももうお歳でしたから。
ホントは名前も受け継ぐつもりだったんですけど、店主さんが「お前の店なんだからお前が名付けろ」と言うので……
元々の店名から一字、私の名前から一字、でこう名付けました。
読み方は特に決めてません。はなよる、はなよ、はなや、かよ……なんでもいいんです。
ただ、自分の名前をお店に冠するのはちょっとだけ恥ずかしかったりします……自分で名付けておいて、って言われちゃうかもだけど。
とにかく!そんな経緯で、夢見る女の子や、偶像の仮面を被るアイドル達のために私はここでお店をやっています。
あ、そろそろ常連さんが来始める時間かな。今日のお客さんは誰でしょう――
雪穂「こんにちはー……やった、一番乗りだ」
カラカラ、と戸を引いて挨拶してくれたのは雪穂ちゃんです。
穂むらの看板娘として働く雪穂ちゃんは、2年間一緒にアイドルを頑張った大切な仲間。こうして卒業した後も良く遊びに来てくれます。
看板娘はアイドルみたいなものだから、もちろんこのお店としても大歓迎です!
さてそんな雪穂ちゃん、なんだか浮かない顔です。
花陽「雪穂ちゃん、いらっしゃい。今日はどうしたの?」
雪穂「それがさぁ!聞いてよ花陽ちゃん」
雪穂ちゃんとは高校時代、ユニットを組んでた時期もありました。
なので今も先輩禁止。それに、この歳になっちゃうと、一歳の差なんてあって無いようなものだよね。
花陽「疲れてたんじゃない?それか、酔ってたとか。私もお酒飲んだ次の日、冷蔵庫の中身が無くなってたりするし……」
雪穂「うんにゃ、あれは故意だよ絶対。だってマジックで名前書いたんだよ!?フタのところに、『ゆ き ほ』って!」
花陽「名前書いたんだ……」
雪穂「だってぇ!そうでもしないと絶対食べられちゃうんだもん!」
花陽「でも、それでも食べられちゃったんだよね……」
雪穂「食べられちゃったんだよぉ……」
穂むらではしっかり者の雪穂ちゃんですが、このお店ではいろんな愚痴や相談をしてくれます。
今日もいつも通り、穂乃果ちゃんの愚痴。二人は大人になっても仲良し姉妹で、姉妹のいない私は、ちょっと羨ましかったり。
花陽「そうだなぁ……いっそ、美味しくないプリンを作って置いておくのはどうかな?」
雪穂「それをおねえちゃんに食べさせるってこと?」
花陽「そう、囮作戦だよ。私、プリン作るの下手だから手伝えるよ!」
雪穂「それってお店の店主としてどうなの……?」
花陽「特別美味しくないって訳じゃないんだけど、なんというかこう、理想の食感に仕上がらないんだよね」
雪穂「ふーん。でも花陽ちゃんのことだからきっと美味しいんでしょ?」
花陽「まぁ、こういうのが好きな人ももしかしたらいるかな?って程度かなぁ。まだまだお客さんには到底出せないよ……」
雪穂「そっかー。でも囮作戦はいいかな。……たまにお母さんも私のスイーツ食べるから、流れ弾が当たったら危ない、私が」
花陽「高坂家ってすごいんだね……」
雪穂「こんなことで褒められましても」
花陽「うーん、特に珍しい物は無いよ。いつも通り」
雪穂「じゃあアレ、あれ作ってよ、アレ!」
花陽「かしこまりました♪ご飯も一緒でいいよね?」
雪穂「うん!今日は花陽ちゃんの所で食べるって言ってあるし」
花陽「じゃあ、お米は何にする……?北海道産ななつぼし、魚沼産コシヒカリ、秋田産あきたこまち……山形産はえぬきに、最近話題のふっくりんこも入荷したよ!!」
雪穂「うん、花陽ちゃんのオススメでいいよ……」
花陽「うん!じゃあ、ちょっと待ってね」
このお店にメニューはありません。
先代からの方針で、お客さんが食べたい物を、作れる範囲でお出ししています。
勿論作れない料理もありますけど、大抵の物は出せる自信があります。
材料が足りなかったら、近所の八百屋さんやお魚屋さんがあるし、最悪お客さんは常連さんばっかりなので、『今度来てくれた時作ります!』なんて。ちょっとズルだけど。
あ!お米のメニューはありますよ!お客さんが好きなお米を選んで食べられる、都内でも珍しいお店だと自負しています!
