【ラブライブ!】凛「縁側と短編小説」
- 2020.03.27
- SS

ぽかぽか陽気に、澄み切った空気。
青々とした木々が、風に揺れる。
うららかな春日和ですなぁ。
縁側でごろんと寝転びながら、そんなことを考える。
「凛、お茶が入りましたよ」
今日は海未ちゃん家でお勉強を教えて貰ってたんだけど。
疲れたし、あまりにも天気が良いものだから、ちょっと休憩。
「またそうやって寝転んで…本当に猫になってしまいますよ?」
冗談っぽく海未ちゃんは笑うけど、海未ちゃん家の飼い猫だったら喜んでなるにゃー。
「猫になったら、ラーメンも食べれなくなりますよ」
…それは嫌だなぁ。
でも、猫になって、ずっとこの縁側でごろごろ出来たら、すっごく幸せなんだろうけどなぁ。
ほっぺをぺたん、と板の間にくっつける。ひんやりして気持ちいい。
…暖かい日差しが眠気を誘う。
ふわふわ、ぽかぽか。お日様に包まれてるみたい。
「…おや、寝てしまいましたね」
:
んー… ちょっと寝ちゃったみたい。
頭の上の方で、ぺら、と、紙をめくる音が聞こえる。
顔をあげると、少し俯く海未ちゃんの顔。
背景には雲1つ無い青空と、新緑の木々たち。
青に映える海未ちゃんは、まるで女優さんみたいに綺麗。
「起きましたか。気持ち良さそうに寝てましたね」
縁側に腰掛ける海未ちゃんの膝には、1冊の本。
「ああ、これは、私が好きな作家の短編小説集です。最近、短編小説にハマっているんですよ。」
小説かぁ。凛は長い文章を読むの苦手だから…
「1話1話が短いから、本が嫌いな凛でも読みやすいと思いますよ。読み終わったら貸しましょうか?」
それなら、凛も大丈夫かも!海未ちゃんが読んだ小説を凛も読むなんて、頭が良くなったみたい!みんなに自慢しよっ。
「さて、凛も起きたことですし、勉強を再開しましょう」
えー…まだごろごろしてたいにゃー…
「今日は勉強をしに来たんでしょう!…それに、また来たいなら、いつでも寄って行って良いですから」
ちょっと気恥ずかしいのか、だんだん声が小さくなる海未ちゃん。
顔もなんだか赤くなってない?
そういえば、海未ちゃんが淹れてくれたお茶、飲むの忘れてた。
起き上がり、冷めてしまった緑茶を、ぐい、と流し込む。
冷たいのが体の中を流れて、ちょっと目が冴えたかも。
「…まぁ、今日は天気も良いですからね。凛がちゃんと勉強を終わらせたら、また休憩しましょう」
そのひとことに、やる気が燃え上がる。
「ふふ、その調子です。では、やる気があるうちに、凛が大嫌いな数学からやりましょうか」
ええー!す、数学は嫌だけど…
縁側でごろごろのために、頑張るにゃー!
奥の座敷に行く前に、ちら、と縁側の方を振り返る。
さわさわとそよぐ草木が、『がんばれ』と言ってくれてるみたい。
家の中を通り抜ける風も、背中を押してくれる。
次の休憩の時は、海未ちゃんの短編小説をちょっと読んでみようかな。
「うー、頑張るにゃー!!」
おわり
穂乃果のお家はお饅頭屋さんをやってるんだ!
老舗和菓子屋、って言うのかな?
地域のみなさんにご愛顧いただいてますっ!
でも、そのおかげで、ペットは飼ったことないんだ…
穂乃果だって、犬とか猫とか飼いたいなぁ。
『穂乃果ちゃん可愛いから、お饅頭もう2つ買っちゃおうかな~?』なんて言ってくれる人も居るんだよ!えっへん。
…お客さんの大半は、おじいちゃんおばあちゃんなんだけどね。
でもでも、売り上げには貢献してるよね。
看板娘、ってやつですな。
おっ、お客さん…って凛ちゃんと絵里ちゃん!?
「穂乃果ちゃん家のお饅頭買いにきたにゃー!」
「散歩をしてたら、凛にばったり会ってね。一緒に穂乃果の家のお饅頭を食べに行こうってなったのよ」
海未ちゃんやことりちゃんは昔からよく来てくれるけど、凛ちゃんと絵里ちゃんは珍しいなぁ。
うちのお店でこのメンバーって、ちょっと新鮮。
「私も同じものにしようかしら」
揚げ饅頭はうちの看板商品。サックサクの衣に、上品な甘さのあんこが詰まった至高の逸品だよ!