……でも、常連さんはみんな『オススメで』って言うんです。好きなお米を頼んでいいのに……遠慮してるのかなぁ?
まずは炊飯専用土鍋。最近の炊飯器も美味しく炊けますが、折角食べに来て頂いてるので、そこは手ずから炊くのが私の流儀です。
そして予め吸水させておいたお米を移し、火にかけます。真っ白なお米、とても美味しそうです。
さて、中華鍋を取り出します。一人分なので小さいフライパンでも良いんだけど、気分です。
まずはひき肉を投入。にんにくと鷹の爪と一緒に軽く炒めて、ひき肉さんにはおいしい油を出してもらいます。
雪穂「うわー懐かしい。合宿を思いだすわー」
花陽「高校の頃は家庭科室で作ってたから、火力が足りなくて大変だったよぉ」
雪穂「合宿の夜ごはんと言えば花陽ちゃんのコレと白飯だったよね」
花陽「コレはね、アイ研の伝統なんだよ。先輩から後輩へ受け継がれていくんだよ」
雪穂「え!?私教えて貰ってないよ!?」
花陽「あ、ごめんね。部長だから亜里沙ちゃんには教えたんだけど……」
雪穂「そんなぁ……生徒会長なんかやるんじゃなかった」
花陽「生徒会長の伝統って何か無かったの?」
雪穂「えー……就任挨拶でマイクを投げる」
花陽「真姫ちゃんはやってなかったよ!?」
雪穂「うん、私もやってなかった……えーと、あ、あれだ」
花陽「なになに?」
雪穂「いや、卒業の日に前生徒会長を抱き締める」
花陽「何その伝統!?」
雪穂「なんかお姉ちゃんから始まったらしくて……花陽ちゃん達の卒業の日に、真姫ちゃんに生徒会室に呼ばれてね?いきなり『さぁ!』って言われて……何のことかと思ったよ」
花陽「……それで、抱き締めたの?」
雪穂「だって真姫ちゃん、なんか目輝いてたし……ねぇ?」
花陽「ほわぁ……生徒会長ってすごいんだねぇ」
雪穂「私が卒業する時にも抱きしめられた。お姉ちゃんが吹き込みやがったんだよ……」
花陽「いいなぁ、部長もそういう伝統にすれば良かったよぉ」
雪穂「恥ずかしいからやめとこうよ……」
やっぱり生徒会長って凄いです!卒業式の日に抱き締め合うあんて、なんだかドラマみたい!
中華鍋にネギを入れて、豆板醤、甜麺醤などの基本的な調味料に、しょうが、山椒、オイスターソースなど。
さらにごま油、少しスープを入れて、主役の絹ごし豆腐も投入しちゃいます。
スープはちょっと横着ですが、市販の調味料を使ってます。一応プロとしては失格かもだけど、アイ研の味だからいいんです!
雪穂「……っていうか、亜里沙が合宿でこれ作ってくれたこと一度も無いよ!伝わってないじゃん!」
花陽「ええ!?もう伝統終わっちゃったの!?」
か、悲しいです。いつかOG会とかで皆で食べようと思ったのに。
雪穂「あ、でももしかしたら」
花陽「?」
雪穂「いや、亜里沙は合宿の時ボルシチ作ってくれてたんだけど、思えば妙に辛いボルシチだったなー、と」
花陽「それって……」
雪穂「そう、あれは正に麻婆ボルシチと呼ぶに相応しいモノだったよ……」
花陽「合体シチャッタノォ!?」
なんということでしょう。我らがにこちゃんの作った伝統は、僅か3代目で魔改造されてしまったみたいです。
土鍋には北海道産ななつぼし。今日は少し固めに、三合くらい炊きました。おこげは麻婆が主役なので無しです。
ななつぼしは炊き立ての甘味の強さはもちろん、農薬控えめで安心安全なお米です。消費者としてはそういうことにも気を使わないとね!