「ここの席、良いかしら。ほら、凛も座って」
「穂乃果ちゃん家、ホント、老舗!って感じだよねー。オモムキがあるにゃ!」
目を輝かせながら興味津々に店を歩き回る凛ちゃん。
「もう、あまりウロウロしないの」
「はーい…」
とぼとぼと席に着く凛ちゃん。まるで、お母さんに叱られた小さい子どもみたい。
揚げたての揚げ饅頭を目の前にして、今日1番目を輝かせる凛ちゃん。
「冷めないうちにいただきましょう」
「いただきまーす!」
言うが速いか、凛ちゃんが揚げ饅頭にがっつく。
「あっちちち!!」
…はは、そりゃそうなっちゃうよね。
涙目になって舌を出してる。ちょっと可愛いかも。
「もう…揚げたてなんだから、気をつけないと」
「猫舌なの、忘れてたにゃー」
「はいはい、熱かったわね」
絵里ちゃんが凛ちゃんの頭を優しくナデナデする。凛ちゃんは険しい表情を崩し、ふにゃっ、としている。
いいなぁ絵里ちゃん、私もナデナデしたいよぉ…
…こうして見ると、凛ちゃんって、子どもってより…
猫っぽいよね。口癖も『にゃー』だし。
招き猫を置いとくと商売繁盛するって言うし、凛ちゃんがうちの看板娘になったら、もーっと売り上げあがるかな?
それに、凛ちゃんって猫っぽいから、穂乃果の「ペット飼いたい」欲求も満たせるし、良いことづくしじゃない??
一緒にこたつ入ってー、ごろごろしてー、凛ちゃんをナデナデしてー、猫じゃらしで遊んでー、たまにお散歩してー、夜は一緒の布団で寝るの!
「…穂乃果、顔がニヤけてるわよ」
はっ!つい、妄想に熱中しちゃった
「穂乃果ちゃん、何考えてたのかにゃー?」
…あなたをペットにする妄想をしていたなんて、口が裂けても言えません。
「ごちそう様!また明日、学校で会おうね!」
絵里ちゃんと凛ちゃんの背中を見送って、机の上の片付けをする。
「ただいまー。あ、お姉ちゃん、さっきそこで、絵里さんと凛さんを見かけたよ」
出掛けてた雪穂が帰ってきた。お土産は無いのかなぁ。
「凛さんってなんか猫みたいだよねー。年上だけど、愛でたくなる」
うむ…血は争えないな。
「へー、うちに饅頭食べに来たんだ。…あはは、凛さんをうちの招き猫にねー。あ、これお土産」
やったぁ!シュークリーム!ユッキー大好き!
「でも、うちはもうお姉ちゃんを飼ってるから、ペットは飼えないよ」
なんて失礼な妹。これでも私、看板娘なんだよ?
そんな妹は、こうだ!
「ちょっとお姉ちゃん!髪の毛ぐしゃぐしゃにしないでよ!」
お姉様に逆らった罰だよ。雪穂が恨めしそうに私を睨む。
家には遊び相手のユッキーが居るし、学校に行けば猫ちゃん…もとい、凛ちゃんが居るし。
ー人間とは、無いものねだりをする生き物であるー
…お、ちょっとかっこいいぞ。私。
明日になったら、今日出来なかった分、凛ちゃんをいっぱいナデナデするんだから。
はやく明日にならないかなぁ。
おわり
最近、近くに足湯が出来たんやって。うち、温泉が好きやから、行かない訳にはいかんやん?
でも1人は寂しいなぁ…
絵里ちとにこっちでも誘ってみよ。
「足湯…名前は知ってるけど、実際に入ったことは無いわね」
「あー、近くに出来たとこでしょ?にこも妹たちを連れて行ってみようと思ってたのよ」
うちに疑いの目を向ける絵里ち。ふっふっふ。絵里ちは足湯を舐めとるね?
「にこは1回だけ、家族と行ったことがあるけど。足だけでも、ずっと入ってたら汗かくぐらい全身が温まるんだから!」
「ハラショー…足だけなら気軽に浸かれるし、良いわね」
お、絵里ちも乗り気になってくれた。
んー、楽しみやなぁ♪
にこっち張り切ってんなぁ。家族旅行に行く前の、肝っ玉かあさんみたいやん。
「足湯に入るには、心構えが必要なのね…!」
うーん、そんな気い張って入りに行くようなもんでも無いんやけどな。
:
うぅ、さぶい。外は風が冷たい。
はやくあったまりたいなぁ。
「これが足湯…本当に足だけなのね!ここに座って足を浸けるの?」
きらきらと目を輝かせる絵里ち。
昔、おもちゃの手裏剣をあげた時も、こんな顔してたっけ。
ちょうど、うちら以外に人は居ない。分かりにくい場所にあるもんな。
「ちゃんとズボンやスカートをあげるのよ!裾が濡れちゃうから」
にこっちお母さんは今日も張り切っとるな。
うちを挟んで、絵里とにこっちが椅子に腰掛ける。両手に花やんな♪
「寒いから、はやく浸かりたいわ!…あっつ!」
あーあー…絵里ちたら…こういうのは、ゆっくり…あっつ!!