あ、勿論余ったら私が頂きます!
そして麻婆の方も仕上げです。味見をしながら適当に調味料を足して、最後に水溶き片栗粉。お皿に盛って、葉っぱでちょっと彩って。ごま油の香りと、真っ赤なあんが食欲を誘います。
これで、ちょっとピリ辛で、後を引く美味しさのアイ研風麻婆豆腐の完成です!
花陽「お待ちどう様、アイ研風麻婆豆腐だよ♪」
雪穂「いただきまーす!これだよこれ!」
お皿を出すと雪穂ちゃんは夢中になってもぐもぐ。
す、凄い勢いで食べてくれるなぁ。お腹空いてたのかな?
女の子の食べ方としてはNGですが、ここは治外法権。アイドル達がありのままでいて良いお店ですから!
雪穂ちゃんの食べっぷりを眺めていると、また戸が開きます。
「花陽さん、今日って甘い物ありますかー?」
入ってきたのはオトノキの女の子達。実はこのお店、オトノキ生の間では結構人気なんです。
あ、高校生はキラキラしててアイドルみたいなものですから、勿論大歓迎ですよ!
花陽「甘い物?あ、杏仁豆腐が作ってあるけど、どうかな?」
自分用に作った物ですが、そんなに出来は悪くない筈なのでたまーにお出ししてます。
花陽のは、アマレットを使ったちょっとだけ大人なデザートです。市販のも、実際にはアーモンドを使ってない物が割と多いみたい。
「え、杏仁豆腐って作れるんですか!?」
花陽「うん、簡単だよ。基本的にはいろいろ混ぜて冷やして固めるだけだから……今お皿に出すね♪」
トレーから少しだけ掬って、お皿に盛って……うん、真っ白で、ぷるぷるで、良い感じです。
手作りの杏仁豆腐は、舌触りがとっても滑らかで、ちょっと固めのヨーグルトみたいな食感になります。
独特なアーモンド風の香りも相まって、甘い物好きな人は癖になること間違いなし、です!
「ありがとうございます!」
「なんだか牛乳プリンみたいですね……おいしい!」
美味しそうに食べてくれる女の子達を見ていると、なんだか昔を思い出しちゃいます。
やっぱり女子高生の放課後と言えば甘い物!私も良く凛ちゃんやにこちゃんといろいろ食べに行ったものです。
二人はあんまり太らない体質だから、いつも私だけ後で酷い事になっちゃうんだけど。
海未ちゃんの地獄のメニューも、今となっては大切な思い出です。もう一度やりたいとは思わないけど。
ああ、あそこのワッフル屋さん、まだあるかな?今度見に行かなきゃ。
折角だし凛ちゃんも誘おうかな?にこちゃんも。でも二人とも忙しいから……
なんて、昔の事を思い出していると、麻婆豆腐を食べ終わった雪穂ちゃんが尋ねてきます。
あ、プリン食べられちゃったんだもんね。
花陽「プリンっていうか、杏仁豆腐だけど……」
雪穂「……」
花陽「よ、良かったらどうぞ?」
雪穂「やったぁ!ありがとう花陽ちゃん!」
おお、満面の笑顔の雪穂ちゃんってちょっと珍しいです。
あれ、でもなんでだろう。
心なしか笑顔に曇りがあるような。
気のせいかな。でも……
雪穂「おおう、なめらか……お姉ちゃんに食べられたプリンが成仏して行くよー……」
雪穂ちゃんはとっても嬉しそうです。私の勘違いかなぁ?