予想以外にあっついわ!茹でる気ちゃうん!?
「あんたら、全然駄目ね!こういうのは、一気に突っ込むのよ!」
そう言って、勢い良く両足を足湯に浸けるにこっち。
「ゔぉぉ…」
アイドルらしからぬ声が出とるよ、にこっち…。
「ハラショー!にこ、凄いわ!」
「あ、当たり前よ…最初は熱いけど、だんだん…慣れてくるから…気持ちいいわよ…」
そんな険しい顔で言われても、説得力無いで…。
:
「ふぅ…やっと足を全部漬けることができたわ…」
はー、やっぱり気持ちえーなー。
「それにしても、何故足だけなのかしら。普通に温泉に入れば良いのに」
絵里ちは分かってないなぁ。足湯は、服を脱がずに気軽に入れるし、内蔵にも負担が少ないんやで!
「何より、タダで入れるしね」
お金が無い学生にとって、最高のアクティビティやね!
「確かに、無料で入れるのはありがたいわね。でも…まだ入ったばかりだから、上半身が寒いわ…」
足は温泉に浸かってるけど、上半身は野ざらしやもんな。
…じゃあ、こうしたらあったかくなるんやない?
「うわぁっ」
「きゃっ」
両脇の絵里ちとにこっちを、ぎゅっと抱き寄せる。身体があったまるまで、3人でぎゅーってしとこ?♪
「の、希、恥ずかしいわよ…!」
「んー!離しなさいよ希!」
うちら以外に誰もおらんし、大丈夫やて♪
…あ、にこっちは胸に埋れて苦しそうにしとる。
「そうね。今日は、誘ってくれてありがとう。希」
な、なんかそんなに素直に感謝されたら照れるやん?
あー、顔が火照ってきたわー。足湯の効果が出てきたんかな。
温泉には足しか浸かってへんのに、身体がぽかぽかする。
「また何かあったら誘いなさいよ。希も、絵里も」
今日は、絵里ちとにこっちを誘って本当に良かった。
身体もぽかぽか。…心もぽかぽか。
「ねぇ、今度はみんなで温泉に行かない?私、露天風呂に入りたいわ」
「良いわね!練習が無い日にでも行きたいわね。それにしても、絵里って意外と温泉好きなのね」
温泉かぁ…みんなの成長度合いを見れるチャンスやんな。
「希!あんた、今イヤらしいこと考えたでしょ!」
べっつに~♪
1人でお風呂に入るんも好きやけど、みんなで入るのも大好き。
だって、身体も心もぽかぽかできて、一石二鳥やん?
「はぁ…こんなに気持ち良かったら、足湯から出たくなくなるわね」
絵里ちが珍しく、ぽわーんとした顔をしている。キリッとした絵里ちも好きやけど、完全オフの絵里ちも好きやよ♪
「あんまり入ったら足がふにゃふにゃになるから、ほどほどにしないとね」
いつもはおどけてるけど、しっかり者で仲間思いのにこっち。からかったりするけど、本当は感謝しとるんよ?