「こんにちはー……あ、何ですかコレ、美味しそう!」
「店主、これと同じ物を」
幸せそうな雪穂ちゃんを眺めていると、お腹をすかせた部活帰りの子が続々とやってきました。
とにかく今は、高校生達にご馳走してあげないといけませんね。
今日も忙しくなりそうです!
――
雪穂「ふぃぃ……花陽ちゃん、おかわりぃ」
花陽「もう結構遅い時間だよ?そろそろお家の人も心配してるんじゃないかなぁ……」
雪穂「大丈夫大丈夫……」
高校生の子達はすっかり帰ってしまった時間。
今日ずっといる雪穂ちゃんは、すっかり酒飲みモード。いつも通りに見えたけど、やっぱり悩んでいたみたいです。
思えばあの食べっぷりはヤケ食いだったのかも知れません。雪穂ちゃんのスタイルが心配です……
雪穂「もう……ホント最近帰って来ないし、帰って来てもすぐ寝ちゃうし、そのくせプリン食べるし……」
雪穂「忙しいのは分かるけど、もうちょっと自分と家族を省みるべきだよホント……」
悩んでいるのは、穂乃果ちゃんのこと。
今や売れっ子アイドルとして色んなメディアに引っ張りダコの穂乃果ちゃんですが、お休みはあまり取れていないみたいです。
雪穂「フラッフラでさぁ、喉だってガラガラなのに、ファンが待ってるから……とか格好つけてさ」
雪穂「なんにも学んじゃいないんだよ、お姉ちゃんは……バカだよ」
雪穂「……心配ばっかりかけやがって」
花陽「穂乃果ちゃんは、頑張り屋さんだもんね」
雪穂「頑張り過ぎだよ!」
雪穂「今はギリギリなんとかなってるけど、倒れちゃったらどうするのさぁ……」
雪穂「もう前みたいなのは……やだよぉ……」
昔から、穂乃果ちゃんは頑張り屋さんだったから。
雪穂ちゃんはそんな穂乃果ちゃんのことが大好きで、心配なんだよね。
花陽「大丈夫だよ、穂乃果ちゃんは大丈夫……」
テーブルに突っ伏す雪穂ちゃんの髪を撫でる。ゆっくりと、安心できるように、ゆっくりと。
私が雪穂ちゃんの為にしてあげられることは多くありません。
こうやって、話を聞いて、吐き出してもらうことくらい。
こんな時、凛ちゃんだったら、穂乃果ちゃんだったら、どんな風に声をかけてあげるんでしょう。
花陽は少しは大人になったつもりだったけど、結局ちっとも変わりません。
出来ることは増えないままで、ちょっとだけ自分が嫌いになっちゃいます。
花陽「そろそろお店閉めるよー、おーい」
雪穂「……むにゃ」
花陽「ううん、仕方ない、送って行こうかな」
そんなことを思っていたら、カラカラカラ。
唐突に店の戸が開いて、最初に目に入ったのは、揺れるサイドテール。
穂乃果「こんな時間にゴメン!雪穂いる!?」
穂乃果「花陽ちゃん、久しぶり!ごめんねウチの雪穂が……って寝てる!」
花陽「びっくりしたぁ……」
穂乃果「ほらゆーきーほー!帰るよー!」
雪穂「んぁあ……お姉ちゃん……?」
穂乃果「起きろー!」
雪穂「んぅ……プリン返せ……」
穂乃果「ごめんってばー!疲れてたからつい食べちゃったんだよー!」
雪穂「むにゃ……ぷりん……」
穂乃果「だ、ダメだ……動こうとしない……」
花陽「雪穂ちゃーん、お水だよー」
雪穂「うぅぅぅ……」
穂乃果「もー、飲みすぎだよ!」
雪穂「おねえちゃんなんでここにいるの……」
穂乃果「……へ?」
雪穂「んぁぁぁう…………」
雪穂「…………おねえちゃんのほうがつらいくせに」
穂乃果「!」
花陽「雪穂ちゃん……」
穂乃果「雪穂……穂乃果ね、」
雪穂「……Zzz」
穂乃果「って寝てるし!」
花陽「ちょっと自分で帰るのは無理そうかなぁ」
穂乃果「そうだねぇ……どうしよう」
花陽「穂乃果ちゃん、雪穂ちゃんを担げる?車出すよ」
穂乃果「流石にそれはいいって!タクシー呼ぶから!」
花陽「私ももう帰るところだから大丈夫だよ?」
花陽「それに、穂乃果ちゃんともお話したいから」
――
穂乃果「花陽ちゃん、本当に久しぶりだね」
花陽「うん……でも、私はいつもテレビとかで見てたから、あんまり久しぶりって感じがしないんだけど……」
雪穂ちゃんを後ろに寝かせて、穂乃果ちゃんは助手席。
運転はそんなに得意じゃないけど、穂乃果ちゃん家までならものの10分だから、大丈夫です。
穂乃果「そっかぁ、見てくれてるんだ」
花陽「うん、いつも応援してるよ」
穂乃果「ありがとう!……えへへ」
花陽「でも、穂乃果ちゃんが迎えに来るとは思ってなかったらビックリしちゃった。忙しいんでしょ?」
穂乃果「それなりに、って感じかなぁ。確かに忙しいけど、やっぱり楽しいから」
花陽「嘘だよね?」
穂乃果「……」
花陽「いつ休んでるのかな、ってくらい大変なスケジュールのはずだよ」
花陽「素人目に見ても、完全に過密スケジュール。それに……少し痩せたよね?」
穂乃果「えへへ……やっぱり分かっちゃう?」
花陽「分かるよ。ずっと一緒にやって来た仲間だもん」
穂乃果「そっかぁ、そうだよねぇ」
花陽「……」
穂乃果「こないだ海未ちゃんにも心配されちゃったよ。『ちゃんと食べてるんですか!?』って。お母さんみたいだよね」
花陽「……きっとみんな気付いてるよ。µ’sのみんなならきっと分かっちゃうよ」
穂乃果「……うん」
穂乃果「あのね、花陽ちゃん」
花陽「何?」
穂乃果「怒られちゃうかもしれないけど……」
花陽「怒らないよ」
穂乃果「私……無理してるなんて思ってないよ」
穂乃果「そりゃ、体力的には辛い時もあるけど、でも」
花陽「うん」
穂乃果「応援してくれる皆がいて、支えてくれる人がいるから……精一杯やりたい」
穂乃果「成長しない、って自分でも思うけど、そうしたいんだ」
花陽「……うん」
穂乃果「もっともっと頑張りたい、みんなに笑顔を届けたい!」
穂乃果「って、そう思ってるよ」
花陽「…………」
花陽「やっぱり、穂乃果ちゃんは穂乃果ちゃんだね。」
穂乃果「うん、穂乃果は穂乃果だよ」
花陽「うん」
花陽「えへへ……やっぱり格好良いなぁ」
穂乃果「えっ!?」
花陽「さすがは私が今一番推してるアイドルですっ!」
花陽「そんなプロ根性があるアイドル、私でも他には一人しか知りません!」
花陽「……だから、応援するよ。これからも、ずっと。」
穂乃果「花陽ちゃん……」
穂乃果「大丈夫!こないだライブの日に風邪引いちゃったけど、ちゃんとお休みしたから!」
花陽「ライブ会場で『風邪ひいちゃいました!』って言って急遽トークイベントになったよね。」
穂乃果「あれ、知ってたの?」
花陽「だって私も行ったもん!あの時はビックリしたよ!」
穂乃果「えええ!?来てたんなら言ってよ!花陽ちゃんなら関係者席用意するのに!」
花陽「ファンたるもの、自力でチケットを取ってこそ、だよ!……それにしても、お布団被ってステージに上がったアイドルって穂乃果ちゃんくらいだよね」