…いつまでも、この3人で浸かっていられたら良いのになぁ。
のぼせるくらいに。
おわり
ざざん、ざざん、と波の音
橙色の地平線が、太陽を飲み込んでいきます
きらきら、きらきら、と水面に遊ぶ光は無邪気
紺、紫、橙のコントラストの空は、今にも私を押し潰してしまいそう
海の上を飛ぶ鳥たちも、太陽を追って消えていきます
波打ち際に、ひとり。ぽつねんと私が残される
足元の石をひとつ、太陽に向かって投げてみた
ぽちゃん、と間の抜けた音を立て、水面に波紋を作るだけ
太陽には届くはずもなくて
もうすぐ、遊んでいた光たちも帰っていきます
潮風が奏でるメロディも、空に吸い込まれていきます
私はひとり、全てを見送って立ち尽くすのでした
おわり
寒さも和らぎ、春めいてきた今日この頃。
ちょっと散歩にでも行ってみましょうか。
玄関を開けると、春風がひと吹き。
あたたか陽気を胸いっぱいに吸い込み、外へと踏み出す。
とくにあても無いけど、とりあえず歩いてみましょう。
ふと足元を見ると、可愛い黄色のタンポポ。
まるで小さい太陽みたい。
「絵里ちゃん?」
後ろから私を呼ぶ声。振り返ると、四角いバスケットを持った花陽。
どこかへお出掛けかしら。
「えへへ…今日は天気が良いから、ピクニックに行こうかと」
ピクニック…確かに、今日はピクニック日和ね。
「凛ちゃんと2人で行こうと思ってたんですが、絵里ちゃんも一緒にどうですか?」
花陽からお誘いなんて、珍しいわね。せっかくだし、ご一緒して良いかしら。
「やったぁ!絵里ちゃんとお出掛けなんてなかなか無いから、花陽、嬉しいですっ!」
ぱあぁっと満面の笑みを咲かせた花陽は、たたたっ、と走り出した。
「私と凛ちゃんがいつも行く河川敷があるんです。きっと絵里ちゃんも気に入ると思います!」
:
花陽に引っ張られて連れて来られたのは、広い河川敷。
川の流れは穏やかで、まるで時間の流れもゆっくりになったよう。
青い土手では、春の花たちが楽しげに揺れている。
近くにこんな素敵な場所があったなんて、知らなかった。
花陽に感謝しなくっちゃね。
「凛ちゃんとはここで待ち合わせてるんで、もうすぐ来ると思います!ふふ、絵里ちゃんが居るなんて、凛ちゃんびっくりするだろうなぁ」
花陽は、好きなものの話をする時は、本当に目が輝くのね。凛とか、アイドルとか、ご飯とか。
「よいしょ…今日はおにぎりを作ってきたんです!いっぱい作ってきたんで、絵里ちゃんも食べて下さい!」
バスケットには、おにぎりが入ってたのね。…結構大きいけど、どれだけ作ってきたのかしら。
もじもじしながら、花陽が喋り出す。
「私、絵里ちゃんのこと、すごく尊敬してるんです。スタイルも良くて、ダンスも上手いし、頭も良いし、かっこいいし」
そんなに褒められると、流石に照れるわね。
「だから、その、私…絵里ちゃんのことが大好きなんです!」
顔を真っ赤にして叫ぶ花陽も可愛いわ。
…って…え、大好き!?こ、これは、告白というやつかしら…?花陽、いきなり大胆すぎじゃないの?
「えへへ、言っちゃった…」
どうしようかしら。落ち着くのよ、私。女の子が女の子に告白するのは、稀にあると聞くわ。…いや、まさか花陽が…
「前から思ってたんですけど、絵里ちゃんと2人で話す機会が無くて。これからも、私の自慢の先輩で居て下さい♪」
…ああ、これは『先輩』としての『大好き』なのね。何を勘違いしてたのかしら私。
「…あれ、絵里ちゃん顔赤くないですか?…もしかして、照れてる?可愛いっ!」
照れてるとはまた違うのだけれど。まぁ、そういうことにしときましょう。
ごちそうです
この河川敷は日当たりが良いからか、すごく大きな花を咲かせている。
太陽の光をいっぱい浴びてきたのね。
「こっちのはもう綿毛になってますね」
綿毛のタンポポを摘むと、花陽は、ふぅーっと息を吹きかけた。
ほっぺを膨らませる花陽の横顔は、すごく愛らしい。
飛ばされた綿毛が春風に乗って、ふわふわと空へと舞い上がる。
あの綿毛たちは、どこに行くのだろう。
新しい土地が、日当たりが良いところだったらいいのだけれど。
「あ!かよちん見つけたー!…と、絵里ちゃん!?」
「来る途中に偶然会ったから、誘ったの」
「そうなんだ!絵里ちゃんとピクニック~♪嬉しいにゃ!…かよちんそれ、タンポポ?」
ぴょんぴょん跳ねる凛の目にとまったのは、タンポポの綿毛。
タンポポの綿毛を飛ばすなんて、何年ぶりかしら。
3人で、空に向かってタンポポの綿毛を飛ばす。
空に舞う白い綿毛が、まるで雪みたい。
「わぁ…なんだか、雪みたい」
ぽそり、と花陽が呟く。ふふ、同じこと考えてるわね。
「春に降る雪…なんだか、ロマンチックにゃー…」
ぐぅー、とお腹の音。
「にゃはは…走ってきたから、お腹空いちゃったにゃ」
もう、凛ったら。ロマンチストなのか何なのか、分からないわね。
「おにぎりいっぱい作ってきたから食べよ!」
「やったー!かよちんのおにぎり大好き!」
花より団子…いや、花よりおにぎりね。
タンポポを見ながらおにぎりを食べるのも、お花見に入るのかしら?
「もー、凛ちゃんたら」
「えへへー」
川の流れは穏やかで、時間の流れも穏やかで。
春の訪れって、こんなにも幸せなものだったのね。
今度、花陽にも私のとっておきの場所、教えてあげなくっちゃね。
おわり
いい話やん
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