穂乃果「風邪が悪化したらマズい!って思って……でも集まってくれた人達に会いたかったから」
花陽「ほんと、穂乃果ちゃんらしいよね」
穂乃果「……それって褒めてる?」
花陽「褒めてるよぉ!」
穂乃果「あやしい……えいえい」
花陽「ちょっ、ぷにぷにしないでぇ!運転中だから!」
穂乃果「花陽ちゃんのほっぺは大人になってもぷにぷにだねぇ」
花陽「もう、やめてよぉ……」
穂乃果「……忘れたことなんてないもん」
花陽「今度雪穂ちゃんがウチでやけ酒飲むようなことがあったら、囮作戦を実行するからねっ!」
穂乃果「お、囮作戦?……なにそれ」
花陽「ふふふ、内緒ですっ!」
穂乃果「ねぇ、花陽ちゃん」
花陽「なぁに?」
穂乃果「……雪穂、なんて言ってた?」
花陽「……心配してたよ。とっても。」
穂乃果「……そっかぁ。」
花陽「……うん」
穂乃果「……」
エンジンの音だけが、私達の間に流れ続けていました。
さて、こんな時、私に出来ることは何だろう。
――
雪穂「こーんにちはー」
花陽「雪穂ちゃん、いらっしゃい。」
雪穂「きーてよ!こないだお姉ちゃんがオフでさぁ……」
穂乃果ちゃんが来店してから何週間か経ったあと。花夜食堂は今日も営業中です。
過密気味だった穂乃果ちゃんのスケジュールも、ここのところ少し良くなって来て、オフもある程度取れているらしいです。
そのせいか雪穂ちゃんはとっても嬉しそうです。なんだか見てるこっちまで嬉しくなっちゃうね。
雪穂「オフだってのに毎回元気に遊びまわってるし、体重も戻ったみたいだし」
花陽「やっぱりお米の力は偉大ですっ!」
雪穂「そう、なんかおにぎりが大量に差し入れられるって……やっぱり花陽ちゃん?」
花陽「うん!プレゼントで食べ物はマナー違反だけど、今回だけは例外なの」
花陽「そうなの?私は一人分しか差し入れてないつもりなんだけど……」
雪穂「花陽ちゃん、昔から食べるお米の量は異常だったもんね……」
お米は美味しいから仕方ありません!
……でも、痩せちゃって困るなんて事はきっと、私には無縁ですね。
味見やら余り物やらで、はらにくが……うぅ、考えたくないよぉ。こんなお店を始めたのが運の尽きかも。
雪穂「何を思ったか、突然『今日はプリンを作る!』って言い出してさぁ」
雪穂「ちょっとだけ楽しみにしてたんだけど、肝心の卵を用意して無くてさ」
雪穂「一体何を作るんだ、って思ってたらなんと出来上がったのは杏仁豆腐だったんだよ」
雪穂「まったく、杏仁豆腐でプリンのご機嫌取ろうなんて無茶苦茶だよね!なんで杏仁豆腐なんだろうね?……美味しかったけどさ」
本当に些細なことだけど、穂乃果ちゃんが大好きなアイドルも、家族との時間も、頑張れたら良いな。
ところで私、最近改めて重大な事実に気付いてしまったんです。
練習と研究をしないといけません。女の子相手に商売をする上で非常に重要なことです。
花陽「ごめんね、私、プリン作るのは苦手なんだ」
見てくれた人いたらありがとうございます。
花陽が認めるもう1人はやっぱりあの人かな
だったらいいな
続編も期待してる
こういう雰囲気も題材も好き
無理せず続いてほしい
いい雰囲気でした
良い感じ
この世界観で続編希望
-
前の記事
【ラブライブ!】のぞ攻めが好きなやつ集合!! 2020.04.14
-
次の記事
【ラブライブ!】穂乃果「これたべたい」 2020.04.14